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装備強化でさらに強くなろう! ④ スキンでオシャレも出来ますよ

「いらっしゃいませお客様! ――あらなんてダンディズムな男性……そんなあなたにはこちらのシルクハット衣装(スキン)が似合いますわ!」

「シルクハットを被るならタキシードの衣装(スキン)も併せましょう! あ、あらやだ、本当に素敵……ポッ」


 俺達が足を運んだのは洋服店――もとい衣装(スキン)(ショップ)だ。

 ここビアンツでも最近出来た類の店で、店内はもはや宮殿かというくらい巨大な五階建て。

 清潔感溢れるフロアに何人もの若い店員が右に左にと忙しなく働いていた。


「俺は衣装(スキン)に興味はない、連れの女性の仕立てを頼む」

「ビアンツにこんな大きなお店があったのですねっ。ここはお洋服屋さん……でよいのでしょうか? 私の知っているお洋服屋さんと雰囲気がかなり異なりますが……」

「ここは毛織りギルドと魔法ギルドが手を結んで建てた衣装(スキン)専門の店だ。衣装(スキン)というのは、今来ている防具の能力はそのままに、別の防具の見た目だけを反映させることを言う。――要は、着せ替えの店だな」


 衣装(スキン)技術は最近台頭してきた技術で、冒険者の間で結構流行っていたりする。

 装備によっては見た目がイマイチだったり、逆に性能低いくせに見た目は優れているものがあったりする。

 そういった装備の見た目だけを入れ替えることを可能としたのが衣装(スキン)なのだ。


 ちなみに衣装(スキン)はスキルによって可能とした技術である。

 俺の催眠紋をカムフラージュするスキルの上位互換と言っていいだろう。

 正直戦闘では煌びやかな活躍は望めそうにないスキルだが――アイディア一つで成り上がれるということだろう、この巨大な店はまさにそれを証明していた。


「店員さん! あ、あたしのおへそだけ上手く衣装(スキン)で隠せない? 見た目はもうこの際問わないわっ」

「もちろん出来ますとも! なら、おへその部分を別のインナー衣装(スキン)で隠しちゃいましょうか。……素敵なタトゥーですのにもったいない。下腹部という場所的に、大事な人への誓いなのでしょう?」

「ち、誓いって――ち、違うからっ! これは私が最強になるための踏み台なのっ! あ、あいつのことなんて、別に……あーもういいから、早く隠してっ!」

「かしこまりました、適用期間はいかがいたしましょう? 二週間から最長一ヶ月まで選べますが」

「一ヶ月で! お金ならいくらでも払うわ!!」

「ショックなものだな。そこまで催眠紋を否定されると……」


 俺は人知れずショックを受けたが、とにかくジルの注文は無事通ったみたいだ。

 青を基本とした爽やかな少女の服、そのへそ部分は黒のインナーで隠されてしまうのだった。


「ふーっ! こ、これでもうおへそ隠しながら歩かなくてもよさそうね」

「他の女性陣は衣装(スキン)チェンジしなくてもいいのかな?」

「うむ、この鎧のデザインを気に入っているからね。今後装備が変わることがあっても、私はこの純白角(ユニコーン)騎士団モデルの衣装(スキン)にすると思う!」

「私も今の修道服で満足しております。これは神を模した衣装でございますから」


 俺達の場合、衣装(スキン)を変えるというより、衣装(スキン)を従来のものに戻す時に利用しそうだなと思うのだった。


 そうして俺達は全ての買い物を終えて、街の広場に集まった。

 もう正午を回っていた。


「――以上が冒険前の支度だ。オリヴィア、聡明な君なら理解出来ただろう」

「はい……とても大変ということが身に染みて分かりました」

「そうね。オマケにとってもお金がかかる」

「うむ。この強化で石の神殿依頼(クエスト)の報酬はほとんどを使い切ってしまったよ。――こうなると、五人目の仲間は厳しいだろうねゴクゴク」


 最後にフリーダは好物のミルクを飲む。

 一人だけいやに節約していると思ったが、こういうことかと全員が合点した。

 俺はフリーダの言葉に続く。


「俺達のパーティは今、フリーダ・ジル・オリヴィア・そして俺と、物理攻撃しか攻撃手段がない。唯一ジルが炎属性の攻撃方法があるものの、それだけでは心許ない」

「ハァ、悔しいけどその通り、言い返せないわ。となると、次に仲間に入れるのは魔法使いってことになるわけだけど」

「この金欠状態で加入させられるものなのでしょうか……? もうお一方入れるとなると、収入が支出に追いつかなくなるような……」

「ゴクゴクうむ、その通りなんだよオリヴィア。『A級パーティは四人まで』。五人以上で活動するには赤字なんだ」


 フリーダが言ったそれは冒険者の間では常識だった。

 ジルが言う。


「じゃあ、次のあたし達の目標は――」

「S級に昇格することだ」


 俺が目標を掲げると、冒険者達は黙った。

 

 高い――高い目標だ。

 オリヴィアも、Tier(ティア)5の価値は分かっているはずなので、理解出来たのだろう。

 皆が黙る中、俺が口を開く。


「それとも、役立たずの俺を追放してみるか? そうすれば魔法使いを入れられるぞ」

「役立たず? もうっ、あなたは何を言うんだマルク」


 一番に否定してきたのはフリーダだった。


「あなたこそ、このパーティの柱だろう。ジョークのキレが落ちたなっ」

「認めたくないけど……あんたあってのあたし達よ。超有能なあんたのクビを切るなんて大バカ行為、末代まで恥を残したいと思った奴しかしないわよ」

「マルク様、私はあなたを、そして皆様を信じております。きっと私達は、最高の冒険者になれます」


 俺が柱――か。

 こんなに信頼を感じた経験は、初めてだな。

 ちょっとしたジョークだったつもりが、これは不意打ちだ。

 そっちがそうくるなら、俺も言わせてもらおう。


「任せろ。絶対にS級になってやろうじゃないか。フリーダもジルもTier(ティア)5に届けた。だったらオリヴィアだって届けてみせるし――俺自身も、Tier(ティア)5に辿り着いてやるさ」


 俺らしくないなと思ったが、仕方ないだろう。

 俺だって一人の人間、一人の夢見る冒険者なんだからな。


「決まりだな。次の目標はS級昇格だ」

「うむ! じゃあ行こうか、冒険者ギルドで依頼(クエスト)受けにっ!」

「さてさてさ~て、次期S級に相応しい依頼(クエスト)はあるかしら?」

「私、美味しい郷土料理がいただける依頼(クエスト)を希望しますですっ」


 目標の決まった俺達は冒険者ギルドに向かう。

 俺が最後について行こうとすると、くるりとフリーダが振り返って。


「活き活きしたマルクも――格好良かった、よ」

「やめろ、恥ずかしかったんだからな」


 女騎士はちょっと耳を赤らめながら、俺にトドメを刺してくるのだった。

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