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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第4章】 転勤決定
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7月12日(木) バス停にて

昨日の出来事がウソのように感じられるくらい、いつもと同じ朝。

いつものようにいつもの如く、1日が始まる。

 翌日、何事もなかったかのように同じ時間に目覚め、身支度を整え会社に向かう。


 今年の梅雨明けが早かったせいか、例年ならまだ雨に悩まされているこの時期も、もう既に真夏のような暑さだ。家から駅まで歩く下りの坂道も、まだ朝だというのに照りつける日差しで少し汗ばむほどだ。


 小さめのハンカチタオルで首筋の汗を押さえつつ、ホームで電車の到着を待つ。

 太陽の暑さと、人の熱気、半屋外なホームという場所のせいか、ジッとしていてもなんともいえない蒸し暑さに襲われる。


 電車が到着し、なだれ込むように冷房の効いた車内に身をやると、一瞬ひんやりとした涼しさを味わうことができ、ホッとしたのもつかの間、すぐに満員電車の洗礼を浴び、熱気と湿度の海に浸される。


 数分間ゆらり揺られた後、やっとのことで解放され、あとは会社まで20分歩くかバスに揺られて10分か悩むところだ。


 気候の良い春や秋なら、景色を楽しみながらのんびり朝の散歩をするのもいいが、今朝の暑さで20分も歩く元気もない。今日は迷わずバスに乗ることにした。


 バス停で待っている人達は、面識はなくても殆どが同じ会社の人達だろう。この暑さで、もうみんなぐったりしているように見える。私も右に同じで、いくら屋根付きのバス停でもこの日差しは防ぐことはできない。

 額の汗を押さえる。


「おはよう」


 ん? このバス停で今まで知り合いには会ったことがない。私への挨拶じゃないよね。

 と、後からかけられた声に特に反応することもなく、じわじわと吹き出してくる汗と格闘していると、また同じ方向から声がした。


海彩みいちゃん、おはよう」


 え? 名前を呼ばれたからには、私のことであるのは間違いない。振り返って声の主を確認した。

 

「あ、おはよう。あれ、浩ちゃん車通勤じゃないの?」


 そう、彼は龍也くんの職場に仮配属されている、今年の新入社員のイケメンくんだ。


「来週から新入社員研修と称した、魔の教育期間に入るんだ。今週はそのための研修」


「おお、それはそれは。大変だね」


「やっぱキツいよなぁ。先輩達がみんなして脅かすんだよ」


「かなり過酷らしいよ。研修期間に辞めちゃう人もいるくらいだから」


「そっかぁ」


「いつもその部署で仕事をして慣れている人たちでも、夏はキツいらしいからね」


「来週からなんだよね。朝は早くなるし。慣れるまでは電車通勤にしようかなと思って」


「それがいいよ。疲れた身体での運転はやめておいた方がいいからね」


 うなだれている姿も絵になるイケメン浩ちゃん。


 新入社員は、入社後約1週間の社会人としての心得や、基本的な接遇マナー、会社の概要、基本方針、企業理念など必要最低限の研修を受けて、各部署に仮配属される。


 そこで日常業務を覚え、3ヶ月経った頃に、その仮配属先に所属した状態で、いろんな部署の研修に入る。

 どこの部署に配属されたとしても、自動車メーカーに勤めているのだから、自動車の出来上がるまでに、どんな工程があるのか知っておくべきでもある。


 自動車メーカー。本社のある本社工場。

 当然その工場での研修もあるわけだが。



お読み下さりありがとうございました。


次話「7月12日(木) 新入社員研修とは」は、少し自動車メーカーの仕事についてのお話をします。


よろしくお願いします!


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