第06話 樹海の亜人
──『死神の町』、郊外。
町から少し離れ、森を切り開いて作られた平原。普段、ウォルフ達が兵の訓練等で使っている場所だ。ここには今、ウォルフ達が号令をかけて集めた、全国の亜人達の代表が集結している。俺は今、小高い丘の上から彼等を見下ろしていた。
「よく、これだけ集めたな……」
意外だった。代表者だけを集めたとは言え、それでも数十人はいる。一種族数人と計算しても、この数は俺の予想よりも多い。つまり、それだけ大和には、亜人の種族がまだまだ隠れ住んでいたと言う事だ。
「『影紅葉』が頑張ってくれました。それに、元々、我等は他種族の情報には敏感なのです。ですので、大体の種族の所在は把握していたんですよ」
楓達を労いつつ、ウォルフはそう説明した。
「しかし、この中には、『主にお会いしてから判断する』と言う様な者達も含まれておりまして……」
少し申し訳無さそうに、楓はウォルフの説明に付け加えた。俺が、逆らう者、或いは、即答しない者は皆殺しにしろと命令していた事を気にしているのかも知れない。
「気にするな。一応、どんな内容であれ、即答はしているんだ。何の問題も無い」
「はっ!」
楓も、それ以上は何も言わなかった。やや、気にしている様な節はまだあるが、一応、納得はした様だ。
俺の事を見て判断する……上等だ。好きな様に見定めればいい。俺にとっては、『敵』か『味方』かだけ、ハッキリさせればいい事だ。中立は無い。つまり、ここに来た時点で、味方にならないならば殺すだけ。それだけだ。裏切る可能性がある以上、味方以外は敵だからな。俺は、初めからそう宣言している。
「これで、全部かい?」
傍らに立つ、コンがウォルフに尋ねた。どうやら、既に気が付いているみたいだけど。
「いや、残念ながら全部ではない。僅かだが、反抗の意志を示した種族がいた。勿論、指示通り皆殺しにしたがな。それと、一部の種族は既に集落を引き払っていた。別の勢力に付く為に……」
既に、察しが付いている上で聞いていたのか、コンは驚きもしなかった。そして、確かめる様にその憶測を口にする。
「……ラビリア、かい?」
そう、ラビリア。以前、ボアル達の提案を拒み、俺の配下に加わる事を反対した兎人族。その、族長の名だ。あの後、鬼人族との抗争になりかけた際、その企みが俺にバレて、コンに集落を襲われている。コンの話では、既にもぬけの殻だったと言う話だが……。
「ええ。ほぼ、間違いなく。幾つか、ラビリア達を見たと言う目撃情報も得ています。犬人族や猫人族も一緒みたいですね」
「チッ! あのお花畑が……今度は、何を企んでやがる!」
答えるウォルフ達の会話に、傍で聞いていたボアルが割り込んだ。ラビリアと一番付き合いが長いのは、ボアルだ。異種族間会議で、ラビリアを説得出来なかった事にも、責任を感じているのかも知れない。今、この場にいる幹部の中で、一番憤っている。
「まあ、落ち着け。ボアル殿。なあに、あんな兎がチョロチョロした所で、何も出来やしないさ」
怒りに震えるボアルを、ベンガルが宥めた。気を効かせたコンが、話題を変える。
「……で、それ以外が今、ここに集まっている連中って事かい。おや? どうやら、意外な面子もいるみたいだねぇ……」
「揉め事を起こすでないぞ、小娘? あ奴とお主が犬猿の仲なのは、わしも知っておるが……」
今回の件を機に同盟を解き、新たに幹部として俺の配下に加わった、天鬼がコンを諌めた。コンと犬猿の仲の亜人。俺は、そう聞いてピンと来た。確か、ウォルフの説明にもあった様な気がする。
俺は、集まっている亜人達を見渡した。そして、それは直ぐに見つかる。間違いない、あいつだ。東端の森の支配者。
化け狸。
一目見てそれとわかる、その風貌。確か、名前は『クラン』と言ったか。見た目は幼い少女だが、明らかに狸とわかる、耳と尻尾。しかも、小柄で幼児体型の癖に、とんでもない巨乳だ。そのせいか、一層、その姿は丸く、幼く見える。幾ら仮の姿とは言え、コンと正反対のタイプだ。
「わかってるよ、酒呑! これでも『死神の町』の幹部なんだ。今更、あんな狸、相手になんかしないよっ!」
幹部としての自覚なのか、それとも、進化した事による余裕なのか。どちらにしろ、面倒な事にはならなくて済みそうだ。
「で、他にはどんな面子が集まってるんだい?」
誤魔化す様に、コンはウォルフに話を振る。すると、ウォルフでは無く楓が説明を始めた。情報を扱う忍者集団、『影紅葉』。その組織を預かる者として、自分の方が適任だと思ったのだろう。ウォルフも、特に異論は無い様だ。
「強力な能力を持つと言われる種族の代表は、全て集まっています。やはり、『樹海の死神』の名は大きいかと──」
ウォルフの説明では、この樹海は、大和の縮図と亜人の間では言われているらしい。事実、強力な亜人は、殆どこの樹海に集中している。酒呑童子、九尾の狐、そして魔神。普段から普通に接してはいるが、こいつ等も伝説的な存在らしい。『樹海を制する者が大和を制す』。最早、亜人の間では常識だそうだ。
そして、その樹海に突然現れた、『樹海統一』に一番近い男。そんな『死神』の呼び掛けなら、来ない方がおかしいと言うのがウォルフ達の弁だ。
「──既に、『死神の町』の下へ付く事を承諾した種族は、樹海からは全部で三つ。まずは、妖魔種である、河童族。そして、精霊種からは木霊族、樹木族です。鼠人族と関係の近かった蜥蜴族は、ラビリア達に付きました」
「他の種族は?」
珍しく、ジンが口を挟んだ。
「天狗族と妖精族、そして狸人族は、主にお会いしてから決めたいと……」
「ほう?」
ピクリと、ジンのこめかみが動いた。ヤバい。あれは、ジンがキレかかっている証拠だ。
「──下等な亜人風情が、我が主を値踏みすると……そう、言っているのですね?」
──前言撤回。
あれは、もう手遅れだ。
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