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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第4章】 転勤決定
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7月12日(木) 新入社員研修とは

 朝、通勤途中のバス停で、龍也くんの職場に配属された、1歳下のイケメン新入社員の浩ちゃんと偶然に出会った。いつもは自動車通勤の彼は、来週から新入社員研修と称した、魔の教育期間に入るため、慣れるまでは身体を優先して電車通勤するという。今週はそのための研修ということだ。


 新入社員は、入社後約1週間の社会人としての心得や、基本的な接遇マナー、会社の概要、基本方針、企業理念など必要最低限の研修を受けて、各部署に仮配属される。


 自動車メーカー。本社のある本社工場。

 当然その工場での研修もあるわけだが。


 4月に各部署に仮配属されてから3ヶ月間、それぞれの部署で実際に仕事をしながら大まかな流れを把握してゆく。そしてその間に学生気分からしっかりとした社会人としてのマナーを身につけていくのだ。


 そうして社会人としての自覚が芽生えてきた頃、そう、3ヶ月後の7月からまた3ヶ月周期でいろいろな職場で実際に働きながらの研修期間に入る。工場研修のあとは、販売会社での営業研修など、1年間は研修づくめだ。


 そして2年目にやっと正式な配属先が決まる。ある程度の希望は聞かれるだろうが、思うようにはいかない。

 ここまで頑張って研修を続けてきた人でさえも、希望の部署以外に配属されて、会社を辞めてしまう人もいる。折角過酷な研修にも耐えたのに、勿体ない話だ。


 最初は希望部署でなくても、勤めるうちに『個人面談』というのがあるから、その時に自分の希望を直属の上司に話せば、後に希望が叶うことは多々あるというのに。



 新入社員の魔の教育期間は、まず初めに工場の『製造部』での研修から始まる。

 プレス課・ボデー課・塗装課・組み立て課・検査課……など、配属される場所によっても仕事内容が全然違う。多分今年の新入社員は組立課だったはず。


 有名大学卒業! とかそんなこと関係ない。いろんな職場で汗水流して頑張って働いている人がいるからこその本社の仕事なのである。その人たちの大変さを、また実際どのようにして自動車が製造されて販売されるのか、その過程を身を以て知っておく必要があるし、工場で製造された車が、どのようにして販売され、お客様のところへいくのか、という流れを知っておく必要がある、との会社の方針だろう。


 しかしこの時期の工場内は、いくら冷房が効いているとはいえ、ロボットやら機械やらがやたらと多いのでかなり蒸し暑い。私も先日仕事上の用事で検査課まで行ったが、工場に入る前に『ヘルメット』を着用し(この時点で既に暑い)、一歩足を踏み入れただけで、ムッとした熱気が身体にまとわりついてきたのを覚えている。

 その中での仕事はかなり体力も消耗するだろうし、大変だろうと思う。


 今年の新入社員の研修先として決定している『製造部・組立課』通称『組立』は、エンジン、タイヤ、シート、ハンドルなど、車を動かせるようにする部品を組み立てる場所。

 フロントガラス、シートなど重量のあるものはロボットによって定位置に配置され、その後、人の手によって組み付けられる。その全てはベルトコンベアーに乗せられたボデーが、自分の担当の場所を通り過ぎるまでに迅速に行わなければならない。


 ああ、疲れたと休憩時間以外に一休みしている余裕などないのだ。

 毎日その仕事に従事していて慣れている人でも、夏はかなりキツいらしい。慣れない新入社員には過酷な研修となるだろう。


 私には、ただ「がんばれ」と声をかけることしかできない。



お読み下さりありがとうございました。


次話「7月12日(木)それが理由?」もよろしくお願いします!

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