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魔神が行く異世界大蹂躙  作者: 夜桜
六章 対決SSSランカー、アキレス皇国大魔闘祭編
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Aグループ 第五試合

安定の遅い更新です……(泣)

『第四試合はユタネ・ブレイズ選手の勝利でした!

さてさて、この盛り上がった会場で続いて闘う選手はこの人達だーーー!』


テンションが最高潮に達している司会が示すのは二人の少女。


『冒険者登録後、たった一つの依頼でSSランクまで上り詰めた小悪魔系少女ローズ選手!

対するは大会初参加にも関わらず、怒涛の勢いで予選を突破した超新星ミーア・トルジア選手!』


「わっ!和人様和人様!アタシの番だよ!アタシの番!」


「私、ですか……」


名前を呼ばれた二人は舞台へと向かい、そして互いに向き合ったまま試合の開始を待つ。


「ローズ、しっかりやれよ」


「ローズなら大丈夫じゃな」


「僕はローズより相手の選手が心配です……」


「同感です。あの娘は加減を知りませんからね……やり過ぎなければ良いのですが……」


「哀れ……」


和人達は満面の笑みを浮かべているローズにそれぞれ感想を抱き、結果として対戦相手のミーアと言う少女に黙祷を捧げた。


『それでは第五試合、開始!』


司会が大きな声を上げ、試合が始まった。


***


わくわく。


今のローズの心境はまさにこうだ。


(やっとアタシの番だ!相手は物足りないけど、楽しめるだけ楽しもう!)


そんな事を考えているローズとは裏腹に、ミーアは慎重であった。


(見た感じだと構えは素人……だけどなんでしょう、隙だらけなのに隙が無い……)


ミーアのローズを観察する目はとても鋭い。

ミーアは子爵家の三女の産まれだった。そのため幼い頃から色々な物事を仕込まれて不自由を強いられていた。


家督は兄が継ぐ。だからお前は少しでも良い家に嫁ぐ事だけを考えろ。そう教えられて来たのだ。


だが彼女の才能は習い事には向かず、どれを学んでも中々覚える事が出来なかった。

親は早々にミーアを見限り、二人の姉に付きっ切りとなった。


”無能”


それが家族のミーアに対する評価であった。そして本人もそれを認めていた。

しかしミーアには一つだけ他に例を見ない才能があった。それは戦闘技術。


ミーアがその事に気付いたのは10歳の時であった。

それからのミーアはずっと修練を積んだ。朝起きて体力作りの筋トレ。その後素振り。食事を取ったら自腹で通う道場に行き夕方までひたすらメニューをこなす。

そんな日常を8年間続け、遂に道場の師範をも超える強さを身に付けた。

家族もミーアの努力を認め、だんだんと愛情を注ぐようになって来た。

そして冒険者になる前の力試しにと今大会に出場を決めた。


だがそんなミーアにしてもローズの隙だらけの体勢に隙を見つけられない。


(強い……)


ミーアのローズに対する評価はその一言で済む。それほどの気配。それほどの迫力。


「こないならこっちから行くよ〜?」


次の瞬間ローズの姿はぶれ、ミーアの視界から消えた。


「っ⁉︎」


背後に悪寒が走ったミーアは、咄嗟に前転をして全力で前方に逃れた。

その瞬間、ゴウッ!と空気を切り裂くような音がし、風がミーアの全身を撫でる。


「アハハハッ!よく避けたね!」


風が来た方向を見ると、そこには裏拳の形で拳を振り抜いているローズの姿があった。


(拳の風圧だけであの風を起こしたという事ですか……)


ミーアはバックステップで大きく距離を取りながら状況を冷静に分析する。

この冷静さもミーア・トルジアと言う少女の強さの一つである。


「まだまだ行くよ!」


ローズが距離を詰めて来る。今度は何とか目で追える速度だ。


「私はそう簡単に負けるつもりはありませんよ!」


ミーアは大きく前に踏み込み、自分の愛剣である大剣を迫って来るローズに向けて一閃する。


「っと、びっくりした〜」


ローズはそれを自分に急ブレーキを掛けて紙一重で回避する。


「あれほどの速度で突っ込んで来ていたにも関わらず、ピタリと止まれるなんて一体どんな足してるんですか」


ミーアは急ブレーキを掛けた事により一瞬動きが止まったローズに肉薄し、大剣で斬りかかるが、それはローズの装備である爪に甲高い音を立て防がれるてしまう。


「それは爪、ですか……?珍しい武器を使いますね」


「え?やっぱりそう思う?アハハハッ!これ和人様がくれたんだ!かっこいいでしょ!」


物珍し気に尋ねるミーアにローズは嬉しそうに爪について語る。ただしその手は何度も何度も大剣とぶつかり合っている。それでいて二人共声の調子が変わっていないのは二人が強者である事の証明だと言える。


