初デート(3)
海辺のシーフードレストラン。
お昼には少し早い時間のシーフードレストラン。
サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフを思わせるような看板。ならば名物のクラムチャウダーもあるのだろうか。
海辺のレストランらしく、爽やかな白と青を基調にした建物。営業が始まったばかりでまだ混雑する前。入り口で案内を待つ。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
彼が「ふたり」と答えると、窓際の海が見える特等席に案内された。
一面に広がるオーシャンビュー。なんて素敵な眺めなの、って見とれていたいけれども、カップルだからか隣り合わせに座る席なんて。なんだか恥ずかしい。
車とかならなんともないけれど、レストランで隣同士ってちょっとハードルが高い気がする。
それを初デートで軽く飛び越えちゃうなんて。もうびっくり。
やっぱり恥ずかしい。
ブラウスの左の半袖が、彼のシャツ右側の半袖に触れるか触れないかの微妙な距離感。
ここでもやっぱりヒロインな私。目の前には碧い海。遥か水平線と繋がった空。窓からは心地良い風。
そこへ2人の間に割り込むように差し出されたメニューとお水。
「ご注文の方が決まりましたらお呼び下さい」
総務の私には言葉使いが気になる。『ご注文の方』ってなに? ご注文じゃない方もあるの? ……なんて。
少しぎこちない感じでメニューを覗き込む2人。
「わあ、おいしそうだね」
「どれにしよっかなぁ」
「じゃあ、私はシーフードドリアとジンジャーエールで」
「オレは和風ハンバーグで。あとアイスコーヒーにしよっかな」
シーフードレストランで、何故にハンバーグ?
「は? シーフードレストランだよ。何故に?」
「オレはハンバーグが食べたいの~」
そう言って嬉しそうに笑う顔は、なんだか少年っぽい。好印象。
「あと、折角だからクラムチャウダーも飲みたいよね」
「おお、いいね。スープは胃に優しいからな」
なんだそれ、なんて言いながらまたいつもの調子がでてきたみたい。
そんなこんなで楽しいひとときを過ごしてお店を後にした。
「さあ、行こうか」
「どこに?」
「ドライブ!」
それから私達はまた西に向かって走り出した。午後の日差しは強く、エアコンを入れても車内はすぐには冷えない。
音楽でも聴こうかとカーオーディオのスイッチを入れた。
あ、この曲。
私の好きな曲だ。
♪ 溢れるほどのこの想い
言葉にするには照れくさいけど
このまま何も言わないまま
時間が過ぎてしまうのが
とても切ないから ♪
大好きな曲。
「この曲好きなんだよな」
え……。やっぱり気が合う。
「私も」
そうして私達は、しばらく大好きな曲を聴いていた。
お読み下さりありがとうございました。
作中にでてくる『♪』で括られた『詩』は、オリジナル作品です。
次話もよろしくお願いします!




