謁見
「知ってると思うが、俺はEXランク冒険者カズト マガミだ。破滅の森の調査の依頼の報酬を受け取りに来た」
アキレス皇国の皇王相手に一発目から不遜な態度を取る和人。
これは別に意識してやってるわけでは決して無いのだが、地球にいた時から目上の人と関わると言った事を行って来なかった和人は、敬語等の使い方と言うのが分からないのだ。
和人の態度に左右に並ぶ騎士達が殺気立つが、アギエルがそれを制した。ガレスは横であちゃーと言った感じで手を額に当てている。
「ふむ、噂通り不遜な奴だな」
口ではそう言っているものの、その口元には笑みを浮かんでいる。
「まあいい。冒険者は自由な存在。それは誰にも侵せない世界のルールだ」
「ほう……分かっているじゃないか……」
アギエルの言葉に同じく口元に笑みを浮かべてそう言う和人。
この時和人は目の前にいるアギエル・フォン・アキレスと言う男の性格を悟った。
かつて和人達を利用しようとした愚か者がいた。
その名をゼノシア帝国の皇帝、フェリオ・ゼノシアと言った。
彼はその傲慢さ故にその身を滅ぼした。だが支配者としては強い者を仲間に引き入れると言う考えは正しい。ただそれを私利私欲の為に使ったのがフェリオ・ゼノシアの運命を決めるターニングポイントとなったのだ。
彼は開けてはならないパンドラの箱を開ける事を選択してしまった。それがゼノシア帝国滅亡の切っ掛けだろう。
しかし目の前の男、アギエル・フォン・アキレスは違う。彼は冒険者とは何かをきちんと理解している。
「カズト マガミ。この度は我が国の領地であるブレイアルを危機から救ってくれてありがとう。心より感謝する」
そう言って和人に向けて頭を下げるアギエル。それを見た重鎮達が騒ぎ立てるが、アギエルはその全てを無視して和人を見据える。
「お前……変わった奴だな」
「それは褒め言葉として受け取っていいのか?」
思わず出た言葉にアギエルはにやりと笑いそう告げる。和人の無礼な言葉によって重鎮達が更にが騒ぐが、アギエルも和人も完全に無視をする。
「受け取り方は好きにして良い。それより早く報酬を頂きたいな。ここは騒がしくてかなわない」
和人はチラリと重鎮達に視線をやり、そう告げる。それはアギエルの方も同じだったのか、小さく頷き報酬の話をしようとした直後……
「貴様のような無礼者にくれてやる物等無い!そのような不遜な態度、皇王様が許してもこの私が許しはしない!衛兵、あの無礼者共を捕らえよ!」
今まで騒いでいた重鎮の内の一人がそう怒鳴りながら前に出てきた。
「ゲルス!何を勝手なことをしている!今すぐ止めい!」
「皇王様!貴方は自分のお立場と言う物を考えて下さい!一国の主がいくら強者と言ってもたかが一冒険者風情に頭を下げる事など言語道断です!」
ゲルスと呼ばれた男は、アギエルの制止に和人を睨みながらそう返す。
ちらりと横を見るとガレスが頭が痛いとばかりに眉間のところを抑えている。その様子を見るに、ゲルスと言う男は相当頭の固い男のようだ。
「何をしている!早く捕らえよ!」
ゲルスの言葉に、衛兵達は一斉に和人達に襲い掛かる。どうやら衛兵達も和人の言葉使いに憤慨していたようだ。
「はぁ……アギエル、すまないが一旦こいつらを戦闘不能にさせて貰うぞ」
そう言って和人は目線をヴェル達に向ける。それを受けたヴェル達は、それを確認するなり弾かれたかのように動き出す。
「和人様に剣を向けたんだ、それなりの代償は覚悟して貰うよ?」
「ご安心を、和人様は戦闘不能にしろとおっしゃりましたので殺しはしません」
「あはははっ!弱い弱い!その程度の実力で和人様に剣を向けるなんて、馬鹿だね〜」
「惰弱脆弱貧弱……」
カレン達は襲い掛かって来た衛兵を悉く戦闘不能にしていく。
ある者は手ごと武器を砕かれて。
またある者は鎧ごと身体中の骨を破壊されて。
またある者は体を丸事床に沈めれて。
