表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第3章】 動揺
32/168

7月5日(木) 前線通過(1)

楽しかった日曜日のバーベキューから4日も経ったなんて。

 7月5日木曜日。

 低気圧と活発な前線の通過にともない、昨夜から激しい雨が降っている。楽しかった日曜日のバーベキューから4日も経ったなんて。

 相変わらずの忙しい毎日。龍也くんも私も仕事に追われてゆっくりと話す時間もない。

 たまに社内で見かけるが、私たちが付き合っていることを知っているのは、彼の職場のあのバーベキューに集まったメンバーのみだ。その上みんな会社では名字で呼び合っているので、他の社員と同じ。


 当然すれ違いざまに挨拶は交わすが、他のメンバーとは普通に冗談や雑談なんかもするくせに、会社にいると、龍也くんとはなんかぎこちない感じになってしまう。これもそのうちに慣れるのだろうか。


 今日はあいにくの雨。いつもは明るく感じるオフィスの照明も、心なしか寂しげに感じる。


 昼休み、食後のコーヒーを自販機に買いに行く。アイスコーヒー、ブラック。

 紙コップにコーヒーが注がれるまで約1分。ジーッとその様子を見守っていた。


海彩みいちゃん」


 ボーッとしていた私は声の主の方に振り返った。


「あ、龍也たつやくん」


「日曜日はお疲れ」


「うん」


「気を使わせちゃったかな?」


「初めは少し緊張したけど、みんないい人ばっかで、凄く楽しかった。仲良しさん達に紹介してくれてありがとね」


「おう」


 少し照れた感じの龍也くんも、なんだか可愛い。……なんて。


「今日早く終われそうか?」


「うん、月初のバタバタも落ちついたし、今日は定時で終われそう。大雨だしね」


「そうだな。送っていくよ」


「ラッキー。雨に濡れなくてすむから、助かったよ」


「じゃ、定時後に」


「うん、後でね」






 定時後、彼は私が少しでも雨に濡れないようにと、SUVを社員駐車場から会社の正門横につけてくれた。着いたよと電話がかかり、傘をさして会社を出る。本社1階の出入り口を出て正門まで走る。門のところで速度をゆるめ、警備をしている守衛に軽く会釈をして正門を出た。


 左右を見回すと、停車中の車のハザードが2回点滅する。龍也くんの車まで急ぐ。


「お疲れー」


「お疲れさま」


 私が車に乗り込むとかるく挨拶を交わし、龍也くんは車を出す。


「すごい雨だね」


「この雨の中、電車と徒歩で帰るのは無謀だな」


「ほんと助かったよ。ありがとう」


「どういたしまして」


 土砂降りの雨に、龍也くんはいつもより慎重に運転しているようだ。しばらくしてより一層雨脚が強まった。


 近くの公園の駐車場に一時避難的に車を止める。


 叩きつけるような雨にフロントガラスが悲鳴を上げて、窓に流れ落ちる雨はまるで瀧のようだ。

 ガラスの向こうは何も見えない。


 少しの沈黙の後……。



お読み下さりありがとうございます。


次話「7月5日(木) 前線通過(2)」もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