過去の真実
今回は長ったらしい説明がありますが、今後のストーリーに大きく関係するので是非最後まで読んで下さい。
また、更新するのが遅くなってしまったことを謝罪しますm(._.)m
「じゃあさっそく説明して貰おうか?」
ミロガス大魔道学園の学園長室に連れて来られた俺とヴェル。目の前にある長机を挟み反対側にはサミネが座り、俺とヴェルを観察している。
「そうね……まどろっこしいのは嫌いだし、ストレートに言わせて貰うわ」
サミネは、俺達を観察する視線を、興味から真剣なものへと変え、自分の胸元に掛けてあった鍵を俺に差し出した。
「これは?」
これが何か分からなかった俺は、鍵から視線を外さずに、サミネへ問いかけた。
「これは光の神ファルシオン様から授かった物よ。貴方が来たら渡してくれと言われてたの。詳しくは知らないわ」
恐らくこれがヴェルの感じた神気なのだろう。ヴェルが反応しないということは今は神気を放っていないと言うことか。
「成る程……つまりこいつが光の神に通じてるって事か……でもそれならば更に分からないな……お前の話を聞くからに、こいつが俺の事を知ってたのは明確だ。ならば何故殺されると分かっていたのに俺を待つ?そのまま隠れていれば俺としても探すのに時間が掛かった筈だ」
「さあ?私も詳しくは聞いて無いし、ファルシオン様に言われたのは貴方にこれを渡せということだけよ」
俺は警戒しながらもファルシオンが宿っていると思われる鍵を手に取った。その瞬間、鍵から激しい光の奔流が迸り、部屋を光で染めた。
「マスター⁉︎」
ヴェルが俺に手を伸ばした光景を最後に、俺の意識は光の中に落ちた。
気付いた時、俺がいる場所は真っ白な空間だった。上下も分からない程の完全に真っ白な世界。
「ここは何処だ?」
「ここは僕が創り出した世界さ」
誰に言うでも無く呟いた俺の言葉に反応する声が一つ。
「⁉︎誰だ⁉︎」
「落ち着いてカズト君。僕はファルシオン。君の探している神々の一柱の、光の神さ」
自らを光の神だと名乗る金髪碧眼の青年。歳は俺より少し上で18〜19歳といった見た目だ。しかもイケメン。
「光の神だと?何故俺をここに呼んだ。俺はお前を殺すかもしれない存在なんだぞ?」
取り敢えずファルシオンが何を考えているのかを探るため、多少魔力の神力を解放して威嚇する。
「そんな警戒しないでくれ。今からそれを説明するから」
俺の魔力と神力を浴びて少し冷や汗を流しながらそう言うファルシオンに、魔力と神力を抑え、一先ず話を聞く姿勢を取った。勿論変な行動を取れば直ぐ様攻撃出来るようにはしているが。
「ふぅ……分かっていたけど凄まじい力だね。完全に僕等神を超えているよ……」
「御託はいい。さっさと話せ」
ファルシオンは、俺の雑な反応に苦笑しつつ説明を始めた。
「まず、僕と闇の神を含めた七柱の神々がこの世界を統べていたのは知ってるよね?」
俺は無言で頷く。
「かつて僕等七人はお互いを支え合ってこの世界を管理していた。土の神が大地を創り、水の神が海や川を創り、風の神が空気を創り、火の神が太陽を創り、雷の神が天候を創り、この僕光の神が光を創り、闇の神が暗闇を創り、こうして僕達は力を合わせてこの世界を創造したんた。そうして創り出した世界に今度は生物を創り出した。元の君のような人間に、会ったことがあるかは分からないけど獣人、エルフ、そして魔物や魔人。彼等はどんどん知恵を付けて行き、やがてその数を莫大に増やし、この世界、アナザリアに繁栄していった。そして、君が僕等を追い掛ける理由となったあの事件が起こった……」
「人間の魔族に対する迫害、そして魔族対人間の戦争、か……」
俺の言葉に悲しそうな顔で頷くファルシオン。
……どうもファルシオンはレティが言うような奴には思えない。レティの事を本気で気遣うそぶりがあるのだ。俺の主観からはこいつの態度が演技だとは思えない。
「その通り。僕等が創り出した生命の中でも、人間の繁殖速度は飛び抜けて早かった。僕等が気付いた時にはもう既に何千万人もの人間が存在していた。獣人やエルフの数がまだ数十万人程しか存在していなかったのに、だ。当然力も強くなる。数はそのまま力となるからね。
力を付けた人間達は他の種族を迫害するようになった。その中でも特に酷かったのが魔族だ。
この頃の魔族はまだ魔人へと進化を遂げた存在がとても少なかった。魔物数千匹の中に一人魔人となった存在がいたら良い方だって程にね。この時に魔人となっていたのは大体数千体程度だったかな。この一人一人が人間や獣人達の数倍から数十倍の実力を持っていたが、やはり人間の数の暴力には抗えなかった。
