第135話:プチ同棲 その7
「じゃあ、こっち向いて……?」
「ん……」
未だ残る照れを隠すように、振り向いた光の唇にすぐ唇を重ねる。
ただのキスとは一線を画すそれは、まだ俺たちにとっては非日常の行為だ。
軽く開いた口から出した舌先で光の唇をノックする。
光の身体がビクッと少し震えた後、口の周辺に呼気の暖かさを感じた。
開かれた口に自分の舌をゆっくりと差し込んでいく。
少し進んだところで、ぷにっと柔らかい光の舌先を捉えた。
唇を重ねたまま、舌先同士を軽く擦り合わせる。
「んっ……っちゅ……」
俺の舌の動きに応じて、光の舌も同じように動く。
最初は撫でるような動きだったのが、次第に互いの舌の形を確かめるように。
混ざりあった互いの唾液が、まるで媚薬にでもなったように頭を熱に浮かせる。
どちらのものかも分からない熱い体温が、溶け合い同化していく。
「っふぅ……」
臨界寸前のところで何とか唇を離し、深く息を吸う。
「やっぱり、すごいね……これ……」
顔を真赤にした光が、蕩けた口調で言う。
「うん……すごい……」
その行為に対するシンプルかつ的確な感想を述べる。
「もう1回、する……?」
尋ねると、光が恥ずかしそうに小さく頷いた。
正直に言えば、俺も1回だけじゃ全然足りなかった。
再び顔を近づけて、熱と熱を交換する作業を再び繰り返す。
ただ処理し損なった煩悩のせいか、二度目の行為はさっきより少し熱が入ってしまう。
彼女の柔らかい唇と舌の全てを堪能するように貪り、口内に舌を差し入れる。
光の両肩に置いた手にも、自然と力が込められていく。
それが少し強かったのか、それとも彼女の何かを刺激してしまったのかは分からない。
「あっ……」
ただ、光はその口から普段とは異なる色を含んだ甘い声を上げた。
それが俺のかろうじて保たれていた理性のタガを外した。
「きゃっ……!」
気がつくと、俺は仰向けになっている光に覆いかぶさるような体勢になっていた。
「れ、黎也くん……?」
光が少し怯えたような表情で俺を見上げている。
けれど、その表情すらも今は頭の中で渦巻く激情を単に刺激する。
「どうしたの……?」
光が困ったように、俺を見上げながら言う。
その潤んだ瞳は豆球の弱い光を反射して、チカチカと煌めいている。
な、何やってるんだ……俺は……。
こんなことしたら、もう我慢できなくなっちゃったみたいじゃん。
「え、ええっと……なんていうか……その……」
ほら、早く謝って退けって。
そう思いながらも身体が全く動かない。
身体の下では光が俺をジッと見上げている。
そして彼女は、まだ俺の唾液が少し付いた唇をゆっくりと開く。
「……するの?」
その少し熱っぽい声色で発された言葉に、心臓が大きく跳ね上がった。
新作を二作投稿したので良ければそちらも読んでみてください。
『Re:二度目の青春でやるべきたった一つのこと ~高校時代にタイムリープした俺は未来の知識で隠れた才能を持つ同級生たちをプロデュースする~』
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『白河真白は清く気高く、そして淫らである』
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