表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/99

メドューサ戦 ③ やはり、催眠術に頼るしかないみたいだな

 メドゥーサはフリーダに斬りつけられることを恐れず、背を向けて別の方を向いた。

 それは、俺やジル、オリヴィアのいる方だった。


「S級帯、頭も切れるか!」


 俺は叫ぶ。

 フリーダに効かないなら、バフの大本を断つ。当然の思考。


 俺が言った真意は、そんな分かりきったことじゃない。


「小型盾スキルTier(ティア)――5! 『ファランクス』!」

「フリーダ、君って奴は――!」


 石化を防ぐ手立てのない俺達に、魔眼の力が向けられた瞬間。

 フリーダは俺達の前に盾を持って立ち塞がっていた。

 街で買ったばかりの新品の盾で、俺達をかばったのだ。


 騎士の本懐、人の盾となる。

 メドゥーサはフリーダの人間性を見抜いて、最も効果のある攻撃を仕掛けたのである。

 俺が言った真意は、それだった。


「くっ、大丈夫か、マルク、ジルちゃん、それにオリヴィア!」

「た、た……助かったわ女騎士……あいつのコレクションに加えられるところだった。にゃん」

「わ、私達は大丈夫ですっ。フ、フリーダさんはっ」

「私は大丈夫! マルクの催眠があるからね! ただ――すまない、判断ミスだっ……!」


 フリーダは無事だ、傷もなければ石化の様子もない。

 だが――その手の盾は。


「盾が、保たない――っ!」


 これが鏡の盾であればメドゥーサを倒せただろうが、これは街で買った安い盾。

 なんの魔法効果も持たない盾は、今の一撃で亀裂が入っていたのだ。


「チチチ、私のスキルとお前の盾、一体どっちが長く保つかな?」

「くっ、すまないマルク……奴が背を向けた瞬間に、斬り殺していれば勝てた戦いだった……! だが、みすみすあなた達を見捨てることなど、騎士の私には……!」

「自分を責めるなフリーダ、俺が君の立場だったら同じことをしていた。俺も、紳士だからな」


 フリーダは効率なんかよりも、仲間の安全を第一に取る。

 仲間思いの良い奴なのだ。だから俺は、この人と組むことにしたのだから。


 俺は、フリーダに言う。


「それに君の判断は間違っていない。魔眼スキルは上位も上位、石化された段階で心臓は止まり、俺の低位な催眠バフはその瞬間に解けたかもしれない。君一人が生き残ったとしても、S級帯の最下層を一人で脱出することは不可能だ。これが正解だった」

「すまない……マルク」


 だが、ジルが焦った調子で続けた。


「で、でもどうするのっ。いくらTier(ティア)5のフリーダだって、ここからじゃ距離がありすぎるっ。ここからチクチクあいつに攻撃与えたとしても、その前に盾が壊れて――」

「大丈夫です。きっとマルク様が、一三神様が我々を守ってくださります」

「最期は神頼みするしかないって言いたいわけ!? にゃん!」

「神と同列に期待されるとは、催眠術師も出世したものだ。フ、だがそうだな」


 俺は自嘲しながら、続けた。


「やはり――催眠術に頼るしかないみたいだな」


 勝ち筋は――ある。

 俺のそんな言葉に、フリーダが反応した。


「ど、どういうことだマルク! まさか一発逆転の催眠が!?」

「スキルは今までと変わらん。ただ、その()()を変える」

「対象をって、ど、どういうこと……にゃん」


 そう言ったジルの両耳――人間の方の耳に、俺は手を持っていって、ある物をすぽっと抜き取った。


「耳栓を取った状態で、俺の催眠を受けるんだ、ジル」

「きゅぅぅぅぅぅん――って、な、何するのよーっ!」


 それは封呪の耳栓だ。

 ジルは人間の方の耳を両手で覆って抵抗するが。


「説明する暇はない、次が来る。俺の催眠を受けるのか、受けないのか」

「さ、催眠……そんなの、死んでもイヤ!」

「だが、永遠に石化するよりマシだろう?」

「ぐ、ぐぬぅぅぅ……!?」


 メドゥーサが魔力を目に込める。

 時間がない中、ジルは遂に――


「もう――す、好きにしなさい! にゃん!」


 堕ちるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