7月5日(木) 前線通過(1)
楽しかった日曜日のバーベキューから4日も経ったなんて。
7月5日木曜日。
低気圧と活発な前線の通過にともない、昨夜から激しい雨が降っている。楽しかった日曜日のバーベキューから4日も経ったなんて。
相変わらずの忙しい毎日。龍也くんも私も仕事に追われてゆっくりと話す時間もない。
たまに社内で見かけるが、私たちが付き合っていることを知っているのは、彼の職場のあのバーベキューに集まったメンバーのみだ。その上みんな会社では名字で呼び合っているので、他の社員と同じ。
当然すれ違いざまに挨拶は交わすが、他のメンバーとは普通に冗談や雑談なんかもするくせに、会社にいると、龍也くんとはなんかぎこちない感じになってしまう。これもそのうちに慣れるのだろうか。
今日はあいにくの雨。いつもは明るく感じるオフィスの照明も、心なしか寂しげに感じる。
昼休み、食後のコーヒーを自販機に買いに行く。アイスコーヒー、ブラック。
紙コップにコーヒーが注がれるまで約1分。ジーッとその様子を見守っていた。
「海彩ちゃん」
ボーッとしていた私は声の主の方に振り返った。
「あ、龍也くん」
「日曜日はお疲れ」
「うん」
「気を使わせちゃったかな?」
「初めは少し緊張したけど、みんないい人ばっかで、凄く楽しかった。仲良しさん達に紹介してくれてありがとね」
「おう」
少し照れた感じの龍也くんも、なんだか可愛い。……なんて。
「今日早く終われそうか?」
「うん、月初のバタバタも落ちついたし、今日は定時で終われそう。大雨だしね」
「そうだな。送っていくよ」
「ラッキー。雨に濡れなくてすむから、助かったよ」
「じゃ、定時後に」
「うん、後でね」
定時後、彼は私が少しでも雨に濡れないようにと、SUVを社員駐車場から会社の正門横につけてくれた。着いたよと電話がかかり、傘をさして会社を出る。本社1階の出入り口を出て正門まで走る。門のところで速度をゆるめ、警備をしている守衛に軽く会釈をして正門を出た。
左右を見回すと、停車中の車のハザードが2回点滅する。龍也くんの車まで急ぐ。
「お疲れー」
「お疲れさま」
私が車に乗り込むとかるく挨拶を交わし、龍也くんは車を出す。
「すごい雨だね」
「この雨の中、電車と徒歩で帰るのは無謀だな」
「ほんと助かったよ。ありがとう」
「どういたしまして」
土砂降りの雨に、龍也くんはいつもより慎重に運転しているようだ。しばらくしてより一層雨脚が強まった。
近くの公園の駐車場に一時避難的に車を止める。
叩きつけるような雨にフロントガラスが悲鳴を上げて、窓に流れ落ちる雨はまるで瀧のようだ。
ガラスの向こうは何も見えない。
少しの沈黙の後……。
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