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魔神が行く異世界大蹂躙  作者: 夜桜
四章 王都学園編
35/82

騒動の終わり

最後の方が眠気で変な感じに書いてしまったかもしれません。もし違和感等を感じたら遠慮無くご指摘下さい。

ミロガス王国の上空に二つの影がある。一つは身長約170cm程の黒髪黒眼少年。もう一つは200cm以上ある巨大な蝿……否、蝿のような生物。


「無理無理無理無理気持ち悪過ぎるっての!何お前⁉︎何お前⁉︎」


「ええい!煩い!私だって自分の見た目くらい知っておるわ!」


黒髪の少年、間上 和人がそう言うと蝿のような生物、ベルゼブブ(本気モード)がそう返す。一見ただの喧嘩に見えるが、彼等が放っている魔力は、常人の意識を一瞬にして刈り取るレベルだ。ミロガス王国の人々が倒れ無いのは、距離が離れている事と、魔力慣れしている事が理由だろう。


「もう無理!気持ち悪いから速攻で終わらせる!」


「ふん!やれるものならやってみろ!本気を出した私は強いぞ!逆に貴様を八つ裂きにしてくれる!」


ベルゼブブから先程とは比べ物にならない程の濃密な魔力が溢れる。


「私の本気の魔法、受けれる物なら受けてみろ!」


ベルゼブブが放とうとしている魔法は明らかに神級の威力を誇っていた。恐らく和人ごとミロガス王国を消し飛ばそうとしているのだろう。


「【闇の裁き(ダークジャッジメント)】」


ゴウッ!と言う音と共に、全てを呑み込まんばかりの闇がベルゼブブから溢れて来た。

溢れた闇は和人と、その背後にあるミロガス王国目掛けて襲い掛かる。このまま和人が闇に呑み込まれて死んでしまうと誰もが思ったその瞬間、和人の体から黄金の炎が迸り出した。


「光属性と炎属性の混合魔法【光炎の衣(フレイムオーラ)】。この魔法は闇属性を侵食する!」


和人のデタラメな魔力で発動された魔法は、和人に襲い掛かって来た闇を逆に呑み込み、ミロガス王国の方向に向かった物も悉く光の炎に呑まれて行った。


「な、何、だと……」


「油断するなよな?」


余りの出来事に唖然とするベルゼブブ。しかし和人がそんな隙を見逃すはずも無く、闇を全て呑み込んだ光の炎を今度はベルゼブブに向かって放った。

唖然としていたベルゼブブにこれを躱す事など出来る訳も無く、ベルゼブブの体は光の炎に覆われた。


「なっ⁉︎……ムグ、ガッ……グオオオオオッ!」


光の炎に全身を覆われたベルゼブブは、その体をどんどん失って行き、遂には全身が失くなってしまった。後に残ったのはベルゼブブを呑み込んだ光の炎だけであった。


「七大罪の邪神……(主に見た目が)強敵だったな……」


邪神との戦闘を行ったミロガス王国上空に和人の呟きが一つ響き渡った。


「さて、向こうも終わったようだし、ヴェルと合流するとしますか……」


和人はヴェルがいる城壁付近に向け、宙を蹴った。


***


「そろそろ終わりか?」


辺りに散らばるは無数の魔物の死体。その中心には体を魔物の血で染めた状態でもなお、美しい少女が居た。

その少女に向かい一人の男が近付く。


「君のおかげで犠牲者も少なく魔物達を殲滅出来たよ。ありがとう」


そう言うのは50代程の逞しい肉体を持つ男だった。


「私の名前はジョン。この国で将軍をやっている。君の名前を聞いても?」


「……私の名前はヴェルフェンだ。それと今回の件はマスターに言われたからやっただけで、礼を言われる様な事では無い」


ヴェルはジョンの質問に一瞬だけ考えるも、名前を伝えるくらいは構わないかと判断し、名を名乗る事にした。その際礼は不要と言う事も伝えておく。お礼がどうのこうので付き纏われたらうっとおしいからだ。


「マスター?君程の手練れが誰かに従っているのか?」


しかしジョンが反応したのはマスターと言う言葉だった。

しかしそれも仕方無いだろう。何故ならヴェルはAランクやSランクの魔物をいとも容易く殺しているのだ。普通の人からするとSSSランク冒険者並みの実力を持っていると判断される所業だ。

世間に知れ渡っているSSSランク冒険者は誰一人として誰かに従っている者はいない。そんな事しなくても生きて行ける力を自身が持っているからだ。

そんな常識の中、目の前でSSSランク並みの実力を見せた者が誰かに従っていると言う事に驚くのは当たり前だ。


「確かに私は人に従っている。しかしそれが何か?」


しかしずっと森で暮らして来たヴェルがそんな常識を知ってる筈も無く、誰かに従っている事を何の躊躇い無く答えてしまった。それにより周囲がざわめき立つ。その時、


「よう、そっちも終わったみたいだなヴェル!」


幸か不幸か和人がその場に現れてしまった。勿論今までどんな会話があったかなんて和人に知る術は無い。そしてヴェルは常識が身に付いて無い。その結果何が起こるかは大体予想が着くだろう。


「おお!私を迎えに来てくれたのか!ありがとうマスター!」


「あん?何言っているんだよヴェル。お前を迎えに来るなんて当たり前だろ?」


ヴェルはどうどうと自分の主をばらしてしまい、何も知らない和人はヴェルの言葉に普通に答える。そう、周りの人には激震が走るのだ。

そもそもヴェル程の実力者を雇ったりする場合には白金貨が何十枚も必要となる場合がある。そんな大金、王族や大貴族でないと払えないだろう。尋常な実力を持つヴェルの主が自分等よりも圧倒的に若く、ヴェルと同じくらいの歳にしか見えない子供だったらこうなるのも無理は無い。