やがて時が経ち、人間達の魔族差別が激化し出した頃、とある魔物達が魔人へと進化した。それが今の人間達の観点で言う、災害級や天災級の魔物達だ。彼等の力は凄まじかったが、そのせいで進化が圧倒的に遅れた。何故なら、進化しなくても自分等を脅かす存在なんていなかったからね。
僕等がこの世界を創造してから大体数百万年。人間による魔族達の迫害から数万年。魔族達は漸く人間の数に抗える質の魔人が登場したのさ」
「その話から行くと、その災害級や天災級の魔物が進化した魔人達が人間達との戦争を始め、勝利した、となるが、重要なのはここからだ。何故お前達はこの戦争を理由にレティを貶めた?お前の話を聞くに、別にレティが貶められる要素など何処にも無いだろ。寧ろ人間達の自業自得でお前等神が関与する所では無いだろう?」
俺の問いに、表情を暗くするファルシオン。
これは何かあるな……
「君の言う通りだカズト君……この事に僕等は別に関与するつもりなど無かった。寧ろアナザリアの他に魔界まで管理しているレディアが能力が上がる事を喜んだ。この時のレディアは本当に大変そうだったからね。だけどそれを良く思わない神がいた……それは僕等七柱の神々とは違う神。主神の遣いの神の一人だった。
僕等神の上には主神と言われる神が存在してね、主神とは存在する全ての世界を管理する五柱の神の事なんだ。僕等の世界に来た神々はその主神達の一人、叡智の神ガルシア様の使いの者だったんだ。
彼等は一応僕等世界神の上司に当たる神でね、その力も僕等世界神より強いんだ。だけど戦争で勝った魔族達は皆一様にレディアのおかげで勝てたんだと彼女をとても敬った。僕等世界神は信仰心で強くなるから、強烈な信仰心を得たレディアはその主神の遣いの神々の強さを上回ってしまった。それを妬んだ主神の遣いの神がレディアを貶めたんだ。僕等がやったように見せかけてね……」
そう言うファルシオンの表情は本当に悔しそうだった。
俺はこっそり「コネクト」を使いファルシオンの心を覗いた。その際ファルシオンはピクリと反応をしたが、その魔法の能力に気付いたのか、すんなりと「コネクト」を受け入れた。その結果こいつは嘘を言って無いと言うことが分かった。
彼等はちゃんとレティの事を心配していた。レティは彼等に愛されていた。
「成る程な……主神の遣いの神か……」
(……っち、この世界の存在じゃないから「神の知識」でも探れ無いか……)
「お前の説明はよく分かった。それにお前は嘘吐いて無い事も俺の魔法で分かった。だが分からない事がまだある。何故お前等はその事を直ぐレティに伝えなかった?そして、何故俺から記憶を封じてまで隠れた?それをする意味が全く分からないんだがな」
俺の疑問にファルシオンは無言で頷き、俺の疑問に答えた。
「そうだね、君の言う通りだ……僕達はレディアが貶められた後、直ぐにレディアの元へ向かった。だけどレディアがいる空間には僕達世界神では突破出来ない特殊な結界が張られていたんだ。僕等は何度も破壊しようと試みた。でもその全てが結界に弾かれてしまい、傷一つ付けられ無かったよ……腐っても僕等より格上な主神の遣いだって事を思い知らされたよ……」
主神の遣いって奴は本当にクズだな。この様子だと、主神って奴もクズ揃いだろうな。いつか絶対殺してやる。
「お前等がレティに伝え無かった理由は分かった。でもそれなら尚更何故隠れる必要があった?自分で言うのもなんだが俺はお前等世界神より圧倒的に強い。態々隠れ無いで俺に接触してその事を説明すれば、少なくとも話くらいは聞いたぞ?」
「そうだね、こうして会ってみて分かったよ。君なら主神の使いどころか主神すらも殺す事が出来るだろうね。でも君が来たばっかりの頃の僕等にはそんな事分からなかったんだ。つまり僕等が隠れた理由は君の力を恐れたからなんだ。
僕等が君の存在を感知した時に感じたのは圧倒的な力のみだった。本能的恐怖を感じたよ。だから僕等は隠れたんだ。僕等が消滅しちゃったらレディアの事を救い出せる確率が大幅に減ってしまうからね。君にこうして接触したのはレディアについての真実を教えるためだけじゃなくて、君の人柄を知るためでもあったんだよ。ここなら少なくとも僕が殺される事は無いからね」
成る程納得した。つまりレティを抜いた六柱の神々は俺が来た事にビビって隠れだって事か。そして、この絶対安全な空間で俺と対話するために。
「お前の話は分かったこの事は近い内にレティに伝えよう。で?お前は俺にこの事を伝えてどうしたいんだ?レティの誤解を解いて貰うためだけじゃないだろ?」
「うん。まだ頼みはあるね。と言ってもそんな大変な事じゃないけどね」
