7月15日(日) ペアウォッチ
遠距離恋愛ってそんなに大変なのかな?
出世するってそんなに大切なことなの?
美樹ちゃんの彼は結局、恋愛よりも仕事を取るという。
その後2人でよく話し合った結果だと言うが、同じ事柄でも人それぞれ考え方や行動が違うのだなと痛感する。
この3連休は龍也くんの引っ越しに備えて、少しずつ準備をしていくことになった。
今週末の面談で行き先が告げられるらしい。あらかじめ希望は聞かれたようだが、彼は『そりゃあ、近いにこしたことはないけど、決まればどこにでも行くつもり』と言っていたし、特に希望は告げなかったようだ。
流石社会人の、いや、会社人間の鑑だ。……なんて。
まあ、今までのように実家から通えるほど近くに配属される可能性は、ゼロに等しい。
後から慌てないようにいろいろと買いそろえたいから、一緒に選んでほしいって。
昨日は電化製品の下見。全国どこに行くにせよ、販売会社の社員寮があるので、住む場所を探しに行く手間は省ける。
2人で電化製品を見に行くなんてなんだか……『うふふ』な感じ。
昨日と今日の午前中で家電量販店を3件回って、大体の商品と値段は頭に入った。後は予算との兼ね合いだ。
今日はデパートに行きたいって言うから、午後からデパートに。
「なにを見に来たの?」
「時計」
「ふうん」
お目当ての時計売り場に到着して、ショーケースの中を覗き込む。
流石デパートだけあって、なかなかのお値段だ。
「気に入ったの見つかった?」
「うん。これなんかどうかな?」
白の文字盤にシンプルな作りで金の縁取り。渋い茶色の革のベルトがついているものだ。
「いいんじゃない」
すると彼はお店の人を呼んでびっくりすることを言ったのだ。
「この時計、ペアで下さい」
かしこまりましたと、在庫を調べに行った店員さんを見送る。
「え、どういうこと?」
「海彩ちゃんとペアウォッチ。プレゼントしたいんだ」
いや、そんなに二カッと笑って言われても。
「そんなのもらえないよ。買うなら私は自分の分は払うから」
「身につけるもので、お揃いのが欲しかったんだ」
「じゃあ、お互いに相手の分を買うっていうのはどう?」
「これはオレが言いだしたことだから、オレにプレゼントさせてくれ」
在庫を持って帰って来た店員さんに、彼はプレゼント包装を頼んで、その包みを嬉しそうに受け取っていた。
可愛いとこあるなって、ちょっとキュンとしちゃったな。
帰りはいつものように近くの公園まで送ってくれたが、そのときにさっきの包みを手渡された。
「これ」
「ありがと。でも、どうして時計がよかったの? 時間ならスマホで見られるし、ペアならほかのものでもよかったんじゃ?」
「いや、いつも身につけていて、必ず見るもの。スマホを出すよりも早くみられるだろ?」
「まあ、そうだけど」
「そんでもって、時計は1日に何回も見る」
「うん」
「その度にお互いを想い出す」
お読み下さりありがとうございました。
次話「7月16日(月) ハーブガーデン」もよろしくお願いします!




