第十五話 幼馴染の返事
わたしの話は続く。
「今日いきなりした話だから、返事はすぐにもらえないと思っているの。でも、時間はかかってもいいから、いい返事をもらえるのをものすごく期待している。冬伸ちゃんが恋人になるのをとても楽しみにしているの」
そう言った後、わたしは。
言い過ぎてしまったかもしれない……。
と思った。
冬伸ちゃんは、わたしの言葉を聞いて、固まってしまっている。
「返事はすぐにもらえないと思っている」
と言ったことまではよかった。
しかし、その後、
「いい返事をものすごく期待している」
「恋人になるのをとても楽しみにしている」
と言うことはいうべきではなかったと思う。
これでは冬伸ちゃんにわたしが、付き合うことを強制してしまう形になってしまう。
もし、冬伸ちゃんがわたしと付き合うことを選択したとしても、本人にはその気がなく、強制されてやむなく付き合ったとなれば、その関係はあっという間に壊れてしまうだろう。
そして、その時点で、今まで構築してきた幼馴染としての関係も、終わりを告げてしまうに違いない。
冬伸ちゃんは、どう返事をしようか迷っている。
というよりも、困惑してしまっているようだ。
その返事次第では、先の話ではなく、今すぐ幼馴染としての関係は終了しかねない。
そう思ったわたしはあわてて、
「冬伸ちゃん、ごめんなさい。わたし、ついつい自分の想いを冬伸ちゃんに押しつけるようなことをしちゃった。冬伸ちゃんがわたしのことをどうに想っているかということを考慮しないなんて、いくら幼馴染と言っても、許されることではないわよね……」
と言って頭を下げる。
そして、
「でも、わたしが冬伸ちゃんのことを好きなのは本心なの。今日は無理でも、少しずつでいいので、わたしのことをただの幼馴染ではなく、一人の女性として思ってもらえるとうれしい」
と続けて言った。
今日のところは、ここまでが限界だと思う。
後は冬伸ちゃんの返事待ちだ。
さすがにこれで、
「りくらちゃんとの仲もこれまでだ。これからはただの同級生になる」
と言うことはないだろう。
しかし、
「俺もりくらちゃんのことが好きだ」
と言うことは、今までの対応からするとないと思う。
とすると。いいところ、
「りくらちゃんの気持ちはうれしい。でも、俺はまだりくらちゃんのことは一人の女性として見るには無理だ。今はまだ、今まで通りの幼馴染として過ごしていきたい」
というところまでだろう。
それでも、昨日までの関係よりは前に進むことができる。
冬伸ちゃんのわたしに対する意識を、ただの幼馴染から一人の女性という方向に変えていくきっかけにはなると思うからだ。
そう思っていると、それまで黙っていた冬伸ちゃんは、
「俺、今はまだりくらちゃんのことを恋愛対象として見ることはできないんだ。幼馴染として過ごしてきた時間が長すぎたんだと思う」
と言い、そこで一回言葉を切る。
やはり、そうなるよね……。
予想通りとはいうものの、わたしはガクっとせざるをえない。
しかし、まだ話をしている途中だ。
わたしは次の言葉を待つことにした。
「でも俺はりくらちゃんに好意は持っている。ただの幼馴染以上のものを持っているんだ」
冬伸ちゃんはわたしに期待を持たせる言葉を言う。
しかし……
「ただ。残念ながらこれはまだ恋ではないと思っている。ごめん。そういう意味では、恋人としての付き合いはまだできないんだ」
一気にわたしの持っていた期待は小さくなっていった。
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