やっと解放される
9月も下旬にさしかかろうかとしているある日、高校時代の友人から電話があった。
彼から電話があるなんて、すごく久し振りのことだ。もう何ヶ月ぶりだろう。
例の『友達』と共通の友人、しかも『友達』の親友なのだ。
そんな彼からの電話の内容は、一度会って話がしたいとのこと。
私には別に話などない。もちろん断った。
でも彼は、『友達』のことで話があるという。
尚更会ってまで話すことはないと告げ、話なら今聞くと伝えた。
どうやら、『友達』は今でも私のことが好きだと言っては、その友人に愚痴を溢しているという。
落ち込みが激しく、見ていられないとか。
車も私の会社で販売している車種に乗り換えたという。
私に自分の気持ちを伝えてほしいとでも、彼に頼んだのだろうか。
気持ち悪い。
そうだ、あのことを言ってみよう。
「あのさ、先月の私の誕生日に、自宅の門にプレゼントがかけてあったんだけど」
『うん』
「手紙もなにもなくて、包装紙にリボンがかけられたプレゼントらしきものと、ただ『友達』の写ってる写真が1枚入ってただけなんだけど」
『なにそれ』
「ただただ気味悪い」
『それはちょっとキツいなぁ』
「でしょう?」
『そんなことするヤツじゃないんだけどなぁ』
「でも、実際してるよ」
『よっぽど海彩ちゃんのことが好きなんだな』
「そんなことされたら、余計嫌いになっちゃうよ」
『ホントだね』
「それに、もう会いたくないって言ったときにも、かなりひどいことを言われたんだよ。その上、その場に置き去りにされて」
『そりゃ嫌になるわな』
「でしょう?」
『わかった。俺からアイツに言っておくよ。海彩ちゃんのことは、もう諦めるようにって』
「ホント? よかった! 親友の言うことなら聞いてくれるよね」
『俺が責任を持って説得するよ。だからもう心配しないで』
友人はそう言ってくれた。
実際、それ以降『友達』からは、一切のコンタクトはなかった。
やっと解放された。
仕事の方は相変わらず忙しく、龍也くんともあまり連絡がとれない日々が続いている。
でも私はめげずに毎日せっせとハガキを投函して、ちょっとした自己満足を味わっている。
その甲斐あってかどうかは解らないけれど、10月の3連休に龍也くんが帰ってくることになった。
金曜日の仕事終わりにそのまま新幹線に乗って、実家に帰る。そして土曜、日曜と私と逢って、月曜日の夜にまた千葉に戻るという。
今から待ち遠しい。
これで、月末まで残業続きでも苦にならない。
私って単純!
お読み下さりありがとうございました。
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