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魔神が行く異世界大蹂躙  作者: 夜桜
六章 対決SSSランカー、アキレス皇国大魔闘祭編
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Bグループ 第一試合

さて、ようやく更新です

魔闘祭会場。その場所は今日も満員の客で隙間無く満たされていた。


『レディースアーンドジェントルメーン!!さぁ始まりました!皆様お待ちかね魔闘祭二日目!!』


「「「「「わー!わー!待ってましたー!」」」」」


司会の男が魔道具と自前の大きな声で会場のテンションを上げ、観客もそれに答えるかのような大声でそれに答え、会場の熱気は徐々に高まって行く。


「始まるな」


和人とその仲間達は選手控え室でのんびると寛いでいた。周囲には彼等を遠巻きに畏怖の目で見る大会参加者達と、複雑そうな顔をして見ているSSSランク冒険者達がいる。ピリピリしているこの空間で、和人達一行だけが唯一余裕の態度を崩さない。

既にレディアとファルシオンは観客席へと移動しており、この場にいるのは和人と大会に参加する少女(?)達だけであった。そんな中和人がぼそりと呟いた。


「人少なくなってないか?」


和人の呟きを聞き止めたヴェル達が辺りを見回すと、確かに昨日より人数が減っていた。だが幸いな事にその疑問は直ぐに解消される事になった。


『まず初めに皆様に残念なお知らせがあります!本日試合に出る予定だった選手が数名棄権をしてしまいました!』


えー!?と言う声が会場のあちこちから聞こえて来るのを、司会の男は如何にも無念だと言った表情で受け止める。


和人は大体の事情を察してバツの悪そうな顔になる。


『棄権されたのはSランク冒険者兄弟エリアル選手とムリエル選手、同じくSランク冒険者のミンディ選手とフェイリアス選手、そしてSSランク冒険者のゲイダス選手です!これにより、カレン選手とレミナス選手とスミレ選手とファルトニス選手の二回戦進出が決定します!そのため、本日は予定を早め、Bグループは二回戦までを一気に行います!皆様どうかお付き合いください!』


司会の男の言葉に渋々ながらも頷く観客席の人々。和人の予想が当たっていれば棄権理由は恐らく昨日の試合だろう。SランクやSSランク冒険者は大小の差はあれど、皆それなりの自尊心を持っている。特に高ランクの冒険者となるとそれが尚更顕著であり、同時に他の何よりも自分の身を優先する。そんな彼等が昨日のヴェルやローズの圧倒的試合を見たらどうだ。

己の強さを誇示する事に一種の生き甲斐や評価を感じている彼等の前に突如と現れた名も知らぬ圧倒的実力者。負けると分かり切っている相手にわざわざ無様な姿を見せるような事は一部の例外を除き、自尊心の高い冒険者達はしないのだ。それが己の評価へと繋がるのだから当然である。

強者との戦いに心躍らすような特殊な人種もいるだろうが、そう言った人種は本当に極稀で、大抵の場合は前述した通りとなる。


一方騎士や傭兵だが、彼等は基本的に強者と戦う事が多い。騎士の場合、まず例外なく仕えている相手がおり、その者を守るためにはどんな強い存在が相手でも引く事は許されない。傭兵もまた然り。金で雇われる以上、その金に報いる働きを雇用主に見せないとならず、敵前逃亡などしてしまったあかつきにはあっと言う間にその者の悪評が世界中に広まり、仕事どころでは無くなる。そのため騎士や傭兵は基本的に逃げる事をしない。


「多分昨日のヴェル達の戦いにビビっちまったんだろうな。にしても、SSランク冒険者までもが逃げたってのにSランク冒険者程度の実力しかない騎士やら何やらからは棄権者が出てないな」


