クリスマスの日(3)
浩ちゃんに連れて行かれたところは……。
「わあ! 大きくてとても綺麗」
そこは有名なデートスポット。
巷でも評判で、大きなツリーに装飾が施され、色とりどりに変わる光の粒たちの競演。
「何メートルぐらいあるんだろうね」
それは2階の屋根くらいはあろうか。
飾り付けるのもさぞかし大変だったろう。
「そういえば、龍也くんとはイルミネーションとかツリー見に行かなかったな」
「そうなんだ」
「ホテルのツリーは見たけど」
「ホテル?」
「うん、ディナーを食べたレストランが入ってる有名老舗ホテル」
「そっかぁ」
「うん。ロビーに豪華なツリーが飾られてたよ。こんなに大きくはなかったけどね」
そう言ってまたふたりで、目の前にそびえるおとぎの森の中のツリーを見上げ、しばらく佇んでいた。
「ずっと見てても飽きないね」
「……そうだね」
彼のワントーン落とした声音に顔色をうかがった。
くるくる変わる色合いに照らされたその横顔は、いつになく真剣で。
そしてどことなく切なげで。
背の高い夢の国の1本を見上げたまま、浩ちゃんは静かに口を開いた。
「このツリーの前で願いごとをすれば叶うんだって」
なんとロマンチックな。
「そうなんだ」
「だからどうしても来たくて」
確かにひとりでは訪れにくい場所ではある。
「なにか叶えたい願いごとがあるの?」
「いやっ、まぁ」
照れながら頷く彼。
ま、そりゃあるわな。と思いつつも、ついいたずら心が芽生えて、からかいたくなる。
「え、なになに?」
「それはその……」
言いにくいでしょ、言いにくいでしょ。
でも私は諦めない。
「聞きたいなぁ~」
「言わないよ」
「どうして?」
「まだ願いごとをしてないから」
「じゃ、今からお願いしようか」
そう言ってお互いツリーの方に向き直って、私は両手を胸の前で組み、目をつぶってお願いした。
なにを願ったかって? それはもちろん……言わぬが花。
「ちゃんとお願いできた?」
そう聞くと照れながらも嬉しそうに頷く彼。
やっぱ可愛いわ。
「で、なんてお願いしたの?」
だからつい、からかいたくなる。
「言わなーい」
「こら、教えろー。約束したじゃん」
「してなーい」
笑いながら駆け出す彼。
「まてー」
と追いかける私。
って、なんか恋人同士のじゃれ合いみたいじゃん。
しかも男女逆転してる感は否めない。
やっぱ、年下は可愛いわ。
お読み下さりありがとうございました。
クリスマスのお話は今話までです。
次は年末年始のお話。
次話もよろしくお願いします!




