やっぱり付いてきていたあの二人
「――メイススキルTier4、ぽこんぽこん改め、『ブルスマッシュ』! ですっ」
「いいじゃない! そうそう、今後はそんな感じの名前にしてね!」
オリヴィアはいつもと違うスキル名を叫んでメイスを振り抜いた。
軽く特訓をしたのだが、苦もなく身につけていた。
さすがは天才、威力もいつもと変わらなさそうだった。
「実は俺も気になっていたところだからな、オリヴィアのスキル名は。こう、気が抜けるというか」
「うむ、これで引き締まったな!」
「そ、そうでございますか。今まで気付かなくて申し訳ありませんでしたです……」
謝るほどのことではないが、とにかくこれで準備は完了だ。
俺は最終確認を取ろうとするが。
「精が出るじゃねぇかテメェら、依頼中に訓練たぁ、さすがは次期S級だぜ」
「フフ、人のスキルを見るのも己の骨肉となる。はるばるバカンス村まで来た甲斐があったよ」
「あ、あんたギルマスに――」
「団長殿までっ! な、何してるですかっ!?」
ジルとフリーダが驚いた。
訓練に夢中で気付かなかったが、少し離れたパラソルの下には、なぜかギルドマスターのヴァネッサと騎士団長であるエルミナが、リクライニングチェアでくつろいでいたのだ。
「おい、行けないとか言ってなかったか?」
「まぁほら、オレは仕事柄テメェらの仕事ぶりを見とかなきゃいけねぇし?」
「私もまぁ、本当にフリーダ君を任せられる人物か見極めたかったからな?」
もっともらしいことを言っているが、どう見ても遊びに来ただけだ。
ヴァネッサは黒のビキニで、日焼け跡が強調されている。
胸はフリーダと同等くらいあるが、日焼け跡とのコントラストは非常にセクシーだ。
エルミナはセパレートタイプの水着で、ちょっと腹筋の割れた腹が見えていた。
ピタっとした水着はスリムな体型に合っていて、こちらもクールだった。あとティーカップに紅茶を入れて優雅に飲んでいた。
どちらもサングラスをかけていて、遊び気分満々だ。
俺はそんな二人を見て言う。
「手伝う気はないんだな?
「そりゃあそうさ、視察に来たわけだからな」
「右に同じだよ、マルク君」
「そうか。まぁ来てしまったなら仕方ないな。背中を見せろ」
「あ? 背中だぁ?」
ヴァネッサがサングラスを額にずらして不思議そうに言う。
俺は手をべとべとにしてこう言った。
「オイルを塗る。どうせ塗っていないんだろう、俺が塗ってやる」
「ふ、ふふ、フザケンじゃねぇ! な、なんで男のテメェがオレ達のっ!」
「じ、じじ、冗談だろうマルク君。私は君にぬるぬるにされるためにここまで来たわけでは……い、いや、その目は」
「本気だ。塗らせろ」
「だ……誰がテメェに初めてをやるかっ、バカヤローっ!」
「そ、そういうのは段階を……し、失礼したっ!」
俺の本気度が伝わったようで、ヴァネッサとエルミナは一目散に逃げ出してしまった。
逃げた方向からしてリフトだ。間違いなく帰ったなと、俺は二人のサボリ魔を見送るのだった。
「どたばたしたが、いい加減行くとしようか。武器は持ってきているな?」
「うむ! いつでも戦う準備は出来ている!」
「では行くぞ、サハギンがいるという洞窟へ」
「おおーっ! ですっ」
俺達は準備を終えて、依頼の洞窟へ向かうのだった。