「まぁそれが騎士としての誇りや吟醸なのじゃろう。人間達の考えなど、私には分からぬから正確な事は言えぬがの」


和人の呟がそう感想を漏らすと、ヴェルが頷きながらそう応じる。


「弱いのが悪いのにねー」


「あーあ……一回戦目のボクの試合無くなっちゃったよ。棄権なんてしなくていいのに」


「ローズ、カレン、あまりそう言う事は言うものではありませんよ?棄権された方々は各自の判断でそうされたのですから」


「同意……」


特に気にした感じもなく言うカレン達に、和人は苦笑を漏らし、それもそうだなと言って納得する事にした。


『それでは早速Bグループ第一試合に移りましょう!名前を呼ばれた選手は舞台にお越し下さい!』


「っと、始まるようだな」


和人達がそんな風に寛いでいると、長ったらしい前口上がようやく終わったらしく、司会の男によって、本日最初の試合カードが読まれる。


***


『本日最初の試合は……おお!SSSランク冒険者にして「炎の魔導王(フレイムロード)」の二つ名を持つ我らが英雄!フレイ・アルサム選手VS最強の傭兵団「戦場の狼」の副団長にして「不死身」と呼ばれる男デュオン・マグヌス選手!』


「よっしゃあ!俺様の試合だぜ!」


「ふむ、【炎の魔導王(フレイムロード)】が相手か……是非共胸を貸していただこう!」


呼ばれた二人が舞台に上がる。


《ファルシオン、レティ、期待は薄いが一応見逃すなよ?》


《了解です和人様!》


《お任せください!》


和人の思念をに快く返事を返すファルシオンとレディアの二人。和人は満足気に頷くと、自身も試合に注目を始めた。


***


「よぉ、デュオンったか?お前さんの噂はよく聞いてるぜ!お前さんはどんな戦場で、どんな大きな傷を負っても決して死なない男なんだってな!【戦場の狼】の団長は確か【不動要塞(フォートレス)】だったか?」


「うむ、左様。天下のSSSランク冒険者であるお其方に吾輩達を知っていて貰えるとは光栄であるな」


フレイとデュオンの闘いは舞台の端と端で互いに睨み合いながらの軽口の言い合いからスタートした。


「ったりめぇだろうが。たった100人程度の少数傭兵団だが、団員全てが最低でもAランク冒険者程の実力を持つ最強の傭兵団【戦場の狼】。俺様も何度か一緒に仕事した事があるぜ」


「ほほう!それはなんとも光栄で羨ましい事だ!では、せっかくなのだから吾輩も【炎の魔導王(フレイムロード)】殿にご指導願おうか!」


デュオンはその言葉を置き去りに、一気にフレイの懐に突っ込んだ。フレイは純粋な魔法使いなので、接近戦には弱いと踏んだのだろう。それは確かに戦略としては正しい判断だが、相手はSSSランク冒険者のフレイ・アルサムである。そう簡単に行くわけも無かった。


「甘いぜ【不死身】のデュオン!」


フレイは、羽織っているローブの懐から愛杖の「火竜王の紅玉」を取り出し、地面に突き刺した。


「『爆炎の城壁(ブレイズウォール)


瞬間、地面が爆ぜてその下からマグマのように煮えたぎった炎の壁がフレイの姿を隠すように現れた。


「なんのこれしき!」


だがそれをデュオンは闘気を纏った拳で突き破る。そして、その勢いを殺すこと無くフレイの顔面へと突き刺さる。


「ぐわあ!?」


しかしダメージを受けたのはフレイでは無くデュオンの方だった。デュオンの拳は煮え滾る炎の中に突っ込まれていたのだ。


「甘いと言っただろ?」


聞こえる声は背後から。ばっと振り返ると、してやったりと勝ち気な笑みを浮かべながら佇むフレイの姿がある。


(いつの間に背後に!?)


