第200話 雪女とスーパーカップとことんショコラとアードベッグ アンソロジー ザ・ハーピーズ・テールと
「おこたー!」
「ミカンちゃん! こたつ亀にならない!」
ミカンちゃん死ぬ程こたつ好きなのよね。だから炬燵出すの嫌だったんだけど……でも炬燵の魔力は半端じゃないわねぇ。
「ポカポカれすぅ」
「はーっはっは! 我は首だけ故、その魅力とやらは分からぬが余程の力を持っているであるな!」
ミカンちゃんが突然炬燵から飛び出すと冷蔵庫へ、そして人数分持って来た物は……毎年発売されてる大人のスーパーカップ!
「勇者、おこたでこれを食べたし! スーパーカップとことんショコラなリィ!」
「よく買えたわね! この前コンビニでも全部売り切れてたわよ?」
ミカンちゃんは炬燵に戻ってくると再びこたつ亀に戻ったわ。猫みたいな口でミカンちゃんは私の疑問に答えてくれたわ。
「勇者の信者達が勇者が食べたしと言ったら買って来てくれた」
「信者って言わないの」
ファンも信者も似たようなもんだと思うけど、ちょいちょいミカンちゃんの口の悪さが露呈するのよね。それにしてもミカンちゃんナイスよ! 私も食べたかったのよ。
「スーパーカップはお酒をかけて食べると美味しいであるな!」
待って、待って待って! それ私できない奴じゃない……違うわ! 違う違う! 日本の謎法律の回避方法があったわ。日本ではお酒の成分が入った食品はお酒ではなく食品やお菓子として扱われるので、地味に子供が食べても問題ないという意味不明な理由付けがあるの。
「そうね! 最高のバーボンを出してあげるわ。この部屋にあるお酒の中でも私の所有物の一つ、これをスーパーカップとことんショコラにかけて食べましょ!」
ガチャリ。
寒っ!
部屋の温度がいきなり少し下がったような気がするんだけど……一体どんな人が来たのかしら? デュラさんが「我が見て来よう」と向かっんだけど……
「中に入るとよい」
「いいんですか?」
だなんてやりとりをした後にやってきたのは……あったかそうなコートとロシア棒を被った青白い女の子。とりあえず私がコタツから出て。
「この部屋の家主の犬神金糸雀です」
「あの私、雪女です」
「えっ! あの雪女さん?」
「久しぶりに山から下りてきたんで犬神さんにご挨拶をと、これ……お土産の東京ごまたまごです」
「あっ、どうも」
完全に凍っている上に東京に住んでる人間に東京土産を渡す雪女さん、好きなのかしら。というか兄貴、妖怪的な人も知り合いがいたのね。
「兄貴は色々あってこの世界にはいなさそうなんですけど、お知り合いなんですか? とりあえず入ってください」
「はい」
コタツを見ると、さすがに遠慮したのでテーブルの椅子に案内。お茶とかいりますか? と聞いてみたら「アイスコーヒーをお願いします」というので、アイスコーヒーを用意する私、ちべたい……
「実はある嵐の日に犬神さん達が山小屋で吹雪が止むのを待っていた時に、私は雪女として皆さんを驚かしたんですが、すでに酔ってできあがっていて全然怖がらなかったんですよ。そして翌年。同じ山小屋にまた吹雪の日に犬神さん達が集まっていたので次は同じ避難客の娘のフリをして山小屋を訪れました」
あー。それでこういう日はあの時を思い出すなーみたいなやつね!
「すると、犬神さん達に秒で雪女である事がバレて……酒盛りに参加したんです。それから私も犬神さん達の酒サークルの一員です」
もう色々すっとばして凄いわね。という事は雪女さんは呑兵衛という事か、私は私の秘のアードベッグ アンソロジー ザ・ハーピーズ・テールを持ってくると、
「じゃあこれを飲み……アイスにかけて食べましょ!」
ミカンちゃんの信者くん達が大量に貢いでくれたであろうスーパーカップとことんショコラが冷凍庫に一杯入っているのでそれを一つ、アイスクリーム用のスプーンを雪女さんに「どうぞ!」と渡して、
みんなはショットグラスに、私は一応身体が未成年なのでスーパーカップの容器にアードベッグ アンソロジー ザ・ハーピーズ・テールを注ぐ。
「はぁあああん、この香りさいっこぉお」
アードベグの何とも言えないスモーキーさにハーピーズテールは甘さも凄いのよね。本来アイスに掛けて食べるよりストレートでゆっくり楽しみたいけど背に腹は代えられないわ!
「じゃあ、旧兄貴の呑み友達の雪女さんに! 乾杯」
「「「「かんぱーい!」」」」
ショットで一口含んだ雪女さんは「これはいいお酒です」とそしてスーパーカップとことんショコラを一口。目を瞑ってんんんんんっ! と頬を染めて楽しんでますね。デュラさんはアードベッグ アンソロジー ザ・ハーピーズ・テールの余韻を何度も楽しんで、アイスを一口。「金糸雀殿の所有のお酒はどれもレベルが高いであるな!」と言われるのでそれほどでもないけど、兄貴と違って高級酒しか所有しない事にしてるからね。
「金糸雀お姉ちゃん、おいしいれすぅう!」
さて、さてさて、私もアイスにかけたアードベッグ アンソロジー ザ・ハーピーズ・テールをいただきます!
「いやあぁああん! さいっこぉおお!」
もう子供の身体になってから久々に口にしたお酒はそれはそれは天にも昇るような気持ちだったのよね。というか、私……
「はっ!」
目を覚ました私はベットの上で、どうやらあの一口で酔っぱらって打ち倒れたみたい。お酒の耐性がまったくこの身体はないのね……なんだかなぁ、少し痛い頭を抱えながら私がリビングに戻ると、
「そもそもですねぇ! 金糸雀ちゃんは最近冷たいのです! 聞いていますか? 氷の魔物」
「えぇ、ですが犬神さんの妹さんはお優しい方ですよ。むしろ、冷たくされるなんて最高じゃないですか!」
「聞いていますか? 氷の魔物。私はですね! かつて世界が滅びに向かっていた時、神々の中で人間と魔物達の間に入り、先陣を切って……」
「雪山に登ろうとする愚かな人間達が今の世にも大勢いて、それを脅かして引き返させる方法が最近難しくなって来ました」
そこでは私のアードベッグ アンソロジー ザ・ハーピーズ・テールを前に、ニケ様と雪女さんが全くかみ合わないお話をしている最中で、私の秘蔵のお酒がもう殆ど残っていない様子に私は再び意識を失いそうになったわ。たった一口だけしか飲んでないなんてあんまりよ……
涙目の私が呆然と二人を見つめていると、二人は無言で私の元に来てぎゅっと抱きしめてくれたわ。美人二人の抱擁。
暖かいニケ様と冷たい雪女さんんからはアードベッグ アンソロジー ザ・ハーピーズ・テールの品のいい匂いがした。割といい思いをしているハズなのに、何故だか私はやっぱりその日泣いたわ。
だって、超高いお酒なんだもん!




