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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第7章】 秋から冬へ
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クリスマスの日(3)

 浩ちゃんに連れて行かれたところは……。



「わあ! 大きくてとても綺麗」


 そこは有名なデートスポット。

 巷でも評判で、大きなツリーに装飾が施され、色とりどりに変わる光の粒たちの競演。


「何メートルぐらいあるんだろうね」


 それは2階の屋根くらいはあろうか。

 飾り付けるのもさぞかし大変だったろう。


「そういえば、龍也たつやくんとはイルミネーションとかツリー見に行かなかったな」


「そうなんだ」


「ホテルのツリーは見たけど」


「ホテル?」


「うん、ディナーを食べたレストランが入ってる有名老舗ホテル」


「そっかぁ」


「うん。ロビーに豪華なツリーが飾られてたよ。こんなに大きくはなかったけどね」



 そう言ってまたふたりで、目の前にそびえるおとぎの森の中のツリーを見上げ、しばらく佇んでいた。

 

「ずっと見てても飽きないね」


「……そうだね」


 彼のワントーン落とした声音に顔色をうかがった。

 くるくる変わる色合いに照らされたその横顔は、いつになく真剣で。

 そしてどことなく切なげで。



 背の高い夢の国の1本を見上げたまま、浩ちゃんは静かに口を開いた。


「このツリーの前で願いごとをすれば叶うんだって」


 なんとロマンチックな。


「そうなんだ」


「だからどうしても来たくて」


 確かにひとりでは訪れにくい場所ではある。


「なにか叶えたい願いごとがあるの?」


「いやっ、まぁ」


 照れながら頷く彼。

 ま、そりゃあるわな。と思いつつも、ついいたずら心が芽生えて、からかいたくなる。


「え、なになに?」


「それはその……」


 言いにくいでしょ、言いにくいでしょ。

 でも私は諦めない。


「聞きたいなぁ~」


「言わないよ」


「どうして?」


「まだ願いごとをしてないから」


「じゃ、今からお願いしようか」


 そう言ってお互いツリーの方に向き直って、私は両手を胸の前で組み、目をつぶってお願いした。

 なにを願ったかって? それはもちろん……言わぬが花。


「ちゃんとお願いできた?」


 そう聞くと照れながらも嬉しそうに頷く彼。

 やっぱ可愛いわ。


「で、なんてお願いしたの?」


 だからつい、からかいたくなる。


「言わなーい」


「こら、教えろー。約束したじゃん」


「してなーい」


 笑いながら駆け出す彼。


「まてー」


 と追いかける私。


 って、なんか恋人同士のじゃれ合いみたいじゃん。

 しかも男女逆転してる感は否めない。


 やっぱ、年下は可愛いわ。



お読み下さりありがとうございました。


クリスマスのお話は今話までです。

次は年末年始のお話。


次話もよろしくお願いします!

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