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魔神が行く異世界大蹂躙  作者: 夜桜
六章 対決SSSランカー、アキレス皇国大魔闘祭編
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Aグループ 第三試合

『第二試合はレイ・ボルト選手の勝利でした!続いての試合はこの方達です!』


司会者の声に合わせて舞台に二人の人物が登場した。


『まだ二つ名こそ無いが、SSランク冒険者並みの実力を誇る冒険者、アントニー選手VS我が国が誇る騎士団の副騎士団長ラーシャ・マルトニア選手!』


二人は相手と観客にぺこりと一礼をした後、それぞれの武器を構え合う。


『お二人共準備は万端ですね!それではAグループ第三試合開始!』


第三試合目が始まった。選手は冒険者の男と騎士の女。

冒険者の方は知らないが女騎士の方は和人も知っていた。


「へぇ、あいつ副騎士団長なのか。結構な実力者だったんだな」


「む?ああ、あのラーシャとか言う女か。確かに驚きじゃな」


「そうですね。僕も正直言って意外でした」


「私達に一瞬で制圧されてましたから仕方無いと言えば仕方無いのかもしれませんね」


「えー?誰だっけ?」


「忘れ掛けてた……」


そう、何を隠そうラーシャ・マルトニアと言う女性は王城で和人達に剣を向けて一瞬で制圧された近衛騎士達の一人であった。


和人達は知らないが、あの後丸一日亀甲縛りの状態で放置された騎士達の大半がマゾに目覚め、「和人様達に虐められ隊」と言う謎の組織が結成されたらしい。因みに彼女はその組織の一人だ。


***


和人達がそんな話をしている中、試合は進んでいた。


「はぁ!」


アントニーの槍から鋭い一撃が放たれる。


「ふっ!」


ラーシャはそれを自前の長剣で弾き、その勢いを使って大きく後ろに跳んだ。


「中々やるねぇ、あんた何で騎士なんてやってんの?」


アントニーは弾かれた槍を構え直しながらそう問うた。


「試合の時にそんな事言うなんて随分余裕だな」


ラーシャはその問いに吐き捨てるようにしてそう返した。


「別に余裕じゃないさ。でも今まで見て来た騎士とあんたは何か違うんだよね。だから気になっただけさ」


アントニーはニヤリと笑みを浮かべてそう言う。


「そうか、それなら答えてやろう。私は生まれ変わったのだ!あの方々と出会って初めて私は自分を見つめ直す事が出来たのだ!」


「お、おう?」


堰を切ったように話始めるラーシャに質問した方であるアントニーも流石に引いていた。


「私は今まで貴族として生まれた事に誇りを持ち、高潔な人間を目指して生きて来た!だからと言って平民を見下すつもりは無いが、それでも弁えるべき場は弁えさせて来た!それが本来のあるべき姿だと信じて疑わ無かった!」


ラーシャはアントニーに向かって突進しながらそう語る。


「うおっ⁉︎」


アントニーはあっさり自分の武器の最適距離を突破された事に焦り、慌てて槍を振るってラーシャの剣を弾いて距離を取る。


「だがあの方々はそんな私の固定概念をあっさりと壊してみせた!」


ラーシャは距離を取るアントニーに追撃を入れるべく大きく踏み込み、そのまま剣を横に振るった。


「ぐっ!」


距離を取る為にバックステップを取っていたアントニーはまだ体制が完全に整っておらず、その剣の一撃で浅くではあるが傷を負い、痛みに思わず呻き声を上げた。

ラーシャはその隙を逃さず、大きく踏み込んだ足に体重を掛け、もう片方の足でアントニーの事を蹴り跳ばした。


「私はその時気付いたのだ!痛みとは素晴らしい!羞恥心は快楽へと変わる!この強さはそこから生まれた愛の力!」


蹴り跳ばされたアントニーはまだ立ち上がれていない。ラーシャは全力でアントニーの元へと駆け、アントニーが立ち上がって体制を整え終える前に止めを放った。


「我が名はラーシャ・マルトニア!偉大なる和人様方を崇める【和人様達に虐められ隊】の隊長である!」


「なんじゃそりゃァァァァァ‼︎⁉︎」


ラーシャの剣がアントニーの胸へと突き刺さり、アントニーは光の粒子となって消えて行く。その際の叫び声はこの場の全ての者達の気持ちを代弁していた事であろう。


「和人様方、ラーシャの活躍を見ててくれましたか!」


ラーシャは和人達の方へ向いて声を上げた。しかしそんな彼女の言葉に答える者はいなかった。皆どう反応すればいいのか困っているのだ。


『し、勝者、ラーシャ・マルトニア選手!』


そんな中響いた司会者の戸惑った声が妙に新鮮だった。


***


「……」


「……」


「……」


「?」


「……」


「……俺達の所為か?」


「……まぁ、恐らく原因はアレじゃろうな」


「……僕あの人怖いです」


「……私もどう反応すれば良いのか……」


「皆どーしたの?」


「ローズは知らなくていい……」


和人達は反応に困ったが、取り敢えずラーシャに向かって手を振っといた。


「⁉︎和人様が私に手を振ってくれている


自分の預かり知らぬ所で変な組織が出来ていた事に内心溜息を吐く和人。

そんな和人を慰めるヴェル、カレン、スミレ、ミセバ。

何の事か分かっていないローズ。

三者三様の様子を見せる和人達に観客達の同情の念が篭った表情が送られる。

だが和人達は気付いていない。自分達が手を振った事で見事に飴と鞭が成り立ってしまっていることに……。




この後更に「和人様達に虐められ隊」が勢力を持ち、和人達が頭を抱える毎日が来るが、それはまた別のお話。

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