第一関門突破
龍也くんと元カノのことは、私が『龍也くんが思うようにすればいいよ。彼女のところに戻りたければそうすればいいし、私といたいと思えばそうすればいいし』なんて言っちゃったから、てっきり気を悪くしたと思っていた。でも彼は、私の言葉を素直に受け止めて、自分のしたいようにしたという。
即ち、『私といたい』ということだ。
嬉しい。凄く嬉しい。
でも、もう少し言い方を考えてね、とチクリとひと言あったけど。
って、それよりもどうして急に実家に行く羽目に?
「なんで前もって言ってくれなかったの? 急に言われても困るよ」
「え、どうして?」
「どうしてって。実家だよ、実家!」
「うん、そうだよ。それが?」
「彼女を実家に連れて行くんだよ」
「うん、そうだよ。それが?」
「はあ? なんで連れて行くの?」
「姉貴の赤ちゃんが可愛くってさぁ。もうすぐ帰っちゃうからその前に見に来たらいいなと思って」
ん……。
それだけ?
そういうこと?
「なんだぁ。びっくりしたぁ」
「あ、着いたよ。ここ」
え、もう?
いくら赤ちゃんを見に行くだけって言われても、心の準備ができていない状態で行けると思う?
「やっぱやめとく。今日は遠慮する」
彼はじーっと私の顔を見て、ニコッと笑ってひと言。
「そっかぁ。残念だな。可愛いのにな」
と、本当に残念そうにしている。
気づいてないのか?
気づかないふりをしているのか?
「ごめんね」
「上手い口実だと思ったんだけどな」
あ、やっぱり。
「その手にはのりません。前もって言ってくれないと、心の準備ってものがあるでしょう?」
「そうだな、ごめん。でも、一度見においでよ、赤ちゃん」
「うん、ぜひ!」
龍也くんは私を家族に紹介したいみたいだった。
それならそうと最初から言ってくれればいいのに。
お互いに気を使いすぎずにサラッと紹介したかったらしい。
2人でいろいろ話して、結局次の日、夏期休暇最終日に『お姉さんの赤ちゃんを見に行く』ということで、龍也くんの家に。
お母さんもお姉さんも感じのいい人で、『海彩ちゃん』と気さくに呼んで下さる。
まずは第一関門突破というところかな。
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