和人の見た目はそれなりに整っている(本人に自覚は無い)。しかし貴族や王族に比べると高貴な雰囲気が無いのだ。


「待て、お前は何者だ?ヴェル殿の主と言っていたが、私にはそうは見えない。悪いがお前のような奴がヴェル殿の主とは信じられんな」


和人の雰囲気に高貴な雰囲気が無い事を確認したジョンが剣を抜いて和人を睨む。


ジョンはヴェルをミロガス王国の兵士としてスカウトしようと考えていたのだ。出来ればこの後ヴェルの主に会って直談判しよう考えていた矢先に和人が現れたのだ。


ジョンに即発されるように周りの兵士や冒険者も各々の武器を構え、和人を睨む。彼等も和人がヴェルの主だと言う事を信じられないのだ。


「貴様等……魔物の殲滅を手伝ってやったと言うのに、恩を仇で返すか……」


ヴェルが怒気を含んだ声で周りの者を睨み付ける。


「ヴェル殿、悪い事はいいません、そいつから離れて下さい。そいつといるより国に仕えた方が給金もいい筈です。貴女ならかなりの地位になれる筈です」


「あんたなら冒険者でもやれるよ!アタシが保証するよ!」


「そうよ!貴女がそんな男に引っかかる何て勿体無いわ!」


「ヴェルさんの実力は俺達が保証する!そんな野郎ぶっ飛ばして冒険者や国仕えになるべきだ!」


しかし、周りの兵士や冒険者も口々に喚き立て始め、しまいには和人に罵詈雑言を浴びせ始めた。


「どうだ?ヴェル殿に取っても悪く無い話だと思うんだが……」


最後にジョンがそう言うが、ヴェルはもう完全に激怒していた。


「貴様等……もう許さん!一人残らず殺してやるっ!」


「俺、凄い言われようだな……」


激怒するヴェルを尻目に、和人はノンビリしていた。

その瞬間ヴェルが動き出し、ジョンの心臓目掛けて貫手を放つ。


「っ⁉︎何で止めるんだマスター!」


しかしヴェルの貫手がジョンの心臓を貫く瞬間、和人がヴェルの手を受け止めた。


「ここでこいつらを殺しても意味無いぜ?そもそも俺は別に怒っていない。この結果には俺の見た目が関係しているんだろうし、どうしようも無い事で怒る程俺の器は小さく無いつもりだ。それにこの事も少し話せば分かるだろうしな」


ジョンは目の前で起こった事が理解出来ていなかった。ヴェルが消えたと思ったら目の前で和人に手を受け止められた状態で現れたのだ。しかも受け止められた手の行き先は自分の心臓だったのだ。

ここでジョンは漸く目の前の少年が持つ圧倒的な実力を感じ取った。


(待て、冷静になってみればこの少年は何処から現れた……?”空から現れた”のでは無かったか……?確か上空では私等では決して抗えないような巨大な魔力が争っていなかったか?)


少し落ち着いた頭で考えて見ると、色んなピースが埋まって行った。そこから導き出された答えは、この国を襲って来た化け物を倒したのは目の前の少年ではないかと言うことだ。


「ウラァ‼︎」


そうこうしていると、一人の冒険者が痺れを切らして和人に斬り掛かった。


「まっ……」


待て!と言おうとしたが、時既に遅く、冒険者の男の剣が和人を捉えた。が、和人を捉えた筈の剣は宙を斬り、男は不思議そうな顔をした。


「キャッ⁉︎」


「ぬわっ⁉︎」


「なっ⁉︎」


「うわあ⁉︎」


次の瞬間には周囲から悲鳴が上がった。皆の武器が全て破壊されたからだ。


「さっきから気になってたけど、人と話す時くらい武器を仕舞えよ。こうなっちまうぞ?」


先程まで和人が居た場所とは反対の方向から和人の声がして、皆一斉にそちらを向くと、数々の武器の破片を捨てる和人の姿があった。


「ったく、話くらいは聞けっての」


心底呆れたような表情をして、虚空から一枚のカードを取り出す。


「てか、ヴェルもこれを見せりゃ問題無いだろ」


「そう言えばそうだったな。すまない、頭に血が上っていてその発想が出なかったようだ」


そう言ってヴェルも虚空から一枚のカードを取り出す。何故ヴェルがこれを使えるかと言うと、ヴェルは空間魔法にも才があったっぽいので、教えてみたら直ぐに覚えた。


「ほらよ、これで俺の事が分かるぞ」


「私のもだ」


そう言いながらボーッとしていたジョンに向かってギルドカードを投げる。


「……⁉︎おっとっと」


流石将軍と言うべきか、身体能力も高いようで、ボーッとしてたのにも関わらず二枚共きちんとキャッチした。

受け取ったギルドカードを確認したジョンは驚愕に顔を見開く。最早お約束となった反応だ。


「い、EXランク……SSSランク……」


ジョンの呟きを聞き取っと冒険者は驚きながらこちらに顔を向け、俺とヴェルの顔を見た。


「EXランクって事は……おま……貴方が「瞬速の絶対者」?」


「ああ、俺はEXランク冒険者で、ヴェルはSSSランク冒険者だ」


「つまりマスターは私より強い。…….これで文句無いだろ?」


俺とヴェルは冒険者や兵士達にそう問い掛けた。


「「「「「す、すみませんでしたーーーーー‼︎」」」」」


そしたら冒険者や兵士達はジョンを含め全員が土下座をして謝罪して来た。

そろそろ王都学園編が終わります。一応最後の方には番外編を投稿するつもりなので、是非よろしくお願いします。


次回は騒動終了後のいざこざ話を予定しています。

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