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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第4章】 転勤決定
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7月15日(日) ペアウォッチ

 遠距離恋愛ってそんなに大変なのかな?

 出世するってそんなに大切なことなの?


 美樹ちゃんの彼は結局、恋愛よりも仕事を取るという。

 その後2人でよく話し合った結果だと言うが、同じ事柄でも人それぞれ考え方や行動が違うのだなと痛感する。




 この3連休は龍也たつやくんの引っ越しに備えて、少しずつ準備をしていくことになった。

 今週末の面談で行き先が告げられるらしい。あらかじめ希望は聞かれたようだが、彼は『そりゃあ、近いにこしたことはないけど、決まればどこにでも行くつもり』と言っていたし、特に希望は告げなかったようだ。


 流石社会人の、いや、会社人間のかがみだ。……なんて。


 まあ、今までのように実家から通えるほど近くに配属される可能性は、ゼロに等しい。

 後から慌てないようにいろいろと買いそろえたいから、一緒に選んでほしいって。


 昨日は電化製品の下見。全国どこに行くにせよ、販売会社の社員寮があるので、住む場所を探しに行く手間は省ける。


 2人で電化製品を見に行くなんてなんだか……『うふふ』な感じ。 


 昨日と今日の午前中で家電量販店を3件回って、大体の商品と値段は頭に入った。後は予算との兼ね合いだ。


 今日はデパートに行きたいって言うから、午後からデパートに。


「なにを見に来たの?」


「時計」


「ふうん」


 お目当ての時計売り場に到着して、ショーケースの中を覗き込む。

 流石デパートだけあって、なかなかのお値段だ。


「気に入ったの見つかった?」


「うん。これなんかどうかな?」


 白の文字盤にシンプルな作りで金の縁取り。渋い茶色の革のベルトがついているものだ。


「いいんじゃない」


 すると彼はお店の人を呼んでびっくりすることを言ったのだ。


「この時計、ペアで下さい」


 かしこまりましたと、在庫を調べに行った店員さんを見送る。


「え、どういうこと?」


海彩みいちゃんとペアウォッチ。プレゼントしたいんだ」


 いや、そんなに二カッと笑って言われても。


「そんなのもらえないよ。買うなら私は自分の分は払うから」


「身につけるもので、お揃いのが欲しかったんだ」


「じゃあ、お互いに相手の分を買うっていうのはどう?」


「これはオレが言いだしたことだから、オレにプレゼントさせてくれ」


 在庫を持って帰って来た店員さんに、彼はプレゼント包装を頼んで、その包みを嬉しそうに受け取っていた。

 可愛いとこあるなって、ちょっとキュンとしちゃったな。





 帰りはいつものように近くの公園まで送ってくれたが、そのときにさっきの包みを手渡された。


「これ」


「ありがと。でも、どうして時計がよかったの? 時間ならスマホで見られるし、ペアならほかのものでもよかったんじゃ?」


「いや、いつも身につけていて、必ず見るもの。スマホを出すよりも早くみられるだろ?」


「まあ、そうだけど」


「そんでもって、時計は1日に何回も見る」


「うん」


「その度にお互いを想い出す」



お読み下さりありがとうございました。


次話「7月16日(月) ハーブガーデン」もよろしくお願いします!

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