団長VSフリーダと、ギルマスVSマルク
「マルク、団長殿は私がやる! あなたはギルマス殿を!」
「ああ、どうにかしよう」
俺はフリーダに全覚醒をかける。
ギルド前の大通りで、フリーダは騎士団長エルミナと、俺はギルドマスターのヴァネッサと対峙する。
エルミナが姿勢正しく、しかしその目は虚ろなままに口を開いた。
「キミが抜けてからどれくらい経ったかなフリーダクン。コウヤッテ手合わせするのもずいぶん久しぶりな気がスルヨ。サァ、一緒に踊ろウカ!」
「団長殿、あなたには感謝しています。ですが今は非常時、私も手加減は致しません!」
フリーダにもう迷いはなかった。
剣と盾を構えて躊躇なしに斬りかかる。騎士二人の戦いが始まった。
一方の俺も――
「マルク、テメェは次期ギルマスとなる器だ。まだ迷ってるノカ?」
「この件のなりゆき次第、だな」
「ソウカイ。だったらこのオレが、本当にテメェがギルマスに相応しいかどうか試してヤルゼ!」
「操られていても仕事とは、見た目以上に真面目な女性だ!」
戦いが始まる。
ヴァネッサはバリバリの前衛職でアタッカーだ。身の丈以上の両手斧を肩に乗せてから、一息で迫ってきた。
全く厳しい注文だよ。
俺みたいな不遇職でデバッファー職が、前衛職と一対一をするわけだからな。
「リョウテ斧スキルTier4――『ぶった斬り』!」
「くっ! 分かってはいたが一切手加減なしだな! 強力なスキルだ!」
見るからに重そうな斧を、軽く釣り竿でも振るかのようにヴァネッサは振り下ろす。
俺は後ろに飛んで回避したが、今いた石畳は斧の一撃で真っ二つになっていた。
「ヤルじゃねぇか、さすがはオレが見惚れちまったオトコだ。カンタンに死なれちまったら試験の意味がねぇ、一発くらいは耐えてもらわねぇとナァ!」
「こんなものを一撃でも食らったら、その時点で即死だがな」
ヴァネッサが地面から斧を引き抜くと、もう一度構える。
スピードも中々ある、いつまでもかわしきれるとは思えない。
攻略法を模索していると、隣の戦いに動きが出る。
「片手剣スキルTier5! 『テンペストスラッシュ』!」
「Tier5ダト――くあっ!?」
フリーダの必殺スキルが放たれて、勝負が決したのだ。
さしものエルミナもTier5に対抗する手段は持っていなかったらしく、膝をつく。
肌に傷はついていなかったが、鎧は砕かれ、その威力の高さが計り知れるのだった。
「ミゴトだ、フリーダ君……あれから、ずいぶん成長したンダネ……」
「勝負ありました団長、降伏を。――こっちは終わったぞマルク、すぐそちらに加勢に」
フリーダは間違いなくエルミナとの戦いには勝った。
だが――
「ワルイなフリーダ君。ワタシも負けるわけにはいかないのダヨ」
「なっ――みんな!?」
肌にぴったり吸い付くアンダーウェアだけとなったエルミナが立ち上がり、剣を頭上に掲げると。
建物と建物の間から、女性騎士が二〇人近く姿を現したのだ。
俺は言う。
「潜ませていたか……よく訓練されている、見事な潜伏だ」
「ソウだろうマルク君。優秀なのはフリーダ君一人だけではないのダヨ」
フリーダは出会った頃にはA級だった。
つまり、他の騎士もそれに匹敵してもおかしくない。
「スベテは……ブタドス様のタメニ!」
「くっ……皆アンダーウェアだけで……! 汚いぞ、魔王!」
女騎士達は鎧が砕かれたエルミナ同様、ぴちぴちのアンダーウェアだけだった。
衣装でもなんでもない、防具ゼロの状態。まともに戦えば殺してしまいかねない。
覚悟を決めたフリーダだったが、わずかながらためらいが生じていた。
「アチラさんは盛り上がってるじゃネェカ。コッチも盛り上がろうぜぇ、マルクヨォ!」
「状況は不利か。だが――勝ち筋は変わらず見えている」
そのためにも、俺はギルマス・ヴァネッサとの戦いに決着を付けねばならない。
もしかしたら一日おきになるかも知れません。
すみません!