そして最終的には全員亀甲縛りで天井から吊り下げられていた。
それは男も女も骨を砕かれている者も関係無く皆揃って自らの無様な姿に羞恥で顔を染めていた。
和人はそんな衛兵達を自作したマジックアイテムであるカメラに収め、その写真をガレスに渡していた。しかしガレスは見たことの無いマジックアイテムに興味を持つよりも、和人達は行った所業にドン引きしていた。
「やり過ぎでは無いか……?」
それはアギエルも同様であり、天井から吊り下げられる衛兵達を見るその目はかなり引いていた。
「っておい、ゲルスの奴は何処だ?」
天井から吊り下げられている者達の中にゲルスの姿が無い事を不思議に思い、和人にそう尋ねる。それに和人はあそこだと首を動かして示す。
それは王城の外であり、アギエルとガレスは部屋に存在する窓から外を確認し、固まる。
「おーおー、ヴェルの奴、随分とえげつねぇなー」
和人の呑気な声がとても場違いに感じる程その場は静まり返っていた。
「こんな感じでどうかのう?マスター」
そう言うヴェルの横には魔法で作られたと思われる巨大な車輪があった。そしてその車輪には口を猿轡みたいな物で塞がれたゲルスが括り付けられており、何かを必死で訴えている。
「何をするかは分からんが、殺すなよ?」
「了解じゃ」
そう言った直後ヴェルはゲルスが括り付けられている車輪に鋭い蹴りを入れた。
「〜〜〜‼︎」
ゲルスは言葉にならない悲鳴を上げながら街の方へゴロゴロと転がって行った。
「あれには特殊な魔法を掛けて実体を無くしている。だから建物や関係無い人々にぶつかって怪我人が出ると言うことは無いから安心して良いぞ」
外から一度の跳躍だけでここまで戻って来たヴェルがそう伝えると、アギエルはホッと息を吐き和人達に向かい再び頭を下げる。ゲルスはこのまま転がって行けばその無様な姿を街の人々に見られて丁度良い晒し者となるだろう。
「俺の部下がすまなかった。詫びとして報酬には色を付けさせて貰う。構わないか?」
「ああ、それでいい。と言ってもそもそもは俺のこの口調が原因なんだから、本当はこちらが謝罪したい気分なんだがな……」
申し訳なさそうに語る和人に、アギエルは苦笑しつつ話す。和人も自分の言葉使いに問題がある事を理解している。それ故の言葉だったが、アギエルはそれに微笑を浮かべながら返答する。
「何言ってんだ。それを言うならお前は俺の国の大事な街を救ってくれたんだ。それなのに口調一つで騒ぎ立てる内の者が悪いんだ。気にする事は無い」
そう言って隅の方で固まって重鎮達をチラリと見やる。
重鎮達はアギエルの視線を受けてビクリとなるが、それ以上は何も反応する事無く隅の方で固まっていた。
「はぁ……まったくあいつらは……すまないがガレスに着いて行ってくれ、宝物庫へ案内する……頼んだぞガレス」
「お任せを……こっちだ和人」
アギエルに呼ばれたガレスは、和人達を宝物庫へ案内するために歩き出した。
和人は一瞬あの天井から吊り下げられている奴等はどうするのだろうか?と考えたが、直ぐに自業自得かと判断して頭から追い出す。
この後吊り下げられた者達はアギエルからの厳しいお叱りを受けて、罰として一日中そのままで放置されていたそうだが、それは和人達の預かり知らぬ事であった。その際、
「放置プレイってこんな気持ちなんだ……」
「これが亀甲縛りか……ありだな!」
「ああ、見られてる!私の全てが見られてる!」
「青髪の子にもっと虐められたい……」
「黒髪巨乳様に叩かれたい……」
「ツインテールの子に遊ばれたい……」
「無表情の子に冷たい目で見つめられたい……」
と言う風にマゾに目覚めた者達が沢山いたそうな。
この章ではMに目覚める人が多いですね^_^
勿論狙ってます 笑
次話でお城での話は終わりです。そのあとは章名の通りSSSランク冒険者達が集う大魔闘祭の話になります。お楽しみに!