デュオンは脳をフル回転させて状況を理解しようとするが、幾ら考えても答えに辿り着けない。


「なんで俺様が背後にいるか分からねぇって顔だな。教えてやるよ」


フレイは杖を構え直しながら余裕の態度を崩さない。


「『焔の陽炎(ミラージュ)』」


徐に魔法使いを唱えるフレイ。するとどういう事か、ゆらゆらと不規則に揺れながら存在が希薄のフレイがフレイの横に現れた。


「『炎熱纏換』」


その存在が希薄の方のフレイに本体であるフレイが魔法をかける。すると、希薄だった存在感が一瞬で増し、確かな存在感を持ち本物と遜色の無いフレイが出来上がった。


「これが答え合わせだ。俺はこれをお前さんの拳が俺様に届くまでの時間で構築したのさ」


デュオンの攻撃がフレイに到達するまでの時間は1秒あるかどうかだった。その一瞬でここまでの魔法を発動させる恐ろしいまでの魔法構築速度。SSSランク冒険者最速の魔法構築が早いと言われているフレイ・アルサムの実力の片鱗が垣間見えた。


「だ、だがそれでは背後に回り込むなど出来ないでは無いか!」


デュオンが叫ぶが、フレイはにやりと不敵に笑い、とんでも無い答えをなんの気も無しに答えた。


「んなもん、自分を魔法に変換させて『爆炎の城壁(ブレイズウォール)』でお前さんの視界を覆っている間に回り込んだだけだ」


自分を魔法に変換させたとは一体どういう事か。確かに原理としては魔法による事象の上書きによって肉体と言う概念を一時的に魔法的な何かに変換させる事は可能だ。しかし、それを実践するきは恐ろしいまでの演算能力と概念を上書きさせるに足る確固たる意思、そして何より一つのミスも許されぬ精密な魔法構築が必要とされる。現実的で無い。


「なん、だと……?」


それを理解したからだろう、デュオンは痛みも忘れたと言わんばかりの様相で驚愕している。


「ま、何にせよこれで終わりだ。『爆炎連鎖(チェーンボム)』」


瞬間、舞台は巨大な爆発に包まれた。大気を震わす衝撃にこの試合を見ていた人々の目と耳は堪らず一時的に機能を失う。


「ふぅ、スッキリした」


『し、勝者フレイ・アルサム選手!』


あまりに緊張感の無いセリフに、一足早く復活した司会の男は少し間抜けな様相で勝者宣言をした。静けさに包まれた会場、しかしその宣言にさっきの爆発もかくやと言わんばかりの歓声に覆われる。


***


「瞬殺だったな」


舞台を降りるフレイを見送りながら和人がぼそりと言った。


「ふむ、人間にしては中々の実力者だな。単純な実力なら昨日見たレイとやらとユタネとやらより強いな」


「そうですね。相性では勝ってるボクでも、あの人と戦ったら少しは苦戦するかもしれません」


ヴェルの分析にカレンがそう言って応じるが、裏を返せば少しの苦戦はすれど負ける事は無いと言っているのだ。


「アタシなら一瞬で勝てるもんね!」


「それは貴女が自重を知らないからですよローズ」


「ローズ……まだ懲りて無い……?」


カレン達の会話を横目に、和人はファルシオンとレディアに連絡を取る。


《どうだ?やっぱり本気にさせないと手の内を見せてくれないか?》


《そうですね、あの男はまだかなり余裕を残していたようでした》


《特別な気配は感じませんでした。やはり本気にさせないとダメみたいです》


《やっぱりそうか……分かった、まぁSSSランク冒険者はもう一人いるから念のため一応見ておいてくれ。多分無意味だろうが念には念を、ってな》


《《かしこまりました!》》


その返事を聞き満足そうに念話を切った。


(まぁ予想通りだな……早く尻尾を出してくれよ……?)


そう内心で呟きながら不敵に笑う。最強の魔神の魔の手は、静かに次の一手を刻む。

感想で一つに絞って書いて的な事を言われてしまいました……実際どうなんでしょうか?皆さんの意見をお聞かせいただければ幸いですm(__)m

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