「かっこいいと言うのは分かりませんが、その武器がかなりの代物である事は分かります。素人目でも一目でそれが国宝クラスの物だと分かります」


ミーアの素直な賛辞にローズも気を良くし、ふふーんと言わんばかりの態度で胸を張る。残念ながらそこに色気は皆無で、逆に大人振る少女と言う感じにほっこりとすらする。


「隙あり!」


胸を張った一瞬、ローズに完全なる隙が出来た。ミーアはそれを見逃す事なく大剣を思い切り振るった。これは卑怯でも何でも無く完全にローズの油断だ。


「うわっ⁉︎」


幾らローズと言えども完全に虚を突いたミーアの一撃は回避する事も弾く事も出来ず、まともに喰らってしまう。


「おっとと……危ない危ない、もうちょっとで舞台から落とされちゃうところだったよ」


攻撃を喰らったローズは舞台のギリギリまで吹き飛ばされてしまい、思わず冷や汗をかいてしまった。


「ぐっ……貴女本当に生物ですか?」


だがダメージを受けたのはローズだけでは無く、ミーアもまた手を抑えて痛みに呻いていた。

それもそのはず。

何故ならローズを捉えた大剣はローズの強靭な肉体に阻まれ、倒す事はおろか、ローズの身体を切り裂く事も出来なかったのだ。


「幾ら貴女が魔力で自分の身をコーティングたとは言え、私の大剣だって魔力でコーティングしていた筈ですよ?なのに腕の一本すら奪う事が出来ないなんて……」


そう、ローズは攻撃を受ける寸前、咄嗟に自らの身体を魔力でコーティングしていたのだ。

この結果はひとえに魔力の質の違いによるものだ。幾ら強者とは言え、人間の魔力質では神獣たるローズの魔力質に勝つ事は出来ない。

それを踏まえた上で、僅かとは言えダメージ与えたミーアの技量には舌を巻く。


「もー怒った!君もう絶対許さない!」


ローズは痛みが走る腹部を抑えながら怒りを孕んだ瞳でキッ!とミーアを睨み付ける。


「うっ……」


そのあまりの気迫にミーアは、無意識のうちに後退りしてしまった。


***


「やばいな……ローズ切れてるぞ」


「うむ……これは止めた方が良いのじゃないか?」


「し、しかしルールでは他選手はよっぽどの事が無い限り舞台に立ち入る事は禁止です」


「つまり私達が立ち入る事が可能となるまで待つしか無いと言う事ですか……」


「危険……」


舞台の外の和人達は試合中のローズの様子に危機感を抱き、止めに入るべきかと頭を抱えていた。


「とにかく今は様子を見る。本当に危険だと判断したら俺がどうにか止めよう」


「そう、じゃな……今はそれが最善じゃ」


「すみません和人様。ローズが迷惑を……」


「もしそんな状況になりましたらきちんとローズにも謝罪させます」


「ローズをお願いします……」


暫しの話し合いの結果、いざという時はこの中で最も早く、最も強い和人が止めに入る事で落ち着いた。そんな和人達の事など露知らず、舞台の上ではローズがミーアを圧倒していた。


***


「まだ倒れないでよね!」


「うっ、くっ……何てデタラメな強さ……」


次々と繰り出されるローズの攻撃をなんとか捌きながらどうにか隙を見つけられ無いかとローズを観察するミーア。だがローズの攻撃の一撃一撃はとても速く、とても鋭い。そんな攻撃を捌きながら相手を観察するなんて事が出来る筈も無く、ミーアの体には徐々に傷が増えて行く。そして……


「あっ!」


あまりの攻撃に遂にミーアは大剣を弾き飛ばされてしまった。


「これで終わりだよ!」


それにより出来てしまった隙にローズの拳が轟音を立てて炸裂した。


「カハッ!」


メキメキメキと骨が折れる音を立て、ミーアの体は舞台外、和人達の方向へ吹き飛ばされて行く。


「おっと」


吹き飛ばされたミーアは和人に受け止められ、そのまま意識を失った。


「爪でとどめを刺さなかっただけありがたいと思ってよね!」


『ミーア・トルジア選手、リングアウト!ローズ選手の勝利です!』


***


第五試合はローズの圧倒的勝利で終わった。

懸念していたローズのオーバーキルは張られている結界でなんとかなったが、問題が一つ残っている。


「ローズの奴、最後手加減無しで殴りやがったな……結界が突き破られてる」


「結界のおかげでその者が本当に受けたダメージは最後の一撃だけで済んだようじゃが……」


「すみません!すみません!ローズにも謝らせます!」


「はぁ……ですから不安だったんですよローズの試合……」


「………ローズ………」


そう、ローズの最後の一撃は結界の一部を突き破り、その攻撃でのダメージをミーアは本当に受けてしまっていたのだ。


「取り敢えず回復魔法掛けとくか」


そう言って手を翳すと、手に青白い光が現れ、その手を翳した部分の傷がみるみるうちに消えていった。


「一先ずこれで命に問題無いだろ。後はここの救護担当の奴等に任せる」


回復魔法を掛け終えた和人は、静かに寝息を立てているミーアを抱えて救護担当の人物の所へ向かい、手渡した。


「ゆっくり寝かしてやってくれよ」


「は、はい!」


救護担当の人物は目の前にいる「瞬速の絶対者」たる和人に萎縮していたが、やるべき事はきちんとこなしている辺り、流石プロだと言えよう。


「さて、と……後はローズの説教だな……」


和人は不敵な笑みを浮かべて仲間の待つ場所まで戻って行った

なお、この後皆から説教を受けたローズが涙目になっていたが、それは全て自業自得なので同情の余地は無い。


余談だがローズ曰く「ミセバの無言無表情の責めた視線一番堪えた」だそうだ。

少し更新の速度上げようかなーっと考えています。まぁ実行出来るかどうかは別なんですが(笑)

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