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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第1章】 お互いの気持ち
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『普通な感じの同期くん』 

あの3度の『偶然にもほどがある』のあとも、2度の偶然があった。

4度目の偶然は……。


 4度目の偶然。


 『普通な感じの同期くん』に傘を借りた次の日。彼の名前も知らないし、どこで誰に返せばいいのかも解らなかったけれど、とりあえず晴れのなか傘を持って出社した。

 更衣室のロッカーに傘を置いて、いつものように仕事を進める。


 お昼休みになったけど、仕事のきりがいいところまで済ませて少し遅めに社員食堂に向かう。


 社員食堂はカフェテリア方式で、食堂の入り口に『本日のメニュー』が掲示してある。そして裏にICチップが仕込まれているトレーに、自分の食べたいものをのせながら進んでゆく。


 最終的にトレーを精算機にのせると、自動的に計算され金額が表示される。

 それを確認して社員証をかざすと、次月の給与より自動で引き落としをされるシステム。


 私はミートソーススパゲッティとスープにサラダをチョイスした。


 精算を終え、空いているテーブルを探す。

 すると奥の方で誰かが私に手を振っているではないか。誰だろう。

 近づいてみるとそこには、『普通な感じの同期くん』が。

 私は軽く会釈をした。すると彼は満面の笑みとともに話しかけてくる。


「今から昼食? 一緒にどう?」


「あ、昨日はどうもありがとう。お陰で助かったわ。じゃ、お言葉に甘えて」


 そう言って彼の向かいの席に座る。


「いえいえ、どういたしまして」


「あんな大雨の中、大丈夫だった?」


「ああ、平気平気。駐車場まですぐだったから、そんなに濡れなかったし」


 うそばっか。

 傘を私に手渡したあと本社を出て行って、すぐずぶ濡れになっていたくせに。私に気を使わせないように平気だと言う。

 優しい人だな。


 彼の持ち前の明るさで、話が尽きることはなかった。


 そろそろ休憩も終わる頃、私は昨日借りた傘をどうしても返したくて。


「あ、ちょっとだけ待っててくれる?」


 そう言ってロッカーまで傘を取りに戻った。


 急いで食堂に帰ってくると、もう12時55分。13時からの仕事の準備をしなければ。

 挨拶もそうそうに、傘を貸してくれたことへの御礼を言って、オフィスに戻った。


 さあ、午後からも仕事頑張るぞ! と気合いを入れた時に、ふと気づいたのだ。


『普通な感じの同期くん』

 身長は160センチの私より15センチくらいは高い。髪は短め、少し茶色がかった軽めのウェーブ。

 肩幅はがっちりしているが、筋骨隆々としているわけでもない。


『普通な感じの同期くん』

 名前なんて聞いてない。


『普通な感じの同期くん』

 他になんて呼べば?



お読み下さりありがとうございます。


次話もよろしくお願いします!

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