あこがれの先輩? (2)
さりげなく腕を引かれるままに、ウチの会社の女子社員がみんなして狙っている、将来出世間違いなし、おまけにイケメン高身長な先輩と歩き出したわけだけど。
今までは挨拶を交わす程度の距離。
たまには話しもするけれど、そんないきなりふたりでお茶しようなんて言うほどの仲ではない。
なのにいきなりの大接近に正直戸惑っている。
こんな素敵な人とふたりで……なんて考えるだけで嬉しいドキドキのはずが、なぜか困惑の気持ちが湧いてくる。
龍也くんはきっとこんなことぐらいでは何も言わないだろう。
別にやましいことはないのだから、正直に話せるし。
先輩の行動は、さりげなくというより少し強引な気さえしてきた。
あこがれの先輩と……嬉しさともやもやとが混在する。
そんな心配をよそに、先輩はとても優しかった。
駅前のカフェで軽くお茶を飲みながら、お互いの事をあれこれ話して。
いつも会社では見せないようなお茶目な一面や、冗談なんかを言ってる姿を見て、凄く親しみやすい素敵な人なんだと確信した。
「先輩は彼女はいないんですか?」
調子にのって、つい余計なことを聞いてしまう。
だって、こんな素敵な人に彼女がいないわけないし。
もし彼女がいるのなら、こうして私とお茶なんかしていてもいいのかしら?
「まさか。そんな人はいないよ」
まあ、普通はそう答えるわよね。
「信じられませんね」
だって、こんなにカッコイイんだよ。
パッチリ二重でつぶらな瞳。鼻筋は通っていて、少し薄めの唇はクールな感じ。
男性なのにアイドルのようなサラサラヘア。
その上、仕事もできて優しい。
周りが放っておくはずがない。
「葉月さんは?」
「え?」
「彼氏はいないの?」
私には龍也くんというれっきとした彼がいる。
でも、その存在は会社ではヒミツ。
急にそんなことを聞かれて、どう答えれば?
まあ、私がそんな話題をふったのがいけないんだけど。
「そんなぁ。わたしのことはいいですから~」
とりあえず、お茶を濁しておこう。
彼がいるともいないとも、はっきり言わなければウソをついたことにはならないし……っていうことで。
「どうして?」
「どうして、って言われても」
どうしてって言われても困る。どう答えようか。
「私は先輩のお話が聞きたいなぁ、なんて」
うっ、苦し紛れに言ってしまったけど。
「俺は葉月さんの話が聞きたいな」
え、どうしよう。
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次話でいよいよ99話になります。
もうすぐ100話♪
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