第366話 ケートとそら豆のニンニク醤油炒めとバードソング・レッドと
ストックが無くなったので、これからは不定期更新となります。
よろしくお願いします。
「あっ、デュラさん。いろはさんからデュラさんにお土産ぇ」
「なんであるか?」
私はニンニクが浸かったお醤油の大きな瓶をデュラさんに見せるとデュラさんの目がみるみるうちに輝いていくわ。一応、悪魔だから闇の眷属だろうに、こんな澄んだ瞳をした悪魔、見たことある? まぁ、普通に生活してたら悪魔なんて出会う事もないんでしょうけど、
「いろは殿にはこれで今度何か作って差し上げるとしようか」
「そうしてあげて」
「勇者も何か作ってほししぃ!」
「私も作って欲しいけど」
ウチの料理番、デュラさん。和食系はまだ私の方が美味しい自信があるんだけど、アレンジ系になってくるとちょっとデュラさんに軍配が上がるわね。私がいない時もオヤツや食事を作ってくれるデュラさん。そして二人の希望に対して、
「分かったであるぞ! 簡単な物を作ろうであろうな? して、金糸雀殿。酒の方はどうするであるか? それに合わせた物にするが」
ニンニク醤油を使うというのに、お酒に合わせるかぁ。デュラさん、料理人レベルが上がったわねぇ。じゃあ、ここは私が安牌のお酒を出そうかしら。
「これなんてどうかしら? メルシャンのフランスワイン。バードソングね」
今年の9月に新発売された1000円以下で買えるフランスワイン。私達日本人は、チリ、カルフォルニア、日本と新世界ワインに慣れてるけど、ワインをステップアップしたいなと思った時、フランス産のワインがちょっとお高いな思えるんだけど入門用にこれはいい価格なのよね。フランスのワインはやっぱりワインのベースだからこの旧世界の味が分かるようになると、新世界ワインもより楽しめるのよね。
「ワインであるか……それなら醤油に合うので先に味を見てからで良いであるか?」
「もうプロの域ね。じゃあ、先に乾杯しましょうか?」
ワイングラスを用意するとそろそろ来るでしょうね。
ガチャリ。
「むっ! 私の上位神の気配だけど」
「ケートス。そなたか?」
すっごくいい声、渋くてゾワっとするセクシーな声の主は……なんだろう。トドがズボン履いたみたいな人やってきたわ。ケートスさんはサメっぽい感じの可愛い女の子だけど、この人は普通に怪物系の人ね。
「ケートスが世話になっている人間の部屋か、某はケート。海は恐ろしい、海を舐めるな! という概念が神となった者!」
「う、うざす! 海を舐めるなおじさんなりにけりぃ!」
まぁ、ケートさんは海坊主とか舟幽霊とか妖怪がいるけど、そういう概念みたいな海外版という事ね。
「ケートさん、今からワインに合うおつまみをデュラさんに作ってもらうので、ご一緒にどうですか?」
「あいやー、しばらく。いただこうかな」
「うぜぇ! ちょーうぜー!」
ミカンちゃん、うざいおじさんの苦手すぎるでしょ。なんでも半袖半ズボンで富士山を登った時に山を舐めるなおじさんにブチギレられたとかで根に持ってるのよね。ミカンちゃんは加護があるから酸欠にもならないし、温度調整もできちゃうとかいうチートがあるのが問題なんだけどね。
「じゃあ、みなさん。グラスを掲げてください! 海に感謝をして乾杯!」
「金糸雀、いい事言うんだけど」
「乾杯なり!」
「乾杯であるぞ!」
「海は全ての生命の始まり、乾杯!」
うっざぁー! という顔をしてミカンちゃんはワインをグビりと一口。私たちもバードソングをぐいっと一口。
渋みの中に味わいが広がるわね。デキャンタを用意しなかったのは、直接の味を楽しんでみたかったと言うのもあるんだけど、多分そこまで開かないんじゃないかなーと言う先入観ね。
「勇者、しゅわしゅわを追加したーいかもぉ」
「懐かしい味だけど」
「うむ、これが安価とはこの世界は恐ろしい。我の世界では魔王様に献上する物ですらこれより劣るワインである」
さて、海を舐めるなおじさん事、ケートさんは? 口の中で転がしてる! 昭和のおじさんのワインのテイスティングだぁ! これはウザイ!
