友人の悩み事(5)
ああ、そういえば浩ちゃん、好きな人ができたってさっき言ってたっけ。
「実は少し前から好きな人がいて。しかもその人とは結構仲良くて。今のままの関係じゃ嫌で、どうしても想いを伝えたいんだけど」
「へえー、そうなんだ。仲がいいんだったら相手も浩ちゃんには好意を持ってるだろうし。普通に告白とかすれば?」
「それがなかなか」
「だよね」
「その人には付き合ってる彼がいるって解ってて、告白したらひかれるかな?」
「ええっ。またややこしい人を好きになっちゃったんだね」
「彼女は本当にいい人なんだよ。たまたま彼氏ができちゃったっていうか。俺がもたもたしてる間に、他の人と付き合い始めて」
「まあ、告白されて嫌な気はしないだろうけど、困惑するかもね」
「そうだよな」
「彼女との件もあるし、全てはそっちの方が解決してからだね」
「うん」
「まあ、がんばれ」
「応援してくれるの?」
「もちろん。相手の人は結婚してるわけじゃないんでしょ?」
浩ちゃんは大きく頷いた。
「じゃあ、まだ望みはあるかもね。応援するよ」
「サンキュ」
そう言って浩ちゃんは、左目を一瞬キュッと閉じてみせた。
え、なに今の。ウインク?
やっぱイケメンはなにやっても絵になるわぁ。
整った目鼻立ち。男性なのにパッチリ二重。
見ているこっちがとろけそうになるほどの笑顔。
今売り出し中の俳優、なんていったっけ。ど忘れしたけど、彼にも似ている気がする。
「俺さぁ来週から販社で研修が始まるって言っただろ。
営業なんてやったことないから精神的にキツいかもしれない。たまに会ってくれる?」
「今でもたまに会ってるじゃん」
「そうだけど、今まではただ友人としてなんとなくだったけど、これからは友人兼相談相手として話せたらいいなぁって思って」
「そういうことならオッケーだよ」
* * *
それからは私の方も仕事が忙しい上に、遠距離恋愛中の龍也くんとは、なんだかんだと連絡が途絶えがちになって。
ふたりで愚痴を言い合ったりして、お互いの恋バナなんかをするようになって。
それぞれ男性のキモチ、女性のキモチなんかを言い合ったりしているうちに、なんか浩ちゃんとの距離が短くなった気がする。
男女の垣根を越えた、なんでも話せる『親友』のような感覚とでもいおうか。
性別を超えた友人関係なんて成立しないってよく言うけど、お互い好きな人がいるし、その人のことを大切に想っているから、私たちの間にはちゃんと成立している。はずだ。
浩ちゃんは、営業研修が始まってしばらくしてから、彼女とちゃんと話し合って納得して別れたらしい。
今年のクリスマスは寂しいな、なんて言ってたけど。
私だって龍也くんとクリスマスが過ごせるかなんて、まだ解らない。
いっそのことふたりで過ごそうか、なんて冗談交じりに浩ちゃんは言うけど……。
もしかしたら、それもアリなのかな、なんて。
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