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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第7章】 秋から冬へ
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3連休なクリスマス(4)

 あーあ、行っちゃった。


 やっぱり新幹線のホームで見送るのは辛い。

 龍也たつやくんを乗せた青いラインの入ったN700系が、だんだんと小さくなってゆく。

 少しずつ遠くなってゆく距離。


 去って行くものより、残されたものの方が寂しい。


 誰かが言っていたが、そうかもしれない。


 ああ、みんながクリスマス気分で浮かれている時に、楽しそうなカップルたちを横目に、華やかに彩られた街をひとり寂しげに帰って行かなければならない。


 そう思うと、自然に一条ひとすじ頬を伝っていた。

 自分の手の甲にこぼれた一粒にハッとして、大急ぎで頬を拭う。


 解りきっていたこととはいえ、このクリスマスという演出が寂しさを盛り上げる。


 はあ、とため息をついて気を取り直して元気よく!

 とはいかないが、そこそこ元気に帰ろう、と歩き出した。



 楽しかった昨日のディナーを想い出す。


 有名老舗ホテルの豪華なレストランでクリスマス限定ディナーを楽しんだ。

 はじめは少し緊張していたが、運ばれてきた食事の一品ごとに趣向が凝らしてあるので、自然と笑顔になり話にも花が咲く。

 「クリスマス限定」というだけあって、クリスマスに因んだ飾り付けやチキンなど、目でも舌でもクリスマスを存分に堪能することができた。

 


 帰りに、「今度はあの鉄板焼きのお店に行こう」と彼が言うから、「わあ! 美味しそう! 絶対に行こうね」と私は返す。

 こんなに豪華なホテルの鉄板焼きって、絶対美味しいと2人でわくわくしながら話した。

 楽しくて心が温かかった昨日。


 やだ、また泣けてくる。





 やはりクリスマスはどこもかしこも楽しげで、その光景を見ているだけで、いつの間にか心も平穏を取り戻している。


 行き交う人たちをぼんやり眺めながら、私も少しだけクリスマス気分を味わおうと歩いていると……。


海彩みいちゃん」


 と、突然聞き覚えのある声色に呼び止められる。

 振り返るとそこには、満面の笑みを浮かべたイケメンの浩ちゃん。とお連れさまの女性。


 適当な社交辞令と挨拶を交わし、その場を後にしたけれど。

 なんとなく気になる。


 夜になって、浩ちゃんから電話かかってきた。

 昼間のお連れさまは学生時代の後輩だとか。妹みたいな存在だとか。

 一生懸命言い訳をしている。


 私もその言い訳を適当に受け流してはいるものの、ほんの少しばかり気にはなる。

 この感情がどういうものなのかは、自分でもはっきりとは解らない。

 でも、言い訳を聞いているともやもやするし、腹立たしくも思えてきたりして……。


 やっぱり龍也たつやくんがそばにいないということが、知らず知らずのうちに私の心をとげとげさせているのか。

 そんなことは浩ちゃんには関係ないことなのに。


お読み下さりありがとうございます。


次話もよろしくお願いします!

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