※間違ってないんですよ! ただ昭和時代はちょっと欧米かぶれで変なテーブルマナーが多くてですね。詳しくは調べてみてください。
「完璧な酒ではない。が、普段飲みするのには丁度いい塩梅だな」
否定から入る感じ、そして評価もほどほどにするのがあれね。うざいわねぇ。ミカンんちゃんがコーラと混ぜてカリモーチョにしながら白い目でケートさんを見てるわ。グラスをくるくる回しながら香りを嗅いでる。テーブルワインにその飲み方いるかなぁ? とか思うけど、あえて指摘はしないのはお酒の飲み方は人それぞれだからね。
「割と甘みより渋みと酸味が先に立つであるな。ならば……これで合わせるであるぞ」
デュラさんはそら豆を用意すると、それを皮ごと炙って焼くと、オリーブオイルで皮から外したそら豆を炒めてる。
そこに……
「ここで香りづけにニンニク醤油である!」
ジュッと香りをつけて、お皿に出すと食べる前から分かるわ。これはワインを飲む為に作られたオツマミよ。ワインで刺激された私たちの空腹感をくすぐるので私たちはそら豆のニンニク醤油炒めをいざ。
実食!
「うまっ!」
「うみゃ!」
「美味しいけど!」
外は揚げられたみたいにパリってなってるのに、中はホクホク。オリーブオイルとニンニク醤油を吸ってこれだけで完成されているオツマミね。ビールよりもワインに調整してきてるのがデュラさん憎いわ。ケートさんはカッ! と見開いてそら豆のニンニク醤油炒めをパクりと食べ無言で咀嚼。
そして、バードソングを一口。
そしてゴクンと飲み込んだわ。果たして、どう出るのかしら? 神妙な顔をしているケートさんは、デュラさんを見ると「やったな! 大悪魔」とご満足したみたいね。余韻に浸るようにケートさんは語る。
「まず素材の味を生かす為に素焼きして味を包み込んでいるのがいい。味付けで誤魔化すのではなく、香り付け程度に抑えているのがまたいい。そしてこのワインを引き立たせる為に考え抜かれた逸品、見事」
「おおう、であるな!」
作ったデュラさんも引いちゃったじゃない。たまにくるヤバい系の人だけど、実害がないからミカンちゃんも名物おじさん来たくらいでもうウザイウザイ言われなくなったわね。
「では、これを踏まえた上で、パルメザンチーズなどいかがであるか?」
あぁ、普通に美味しそう。私達は言われるがままにパルメザンチーズをかけたそら豆のニンニク醤油炒めにバードソングを合わせて、
「うん、これも美味しいわ。なんだろう。その辺の洋食屋さんにありそうな前菜ね。かといって力強いニンニク醤油とそら豆のおかげで赤に合わせてきてあるし」
ワインって基本軽い物から重い物の順番で飲むんだけど、日本人はフルボディが好きな人が多いからデュラさんの料理とマッチしてるわね。
「もう一本開けるけど、みんな飲むわよね?」
「もちのろんなりっ!」
「全然いけるけど」
「どんと来いであるぞ!」
グラスにワインをまだ残してくるくると回しているケートさんだけが私たちをクスりと笑ってグラスの中身を飲み干したわ。地味に、食べ物が口の中にない時にワインを飲んでるし、上品さはあるのがおじさんなのよね。
「若いなぁ、若い。お酒は楽しむもので量を競う物じゃあない」
「そりゃそうなんですけどね。私たち若いので量を飲むのも楽しみなんですよね。それにテーブルワインはガブガブ飲むように作られてる物ですし、当然もっといいワインだったら私たちもこん飲み方しないですよ」
「ハハっ、これは一本取られた、いただこう!」
と言う事で2本ボトルを追加よ。スクリューキャップは開栓が楽でいいわね。トクトクトクと全員に注いで、2回目の乾杯。そろそろ女神様がやってくる頃合いね。と思ったら、ガチャリ。
「うおーい、金糸雀ー大変だぁー!」
セラさんの方が来た見たいね。何が大変なのか分からないけど、セラさんが具合の悪そうな人を抱えて私部屋に入ってきたわ。顔色の悪いというか、青白い顔をした男性。話を聞こうとしたら、セラさんも青い顔をして、
「うっぷ、トイレを借りるぞ」
どっかその辺で飲んできたんでしょうね。さて、私達は青白い顔をした男性を介抱しようとした時、彼が名札をしている事に気付いたのよね。
“サンタクロース 第三配達部・スノーマン“




