別れと決意
よ、ようやく文化祭が終わった……文化祭は楽しいですが、疲れますね……でも気を取り直して更新です!自分もやっと更新出来た事に喜んでいます!ではどうぞ!
「「「和人先生!ヴェルフェン先生!」」」
クラスに戻って来た和人とヴェルを待って居たのはキャミアと生徒達の満面の笑みだった。
「お前等きちんと特別授業を見てたか?」
「今戻った。いい暇潰しになったのぉ」
国の行く末を掛けただろう戦いから帰って来たとしては何とも気の抜けた答えだろうと思わないでも無いが、それはあくまで世間一般での意見なので、既に人間の範疇を超え、更には神をも超えている和人やヴェルからしたらあの程度軽い運動でしか無い。和人やヴェルを追い込みたいなら、先程ヴェルが言ったように神クラスの存在が数百体は必要だろう。
「本当に心配したんですから二人共!」
「おいおいキャミア先生、俺は出る前に安心しろって言ったろ?俺は一度言った事をそう簡単に破る男じゃないぜ?」
怒ったような、安心したような複雑な表情でそう言うキャミアに、和人は苦笑しながら答える。
「カズト君!」
その時、教室の扉を勢いよく開けて、この学園の学園長のサミネが飛び込んで来た。
「カズト君、ヴェルちゃん、見せて貰いましたよあの戦い……流石でした」
学園長室から走って来たのだろうか、乱れている息を整えながら喋る仕草は、とても色っぽい。サミネは一般から見ればかなりの容姿なので尚更だ。
「何だ、サミネも見てたのか。あんな雑魚なら幾らでも相手出来るし、それに流石とか言われてもなー……」
と、苦笑する和人。
サミネのあの仕草はとても色っぽいが、和人の隣には世界でトップクラスの美貌と言っても大袈裟で無いだろうと思える程美しいヴェルがいる。なのでそんな色っぽい光景でも、普段からヴェルと肌を重ねている和人には気にする程の事でも無い。
「マスター、この後はどうするのだ?」
苦笑している和人に、ヴェルがそう訪ねる。
「あー….…そうだな、そろそろこの国から出るか……」
さりげなく和人から出た言葉に、この場にいる者は、和人とヴェルを除いて驚愕する。その中でも何故かキャミアはこの世の終わりみたいな表情をしている。
「な、なんで?」
その中で最も回復が早かったサミネが訪ねる。
「今回の一件で俺達は注目されてしまった。俺は普通な事をしたのに、だ。だから事が騒がしくなる前にこの国から出た方が良いと思ったんだ」
「私はどこまでもマスターに着いて行くぞ」
和人の言葉にヴェルがそう返す。その表情はとても美しく、ただでさせえ美しいヴェルを更に磨いている。
「そう、ですか……それなら仕方無いわね……」
サミネとしてはこのまま和人にいて欲しいのが本音だが、以前聞いた神々の事が頭を過ぎり、和人を引き留めてはいけないと結論を出したした。
しかし、それは真実を知っているサミネの中での結論であり、それを知らない生徒達は納得出来る訳が無い。
「カズト先生行っちまうのか?俺達まだまだ弱いんだろ?」
そう言うのは和人に性根から叩き直されたスミル・クレイモア。
「そうですよ、僕達はまだまだ弱いんですよ?なら先生に強くして貰わなくちゃ直ぐ死んじゃいますよ!」
既に涙目のグレイルもスミルに便乗する。
「ヴェルフェン先生もですよ!私達にもっと色々と教えて下さい!」
ロビン・ケルディアが更に便乗し、和人とヴェルに詰め寄る。
「いや、そんな事言われても……」
「落ち着くのだお主ら」
和人とヴェルは狼狽えるしか無かった。一週間と言う短い期間であったが、生徒達はよく懐いてくれた。そんな彼等を突き離す事が出来ようか。
しかしこの国には長居は出来無い。めんどくさいと言うのもあるが、それ以上に世界神達を見付けると言う事もある。
どう説明しようか考えていると、意外な所から援護が来た。
「貴方達、止めなさい!」
声の主は、この学園の生徒会長であるルビア・ブレイメンだった。
「か、会長……」
流石に彼女の言葉は無視出来ないのか、スミル達は大人しくなった。
「まさかお前が止めてくれるとはな……お前は俺等の事を嫌ってたんじゃなかったか?」
和人が意外ですとでも言うような表情をしながらそう言うと、ルビアは照れているのか、頬を染めながら和人達に向き直る。
「わ、私は貴様等……いや、先生方に謝らなければなりません」
いきなり真面目そうな喋り方をするルビアに、和人とヴェルだけで無く、クラスにいる全員が驚く。
