表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/99

立ち塞がる実力者

「見ろマルク、ギルドはすぐそこだ! ――しかしどうして敵がいないんだ!?」


 俺とフリーダは走る。

 この辺りはもう本陣だ、敵が大勢いてもおかしくなかったが、全くいなかった。

 理由は簡単だ。


「ここに敵が集中していないのは、()()()()がここに配置されているからだろうな」

「ソウイウコトだぜ、マルク」

「ヨクキタね、フリーダ君。待っていタヨ」


 立ち塞がったのは、ギルドマスターのヴァネッサと、<純白角(ユニコーン)>騎士団団長のエルミナだ。

 そう、この二人がここに配置されているから、他に誰も必要なかっただけなのである。


「団長殿に、ギルマスも……!」

「やはりいたか。作戦を見破られるとしたら()()()()だと想定していたからな。……そちらの当ては少し外れたが」


 この二人に遭遇する時点で俺達『最後の冒険者』は四人揃っているはずだったが――ベラとユーニスと思わぬ再会を果たしてしまったからな。予定はずれてきている。


 と、なると。


「ココカラ先は通さねぇぜお二人さん。通りたければオレ達を倒してイキナ」

「イマの私達は教祖様に強化されている。次期S級の君達相手だろうと、引けはトラナイヨ」

「く、来るぞマルク、どうするっ」

「やるしかないだろう。俺達二人だけで」


 俺達だけで戦うしかない。

 S級に匹敵するフリーダがいるとはいえ、相手は冒険者の街のギルマスと、そのフリーダが所属していた騎士団の団長だ。

 そこにバフまでかかっているとなれば、厳しい戦いになるのは想像に難くなかった。


 ヴァネッサとエルミナがそれぞれ得物を抜く。

 巨大な両手斧に、細身の細剣だ。

 二人は裸ではなかった。

 普段の服・装備であり、すなわちそれは本気ということだった。


「ドゥフフ、やうやく来たんだねぇ、フリーダちゃん、マルク君」

「――ブタドス。宣言通りギルドで待っていたか」

「ま、魔王……!」


 そこに、騒ぎを聞きつけてかギルドの中からブタドスが現れた。

 フリーダは親の仇を前に、一瞬震えたが。


「好きには……させんぞ魔王! この街は私達が必ず救う!」

「ドゥフ!? なんかちょっと変わったかい、フリーダちゃん?」


 強い信念と仲間を思う心で、闘志をみなぎらせていた。

 懸念材料はなくなった。


「ブタドス、お前の悪行もここまでだ。大人しく女性達を解放するならば、罰を考えてやってもいい」

「えぇ、何言ってるのマルクくぅん、状況をよく見てみなよぉ。ギルマスと騎士団長に囲まれて、街の冒険者も全部僕の味方。この状況で君から僕に脅しをかけるのぉ? ――ドゥフフ! マルク君、君って案外おバカなんだねぇ!」

「降伏はしないんだな。――良かった、これで思う存分お前をいたぶれるな」


 俺は余裕たっぷりに言ってやった。

 ブタドスは頭を横に振って呆れた様子で聞き流す。

 確かに状況は相手有利だろう。だが俺には見えている。

 勝ち筋がな。


「ドゥフフ、その余裕が崩れるのが楽しみだぁ。さぁヴァネッサちゃん、エルミナちゃん、そこの二人を殺さない程度に――」

「やり合う前に一つ聞いておくことがある」

「んん? なぁに、マルク君」

「……ジークはどこだ。ベラとユーニス――裸ではない女性冒険者と一緒だったはずだ」

「ドゥフ? あぁジーク君、ジーク君ね。ジーク君なら――」


 ブタドスは思い出したかのようにその名を口にすると、俺のそばを指さした。

 そこには――


「そこの路地裏に捨てたよぉ。死んじゃったから」

「っ……!」


 ジークの死体が転がっていたのだ。

 細い路地裏の隙間のような場所で、壁に背を預けながら。

 絶望に暮れた表情で、変わり果てた姿で死んでいたのだ。


「もしかしてお友達だったのぉ? 面白かったなぁ、捧げ物の()()()()はすごいわめいていたのに、最期はプツンと糸が切れたように静かになっちゃうんだもん! ドゥフ、ドゥフフフフ!」

「……友達なんかじゃない。むしろ嫌いになった奴だ。だが――」


 戦闘態勢に入っていた俺は、視線をブタドスに戻した。


「最高に気分が悪いな」


 俺の腹は、皮肉が言えないほどに煮えくりかえっていた。


「マルク、大丈夫か……? あなたは冷静でいてくれ、でないと私一人ではっ」

「ああ……そうだったな。自分を見失うところだった、ありがとう、フリーダ」


 フリーダは親の仇を前に必死に信念で戦っている。

 ジルやオリヴィアだって、街を救おうと命を賭けてくれた。

 それら全てを無駄にはしない。


「ドゥフフ、いい仲だねぇ。次は君がジーク君みたいになるんだよぉマルク君! フリーダちゃんや他の女の子が食べられてる前で、惨めに泣き叫びながら死ぬんだぁ!」

「そんなことは私がさせない! 決着を付けるぞ、魔王!」

「催眠術師は万能じゃない。それを分からせてやろう、来い」

「ドゥフ! ――さぁやっちゃって、ヴァネッサちゃんにエルミナちゃん!」


 ブタドスが指示を飛ばすと二人の実力者が武器を構える。 

 魔王の前の最後の関門が立ち塞がる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