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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第4章】 転勤決定
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7月16日(月) ハーブガーデン

昨日の『ペアウォッチ』を身につけて、龍也くんと待ち合わせ。


 昨日龍也たつやくんとデパートに行った。

 龍也くんはそこであるものをペアで買って、それを帰りの車の中で手渡された。


 『ペアウォッチ』


 スマホでも時間ぐらい見られるのに、どうしてかと思ったら……。


 時計は必ず見るもの。しかも1日に何度も。必ず見る。そして……、


『その度にお互いを想い出す』


 って。


 なんだかいつも冗談ばっか言ってる龍也くんとは、ちょっと違った一面を見られた気がする。

 案外ロマンチックなところもあるんだな、なんて。





 今日は早速、昨日の『ペアウォッチ』を身につけて、龍也くんとの待ち合わせ場所に向かった。

 折角の3連休最終日なんだからと、ゆっくりと過ごすことにした。

 彼は私の左手に時計を見つけて、とても嬉しそうにしている。2人の腕を並べてペアウォッチを見比べて。


海彩みいちゃん似合ってるねー」


「ありがと。龍也たつやくんも似合ってるよ」


「サンキュ」


「ペアウォッチ嬉しい。ありがとね」


「おう」


 少しはにかんだ、でも、とても嬉しそうな彼を見ていると、こちらまで嬉しくなってくる。



 そしてゆっくりと車は走り出す。


 あてもなく車で……西へ……。


 って、あれ?


 この道……確か。


 車は山の手の方に向かい走っている。


 ドライブウェイコースをゆっくりと上って行く。車窓から見る景色も街並みから徐々に木々に包まれてゆく。


 あ、やっぱり。

 あの公園。

 でもその公園には寄らずにもっと上へと向かっていくSUV。

 いったいどこに行くつもりなんだろう。


 かなり上まで上ったところに、ちょっとした観光スペースがある。

 ジンギスカンのレストランに喫茶店。土産物屋からホテルまで。


 そして奥の駐車場のところには、展望台。手前の駐車場のところには展望スペースにモニュメント。どこもかしこも観光客で賑わっている。



 そこここに綺麗に植えられた夏を彩る花々。山の上は下界よりは少しは涼しいが、遮るもののないところでは流石に汗が滲んでくる。心なしか、言葉数少なめな龍也くんではあるが、きっと転勤することへのいろいろな気持ちがそうさせているのだろう。


 その辺をしばらく散策して、人気ひとけの少ないハーブガーデンにさしかかったとき、おもむろに立ち止まったかと思うと、急にはしゃぎだした彼。


「おお、これがあの有名なラベンダーか!」


「は? 初めてみるの?」


「オレ、花の名前には疎くって」


「じゃあ、これはなにか解る?」


 そのお花の前に2人して、覗き込むようにしてしゃがみ込む。

 龍也くんは左手の人差し指で、小さな白い花弁をつんつんとつついてみて言う。


「うーん、なんだろ。ちっちゃいマーガレット……みたいな」


 ……みたいな、ってちゃんと逃げ道をつくっているところが可愛くもある。


「それはカモミール」


「ふうん」


 って、不意に肩に手を回されてドキンとしたのも束の間。


「結婚しよ」


 え? 今なんて言ったの?



お読み下さりありがとうございました。


次話「7月16日(月)なんですと!?」もよろしくお願いします!

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