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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第1章】 お互いの気持ち
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一抹の不安

『普通な感じの同期くん』まだ名前は知らない。

 そして数日後には5度目の偶然。

 その日は定時で退社したのだが、忘れ物をして18時頃に会社に引き返した。本社工場の正門から入るわけだが、まずゲートにいる守衛に社員証を見せて本人確認をしてから中に入る。朝出社するときなどは、ゲートのある場所に社員証をタッチするだけでOKだが、一度退社すると再度社内に入る際は、守衛を通さなければならないのだ。


 もちろん、出入りの業者さんやお客様なども、正門の守衛のところで名前や会社名、社内での行き先や訪ねる理由などを記帳し、出入り許可証、確認用紙を受け取り、やっと門の中に入れる。

 その後、許可証を首から下げ、訪ねて行った相手先に確認印を押印してもらい、帰り際に守衛に許可証とともに返却するというルールだ。



 ロッカールームに忘れ物を取りに戻ってまた外に出ようとした時、5度目の『偶然にもほどがある』が。

『普通な感じの同期くん』が前から歩いて来るではないか!


 ここまでくれば、ビックリというより、ちょっと嬉しい気がする。

『普通な感じの同期くん』も、こちらに気づき、話しかけてきた。


「おう、お疲れ」


「お疲れ様です」


 そのまま通り過ぎようとしたのに。


「あ、ご飯行く?」


「え?」


「オレも今日はもう帰れるから」


「いや、でも」


「ん、どした?」


「どしたって……。まだあまり知らない方と……」


「はあ? 何を今更」


 そう言って『普通な感じの同期くん』は豪快に笑う。


「え、でも」


「1回社員食堂で食事したじゃん。オレは結構仲良くなったつもりだけど?」


「まあ、それはそうですけど」


 確かに。始めて会った新入社員歓迎ボウリング大会でも、結構話が弾んだし、楽しい人だなっていう印象。それから4度の偶然。4度目は社内ってこともあって、何の躊躇ためらいもなく一緒に食事したけど。いざ2人きりで社外で食事となると、少し尻込みする。


 私はいつもそう。なかなか一歩が踏み出せない。


「あれ、気ぃ使ってる?」


「そういうわけじゃ……」


「じゃ、行こ! はい決まり~」


 いやいやいや、結構強引な彼。

 自然な感じで手を引っ張っていかれたけど、なんだろう。妙にドキドキするのは。

 どうして?


「オレの車さぁ、トラックだから。乗り心地はあんまよくないかも」


「へえ、そうなんだぁ」


 ん? トラックって……。


 なんか凄い大きなディーゼル車を思い浮かべるんですけど!?

 それは通勤車ですか?

 ってか、女子を食事に誘うのに『トラック』って。


 一抹の不安が残るまま社員専用駐車場まで歩いて行った。


 まだ彼の名前は知らない。


『普通な感じの同期くん』



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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