苦笑しながら言うファルシオン。
「なら早く言え。頼みを聞くか聞かないかは俺が決める」
「分かったよ。僕等世界神からの頼みは三つ。
一つは僕等世界神全員を見付けてくれ。これは君が安全である事が分かったし、僕等世界神も微力ながら力を貸せるからね。
二つ、僕等の精神干渉を許可して欲しい。僕等は今、記憶共々この世界の誰かに宿っている。だけど何も出来無い訳じゃないんだ。今僕が宿っているサミネと言う女性から聞いたと思うけど、今の僕等でも自分の宿主の夢とかに干渉するくらいは出来るんだ。多分君は僕等世界神より圧倒的に格上の存在だから、そちらから許可され無いと干渉出来無いんだよ。もし干渉出来たなら近くに神の反応があったら教えてあげられるしね。
三つ、これは僕等って言うより僕個人、いや神だから個神かな?の頼みなんだけど、今僕の宿っているサミネと言う女性の頼みを聞いて欲しいんだ。
以上が僕からの頼みだよ。どうかな?聞いて貰えるかな?」
俺の表情を伺うファルシオンを尻目に、俺はこの頼みのメリットを考えていた。
(一つ目の頼みは聞いても別に問題は無いだろう……三つ目も多分大した内容じゃないだろう。だが、二つ目の頼みには不安が残る。精神に干渉する事を許可すると言う事は、つまり、下手したら俺の考えを読まれてしまう可能性もある訳だ。これは正直嫌だ。だけど、ヴェルだけに頼るには不安が残る。ヴェルの感知能力は、相手が神力を出して無いと気付けないという弱点がある……どうしたものか……)
「なあファルシオン。お前の頼みを聞き入れて、俺にメリットはあるのか?」
考えても分からないなら聞いてみればいい。そんな安直な考えで聞いたのだが、返って来た答えは俺にとってかなり嬉しい事だった。
「ああ、ごめん。その事を説明して無かったね。君に対するメリットは、見付け出した僕等世界神の力を武具として使えるって事だね。この世界には僕等が創り出した神器と呼ばれる物が存在するけど、君が得られる僕等の力って物は僕等世界神そのものさ。ほら、こんな感じに」
そう言ってファルシオンの身を光が覆い、それが霧散した後に残ったのは一振りの長剣だった。
柄の部分から剣先まで大体1m程の長さがあり、刃の部分は白銀に輝き、神々しさが溢れ出ている。
「これは…」
『これが僕の武器形態名付けるなら光神剣ファルシオンって所かな』
見惚れていると、剣からファルシオンの声が聞こえて来た。
「ふむ……確かにお前と同じ気配を感じるな……これなら報酬になるな。いいだろう、お前の頼みを聞こう」
『ありがとう。いや、もう僕は君の配下みたいな物だし、敬語にした方がいいかな?』
「好きにしろ」
俺は吐き捨てるように答えた。光柛剣ファルシオンに見惚れていた事が恥ずかしかったのだ。
『ではこれからよろしお願いします超越柛カズト様』
喋りながらその身を光柛剣ファルシオンから光の神ファルシオンに戻し、俺の前に恭しく跪いた。
「ああ。なら早速だがこの世界から帰してくれ。と言うかお前はどうすんだよ?俺が安全だと分かったならもう隠れる必要無いだろ?」
「僕はこのまま鍵のままカズト様に着いて行きます。その方が持ち運びも便利だと思いますので」
ファルシオンの考えに内心感謝して、仰々しく頷いた。ヴェルと二人きりの時間が無くなるのは嫌なのだ。
「ではあちらに送り帰させて頂きます。どうかサミネと言う女性の頼みを聞いてあげて下さい」
最後のファルシオンの言葉に頷き、次の瞬間、ここに来た時と同様の感覚に包まれ、俺の意識は光へと落ちた。
*****
「ふぅ……帰りましたか……」
和人がいた空間に一人残ったファルシオンは、自らが仕える事を決めた主について考えていた。
「あれがカズト様の力か……」
ファルシオンは最初会った時に感じたあの圧倒的な魔力と神力を思い出し、再び冷や汗を書いた。
「あれでも多分カズト様は本当の実力の半分も出していないんだろうな…」
カズトの絶対的な実力を垣間見たあの瞬間、ファルシオンは本能的に死を直感した。自分達世界神が一斉に襲いかかっても恐らくまともな傷一つ付けられ無いで全滅させられるだろう。いや、もしかしたらかすり傷一つ付けられ無いかもしれない。
「でもあの方なら必ずレディアを貶めた主神の遣いを殺してくれるだろう……」
ファルシオンの呟きは、誰もいない空間に静かに響き渡った。
神々の構図
超越柛(例外)
主神
|
主神の使い
|
世界神
|
属神(世界神が創り出した神々)
例:武神、鍛治神、酒神、狩猟神etc.
(属神の中にも階級はあるが、それを書くと凄い事になるのでカット。いつか書く機会があれば書きます。)




