妙なドキドキ
いよいよ会席料理のスタート!
美味しそうに食べる龍也くんの右手に目をやると……!
合格! 綺麗な持ち方をしていて、文句のつけようがない。
きっとご両親がキチンと育てられたのだろう。
よかった。安心した。
それからは私達の会話がもっともっと弾んだのは言うまでもない。
会席料理は一品ずつ運ばれてくるので、必然的に食事の時間は長くなる。
運ばれてきたお料理の見た目に感心し、これは何かな? なんて言いながら一口食べて、味についていろいろ言い合ったり。
しかも次々に運ばれてくるわけではなく、ひと品ひと品時間をおいて運ばれてくる。
その間は、嫌でも話をするしかないわけで。って嫌なわけはない。
冗談交じりで会話も弾む。
しかし楽しい時間はあっという間に感じられ、いよいよ最後のデザート。
最後は抹茶のアイスクリームに煎茶で締められ、本当に美味しくいただいた。
「ああ、おいしかった。本当にこのお店はいいところだね」
「そう言ってもらえると来た甲斐があったよ」
「もうおなかいっぱい。調子にのって食べ過ぎたかな。太っちゃうね」
笑いながら言った言葉に、彼の意外な反応が返ってきた。
「もう食べられない、とか言って残すよりも全部食べてくれる人の方が、オレは好きだな」
え、どうして?
どうしてドキドキしてるんだろう。
「そうだよね。だされたものは残さずに食べなきゃね」
なんか、なに言ってんだか。
妙なドキドキとともにお店を後にした。
「今日はごちそうさまでした。同期だし、割り勘でよかったのに」
「いやいや、オレが誘ったからご馳走させてほしかっただけ」
「じゃ、遠慮なく」
その後自宅近くまで送ってくれた。流石に自宅の前に車でつけることはしない。
その辺も常識的だ。
「どうもありがとう」
「こちらこそ夕食に付き合ってくれてありがとう。楽しかったよ」
「私も。それじゃ、おやすみなさい」
「おやすみ」
そう言って車を降り、彼のSUVを見えなくなるまで見送った。
『普通な感じの同期くん』
彼の名前は『村上龍也くん』
たつやくん……か。
お読み下さりありがとうございました。
次話もよろしくお願いします!