「私は先生方を第一印象だけで決め付け、嫌ってました。ですが、先生方は私達が住む国を守ってくれました。それにあんなあからさまに嫌っていた私にも皆と同じように接してもくれました。私ならそんな相手に自分からわざわざ近付きたいとは思いません。なのに先生方は私を皆と同じように扱った。それは本当に嬉しかったです。ありがとうございました。そしてごめんなさい」
誠心誠意語るルビアの言葉を皆静かに聞いた。やがて話が終わると、和人がゆっくりと顔をルビアに向けた。
「ルビア、お前はそんな風に考えていたんだな。だけどありがとうはこちらのセリフだ。俺達はお前の気持ちが聞けただけでも嬉しいよ。本当にありがとう」
「ルビア、主がそんな風に考えていたなんて思わなんだ。だが私も考えはマスターと一緒だ。私からも礼を言わせて貰おう。ありがとう」
和人とヴェルは優しい顔でそう言う。その顔にルビアも安心したのか、目からポロリと涙が零れた。案外一番悲しんでいるのはルビアなのかもしれない。
「泣くな。永遠の別れでもあるまいし、またいつか会おうな」
和人はそう言ってルビアの頭を撫でる。ルビアは体を一瞬ピクリと反応させるが、直ぐに和人のされるがままになった。
「お前達もだ。俺達は旅人。きっとまた何処かで会えるさ」
ルビアを撫でる手を止め、生徒達全員にそう言う和人を見て、先生生徒関係無しに涙を流す。
「カズト先生、きっと、きっといつかまた会いましょうね……グスッ」
キャミアがそう言いながら和人の手を握る。
「ああ、きっと、な……」
それを和人も握り返し、優しく語り掛ける。傍らのヴェルは何故か不機嫌そうだが。
「俺達はそろそろ行くよ。出るのは早い方がいいからな。行くぞヴェル」
「私はマスターに何処までも着いて行くぞ」
和人とヴェルはそう言いながら窓の方へと歩いて行く。
「あ、そうだ。以前の自己紹介の時に答えられ無かった質問があったな」
窓に手を掛けながらふと思い出したように振り向く和人。そんな和人に不思議そうな顔をする生徒達。そんな時一人の生徒が思い出したように口を開く。
「ああ、もしかしてあの先生方の冒険者ランクが幾つかって奴ですか?」
和人はコクリと頷くと、懐からギルドカードを取り出す。隣ではヴェルも同様にギルドカードを取り出し、生徒達に見せる。
「これが俺達の冒険者ランクだ」
代表としてルビア、スミル、グレイル、ロビンの四人が俺達のギルドカードを確認し、次の瞬間に凍りついた。
「い、EXランク……⁉︎」
「ヴェル先生はSSSランクだ……」
「えっ?確かEXランクって世界に一人しかいないんじゃなかった?」
「ああ、確か「瞬速の絶対者」と言う二つ名だったはずだ」
「ま、まさかカズト先生が「瞬速の絶対者」だったとは……」
「おい、カズト先生も凄いけど、ヴェル先生も凄いぞ」
「二つ名を聞かないって言は、世界で六人目のSSSランカーって事か?」
スミルとロビンが発した言葉に、生徒達が口々に騒ぎ立てる。
「そう言う事だ。何か困った事があれば依頼を出せば俺達が受けてやるよ」
「マスターに受けて貰えるなんて光栄な事だぞ?主等は運が良いな」
和人とヴェルはそう言って今度こそ窓から飛び降りた。
ここは学園の4階で高さは20m程あるのだが、生徒達はそれどころでは無く、自分等の先生だった者達の正体にただただ呆然とするだけだった。
「俺、絶対カズト先生やヴェル先生のような冒険者になるんだ」
「私もカズト先生やヴェル先生みたいに強さと優しさを兼ね備えた人間になりたい……」
誰かが言った言葉に、皆が一様に頷き、遥か高見にいる和人やヴェルに思い、目標を立てる。
「ならそのためにはまず勉強ね!皆絶対カズト先生達のような立派な人間になりましょう!」
「「「「「はい‼︎」」」」」
「フフフッまるで嵐のような人達だったわねカズト君にヴェルちゃん……突然現れて皆の心に思いを残して行くんですもの……」
必死に勉強に取り組み始めた2年S組の教室の教室の片隅で、サミネはボソリと呟いた。
後にこの時期の2年S組の生徒であった全ての者が世界に名を轟かす人物になり、”ミロガス大魔道学園伝説の世代”と呼ばれるのだが、それはまた別のお話。
そろそろ王都学園編も終わりますね。今回は今までで一番長めの章でしたね。この後後日談を書いて、王都学園編を終わりたいと思っているんですが、一つ悩んでいる事がありまして、後日談の後に番外編を入れるか入れ無いかなんですが、読者の皆様的にはどうですか?
因みに番外編を書くのなら内容はアリアの今的な内容です。




