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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第2章】 はじまり
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告白(1)

2人が付き合いだした、始まりのお話です。

 5度の偶然のあと、2人でよく出かけるようになった。あの和食のお店で会席料理をいただいた後も、会社の帰りに食事をしたり休日に待ち合わせたり。お互いに少しは近い存在になりつつあった6月のある日。


 その日は梅雨時ということもあり、朝からあいにくの空模様。まだ梅雨入りは発表されていないが、この時期は雨が多い。

 ああ、こんな雨の日のお出かけは足元も悪く、パンプスが濡れてしまうとか、湿気で髪の毛のまとまりが悪く広がってしまうとか、前髪が……などと考えながら身支度を整えていた。


 お気に入りのピンクの花模様の傘をさして、待ち合わせ場所に向かう。家からほど近い公園の横に彼は時間より早く来ていつも私を待っていてくれる。車だから音楽でも聴きながら待てるし、私を待たせるのが嫌だと早めに家を出て待つようにしてくれているらしい。


 時間にルーズな人は何に対してもルーズだと誰かが言っていたが、そういう面では彼はちゃんとしている。なんでも、待たされるより待たせる方が嫌なんだとか。

 そしていつの間にか、自室の窓から見えるその公園に彼の車を確認してから家を出る、というのが暗黙の了解となっていた。


 いつものように彼の車の後ろ姿に向かって歩いて行くと、運転席側のサイドミラー越しの彼と目が合う。サイドミラーに映る彼に手を振って助手席側に向かう。傘を閉じ水気を払い、後部座席の足元に置く。濡れないように素早く助手席に乗り込むと、いつもの笑顔で迎えてくれた。


「おはよう」


「おはよう」


「今日はどこ行こっか」


「そうだね。あいにくの雨だしね。屋内で楽しめるところがいいんじゃない?」


 まあ、こんな日に遊園地に行こうという人もいないだろうが。


「じゃあ、映画でも観に行くか」


「そうだね。今何かいいのやってる?」


 とりあえず映画館の入っている大型のショッピングモールに行くことにした。

 土曜日ということもあり、朝から駐車場に入る車で渋滞している。30分ほど並んでようやく入庫することができた。立体駐車場で店舗とつながっているので、雨に濡れる心配もない。


 私達は、まず映画館へと向かい上映中の映画一覧を見る。あれやこれやと話しながら、結局洋画のラブストーリーを観ることにした。午後からの上映時間で、最後列中央の座席チケットを2枚購入し、まずは昼食を摂ることにした。


 いろいろなお店が入っているレストラン街は、どこも美味しそうで目移りしたが、結局は軽くお蕎麦をいただくことに。蒸し暑いこの時期にはちょうどよかった。


 音を立ててすするのが一般的なお蕎麦の食べ方だと思うが、私はそれができなくて。彼が美味しそうな音を立てて一気に口に入れる。私もそういう食べ方がしたいのだが、ズルズルではなく、ちゅるちゅるという感じ。


「美味しそうに食べるね」


 私がそう言うと、「美味しいからね」と彼は微笑む。


 ちゅるちゅるとすする私。それでも美味しい。

 ズルズルと音を立てて食べるのは案外難しい。あまりたくさんお箸でつかむと口の中がいっぱいになってしまうし、啜る途中でむせそうになる。だから少ない本数で食べるのだが、それだとちゅるちゅるになってしまう。

 


 食事も終わり、そろそろ映画鑑賞の時間。

 ポップコーンなども売ってはいるが、私達は食べながらではなく、落ち着いてゆっくりと映画を楽しみたい派なので、飲み物だけを買っていざ客席へ。

 

『切ないラブストーリーに、あなたの心が揺さぶられる』ということだが、泣いちゃうのかな?

 涙腺の弱い私は、とりあえずハンカチを用意した。

 さあ、いよいよ切ないラブストーリーが始まる。



お読み下さりありがとうございました。


次話「告白(2)」もよろしくお願いします!

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