初デート(5)
あ、あれっ。
ビックリしたのは私だけじゃなかったんだ。
心なしか龍也くんのほっぺがほんのり桃色感からの「間接キッス」だなんて。
彼が全部口にだしてしまうのを聞くのは、恥ずかしくって、ビックリして、思わず咳き込んでしまったけれど。
優しい彼は、とっさに背中をさすってくれたけど。
あれ?
びっくりしたのは私だけじゃないんだ。だって、龍也くんが手に持っていたアイスチョコレート、地面に転がっているもの。
「あーあ、もったいないねぇ」
「い、いや、びっくりして」
2人で顔を見合わせて大笑いしながら、そのアイスチョコレートの入ったカップをゴミ箱に捨てに行った。
振り返るともう西の空はオレンジに染まっている。
海辺まで歩いて夕陽を眺めて……。
とここで、また私はひとりヒロインモード。
イメージは風に吹かれる大きいつばの帽子をそっと片手で押さえながら、海に沈み行く大きなオレンジを眺め、1人海辺に佇む。
とそこへ……。
「めっちゃ綺麗だなぁ」
あ、ロマンチックムードが……。
「そうだね、夕陽と海がだんだん仲良くなっていくね」
ロマンチックムードが……。
「上手いこと言うなぁ」
やっぱ、楽しい方がいいよね。
それから2人で、太陽が空に『おやすみ』と告げて消えてゆくのを見送った。
たそがれ時から小夜に変わるころ、海に架かる大きな橋は煌めく彩りに溢れていた。
幻想的な世界が2人を包み込んでいる。
「わあ、綺麗!」
「本当に」
瞬く光りに色とりどりの輝き。
見つめ合う瞳とひとみ。
お互いの頬の色が、イルミネーションの光とともに変化する。
もちろん、お互いの瞳にはお互いの……。
「あのさあ」
あ、また私のヒロインモードが……。
「ん、なに?」
「あのさぁ」
「だから、なに?」
「オレ、海彩ちゃんと知り合ってまだひと月だし、今日が初デートなんだけど」
「うん」
「やっぱオレ、海彩ちゃんのことが好きだよ」
「え、うん」
どうしたの? 急にそんなこと言うなんて。なんか緊張しちゃうじゃない。
「本当に、海彩ちゃんに出逢えてよかったって思う」
「うん」
「大好きだよ」
「知ってる」
「これからも、ずっとオレの傍にいてくれる?」
「どーしよっかなぁ」
ちょっと照れもあるけど、からかってみたくなった私。
「え、そんなこと言う?」
「ふふふ、言うよ」
「好きだって言ってるんだよ」
「まだ言う?」
「何度だって言うよ。海彩ちゃんもオレのことを好きだって言ってくれるまで」
「じゃあ、言わなーい」
「えー、それはないよ!」
ふふふ。
だって何度だって言ってほしいんだもん。
そう、何度だって聞きたい。
そんな素敵な言葉、何度だって聞きたいよーー!
お読み下さりありがとうございました。
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