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第八十四話 わたしの招待に反対する継母

 お父様は、この時点で、オクタヴィノール殿下とわたしの婚約を認識した。


 後は、ルクシブルテール王国の国王陛下と王妃殿下がわたしたちの婚約を認めれば、家どうしとしての婚約が認識されることになる。


 侍女のジゼルアさんには、婚約の話はしなかったものの、招待されることを伝えると。


「よかったですね、お嬢様。これでオクタヴィノール殿下とますます仲を深めていけそうですね」


 と言って、わがことのように喜んでくれていた。


 ジゼルアさんには、オクタヴィノール殿下のことを少し話していて、わたしたちの仲について心配してもらったこともあったので、より一層うれしさが増していたようだ。


 オディナティーヌも招待のことしか知らされてはいなかったのだけれど、


「よかったですね、お姉さま」


 と言ってくれた。


 わたしはオディナティーヌに対して、ほぼ放任状態で接していたので、以前のように極度にわたしを恐れることはなくなり、普通の関係に近づいてきた。


 それでもわたしに懐くというところからは遠い。


 これは仕方のないことだ。


 普通の関係に近づいてきただけでも、大きな前進だと言える。


 しかし、継母だけは違った。


 今、わたしは、継母と対峙している。


 最近はわたしに対して、嫌味を言うことはさらに少なくなっていたのだけれど、この日は、最盛期と同じか、それ以上に力を入れてわたしに嫌味を言ってきた。


「リディテーヌさん、あなた、正気なの?」


「正気と言いますと?」


「あなたのような魅力がない人が、招待をされるなんて信じられないわ。しかもそれがルクシブルテール王国の王都にある王宮とは、ますます信じられない。あなた、今すぐ断りなさい。今までは単に運が良かったから、オクタヴィノール殿下に対してご迷惑をおかけしなかっただけだというのにね。今度こそは、ご迷惑をおかけしてしまうわ。それもオクタヴィノール殿下だけではなく、国王陛下や王妃殿下にまでご迷惑をおかけしてしまう。ボードリックス公爵家の恥になったら、どうしてくれるのよ、あなたは。いや、既にボードリックス公爵家の恥だと言えるわね。全く、なんでわたしはこの子の母親なんだろうと思ってしまうわ。オディナティーヌは、あんなに素敵に育ってくれていと言うのに……」


 どこまでもわたしのことを批判し、屈辱を与え、評価しない継母。


 そして、必ずオディナティーヌと比較して、劣っているということを強調する継母。


 腹が立たないわけではない。


 特に、


「ボードリックス公爵家の恥」


 という言葉を使われるのは嫌だ。


 ボードリックス公爵家にふさわしい人間になろうと思って、努力してきたところも大きいので、なぜそういうことを言われなければならないのだろうと思う。


 以前のリディテーヌであれば、この後、腹を大いに立てて、言い争いになっていたことだろう。


 しかし、相手をしても仕方がないという姿勢は、転生の記憶が戻った後、既に確立している。


 わたしが特に反応をしないでいると、継母は、


「どうして黙り込んでいるの? わたしにボードリックス公爵家の恥と言われたことが、そんなに心にこたえたのかしら? まあ、あなたのような人は、そのように言われても、当然のことだけどね」


 と言うと、高笑いをした。


 よくもまあ、そこまで言えるものだ。


 わたしは苦笑いをせざるを得ない。


「さあ、招待をすぐに断りなさい。あなたのようなところがいくところではないわ!」


 継母はさらに調子にのってきた。


 招待されるだけでもこれだけのことを言ってくる継母。


 今回、婚約の話もするということを聞いたら、これ以上の嫌味を言ってきそうだ。


 そろそろこちらから言ってもいい頃だと思う。


 そう思ったわたしは、


「いろいろわたしのことを心配していただいて、ありがとうございます」


 とやさしく言って、微笑んだ。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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