波打ち際のクラーケン戦 ③ 裸じゃない裸同然の衣装!
「行くぞフリーダ、オリヴィア。この作戦なら確実にクラーケンを倒せる。そうしたら――S級だ」
「は、はいっ! 神よ、私に祝福をっ」
「S級のため、S級のため……マルクのためっ! よし、行こう!」
「きゃっはははっ――て、あたしのことも忘れないでよねっ、にゃん!」
三人は作戦を決め、クラーケン退治とジル救出作戦を敢行した。
まず仕掛けたのはオリヴィアだ。
「ジルさんを離して下さい! メイススキルTier4! 『ブルスマッシュ』!」
「ブシュルルルルッ!?」
Tier4でも、弱ったイカの足を一本斬るには十分だった。
足を一本飛ばされたクラーケンが悶えるが、すかさずクラーケンが反撃してくる。
「あぅっ! 避けられませんでしたーっ!」
「オリヴィア! すまない、女性にこんな役を――だがこれも勝つためだ!」
オリヴィアは避けきれずに触手で吊されてしまった。
触手がオリヴィアの腹にぐっと食い込み、胸が強調されるが――大丈夫、それくらいの力しか、〝出しすぎた〟クラーケンには残されていない。
そして次は――
「この――よくもやってくれたわね、えちえちクラーケン!」
捕まっていたはずのジルだった。
そう、オリヴィアが斬った足というのは、ジルが捕まっていた足だったのだ。
ジルは落下の勢いのまま、縦に一回転して必殺のかかと落としを放つ。
「Tier5、『竜断』!! こ、こっちみないでよマルク、にゃんっ!」
「いいやガン見するっ! 戦いの最中に動静を見ないのは危険極まりない行為だからな!」
「こ、この、えちえちヘンタイ紳士ーっ!」
ジルは足をおっぴろげて放つが、両手で大事な部分を全て隠しながら放っていた。
そのせいかは知らないが、威力はクラーケンを沈めるまでには至らない。
「最後は、私が決める!」
そのための三手目だ。
フリーダが剣を強く握って、クラーケンの頭上高くに飛んだ。
日差しに照らされながら映る彼女の姿は――
「片手剣スキルTier5! 『グランドクロス・逆バニーバージョン』!」
逆バニーな衣装姿だった。
そう、フリーダの水着の仕掛けとは、逆バニーに変化する衣装のことだったのである。
服を着たフリーダは一切の加減なく剣を振り抜く。
「ブシュ!! ――ルルルル……」
十字の剣はクラーケンの頭を切り裂いて――敵は完全に沈黙するのだった。
「か、勝った……! やったよマルク、今回もまたS級の大物を倒してみせたよっ!」
「ああ、みんなの――フリーダのおかげだ」
女騎士が少女のように駆け寄ってきて、歓喜していた。
その姿は逆バニー。
乳首部分に白のシール、股間部分にも白のシール、後は手足くらいしか隠していない超過激なコスチュームだ。
フリーダが跳ねる度、グラマラスな胸もたゆんたゆんと揺れてシールも取れるのではと思ったが――とにかく、俺達は勝ったのだった。
「今回、俺の出番なかったな……」
「何言ってるのよマルク。あなたの催眠術があってこそじゃない」
「フ、そのツッコミ待ちのセリフだったんだがな」
今回俺の出番は少なかったが、地味に活躍しているのだ。
それをキチンと評価してくれる彼女達は本当に最高の仲間だった。
ちなみにジルは水着を素早く着ていて、獣人化も収まっていた。
最後の一人、オリヴィアの姿が見えなくて、俺は視線を上に向けると。
「っと、すまないオリヴィア、まだ抜け出せていなかったかっ」
「モゴ、モゴモゴモゴーっ」
オリヴィアはまだ捕まったままだった。
クラーケンは死んでいたが、触手が絡まって抜け出せなかったのだ。
絡まった足で胸が強調されているだけでなく、一本の触手がオリヴィアの口にぶち込まれていた。
なんだか良からぬ連想をしてしまうので、紳士の俺は即座に解いてやった。
「モゴモゴ――ごっくん」
「って、おいっ、まさかオリヴィア、イカの足を食べたのか?」
「はむはむはむ……ん、美味しいですっ! 生食、それもイカなんて食べたことありませんでしたが……とても美味ですよ!」
「君は口に入ればなんでも食べるのか……?」
この女性に大事なモノを口に入れてはいけないと思う俺。
しかし本当に美味しそうに食べるので、俺も気になって、食べてみることにする。
今回出番のなかった短剣で足を少しだけ切って口に運んだ。
「……ふむ、確かに旨いな。酒にも合いそうだぞ」
「何よ何よ、あたしも混ぜなさいよっ」
「どれ私も――ヴマイ! 牛さんミルクにもきっと合うぞ!」
今回も白濁に塗れ、まだちょっとそれが残っているフリーダが太鼓判を押す。
これは――村の観光事業に活かせないだろうか。




