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HOPEs  作者: 赤猿
57/100

第57話 明日


 ホルスと俺は国会議事堂の塀の外に降り立った。俺達がぶっ壊した部分の塀だけ色が少し違うのが分かる。

 



「ありがとうなホルス」


「大丈夫だ。それより本当に国会議事堂にいるのか? こんな時間に」


「いや~でもここ以外知らねぇしなぁ……」



 辺りは暗く人の気配は無い。スマホを確認すると既に日付が変わっていた。



「とりあえず入ってみようぜ」


「あぁ」


「お二人共」


「っ!……あんたは?」



 声の方へと目線を変えると、きっちりした身なりの男が立っていた。



「こちらへ、案内致します」


「……」


 

 そう言うと男は門を開けて歩き出す。

 俺とホルスは少し互いの目を見てその男へと着いていった。



「……なぁ、お前は幻じゃあねぇよな?」


「ん? どういう事でしょうか?」


「いや、何でも無い。忘れてくれ」



 俺達は男と共に議事堂内部に入ると、今度は例の落とし穴では無く綺麗な扉の前へと通された。



「中で総理がお待ちです。どうぞ」


「……」



 俺はノックしようと手を伸ばす。



 

 その瞬間扉を突き破り、大きな爬虫類のような口が目の前に現れた。


「っ!?」



 何とか回避した俺とホルスはすぐに戦闘体制を取り、視線を穴の空いた扉へと戻す。



「何だっ!」


「落ち着けアレス! あの口……ワニか?」




「ご名答!!」


 依然閉まった扉の奥で誰かがそう言う。すると扉から氷が伝播するように広がり、俺とホルスの足を凍り付かせた。



「これは……嵌められたな」


「は? でも壁さんは……」




「ホルスさんが正しいですよ、アレスさん」


「……うぅ……ほんとにやるの?」


「でもなんか弱くね? 正直期待外れだわー!」


 

 ゆっくりと開く扉から漏れ出る声。


 やがて完全に扉が開くと2人の男と1人の女がこちらへと向かって来る。




「ちょっと、口悪いよ!」


 全身に霜が張った厚着の女。



「…………」


 右腕が巨大化した怯えている男。



「でも事実っしょ?」


 右腕がワニの頭部に変形したチャラい男。

 随分と個性的な3人だが全員に共通しているのは、若さと銀色のスーツを身に纏っている事だろうか。



 

「テメェらは一体……?」



「ごめんなさいアレスさん。私達の無礼をどうかお許し下さい。……でも確かにちょっと期待外れ……かも」




「……ホルス」


「……あぁ」





「んじゃ、とっとと俺がやっちゃうわ……ってアレ? 2人は?」


‐先程までアレスとホルスがいたはずの場所に2人の姿は無かった。‐



「っ何で!? さっきまで確かにそこで凍ってたじゃん!」


「……まずいな。2人とーー」



‐そこまで言いかけた大柄な男がひとりでに倒れる。‐



「え、ちょっとテュール?」


「何やってんだこんなタイミングで!? 早く周囲の警戒を……」



「お前ら……」


「「!!!」」



‐残った2人の背後に拳骨が迫る。‐



「まずっーー」



‐その拳は2人の頭を確実に撃ち抜いた。‐




「あんま舐めてんじゃねぇぞ。

…………で、コイツら何なんですか? 総理」



「……はは、流石に強いな」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 国会議事堂の一室。そこらに置かれた家具から如何にこの部屋が格式高いかが分かる。


 そんな部屋で先の3人と俺達、総理が向かい合う形で座っていた。




「えっとつまり……お前らは……」



「そう! ファンなんです!」


 氷の神力者、ペルセポネがそう言い放った。



「俺達アンタらの事が好きで戦ってみたくって……だから煽るような態度取っちまって、ホント悪かったっす!」


「…………すみません」



「ま、そう言う事だ」



「いや理由になって無いですよ。何でこんな事を?」


「コイツらが昨日ここに訪ねて来てな。何でも『HOPEsの助けになりたい』んだと。まぁテストも兼ねて戦ってもらった訳だ」


「俺達の助けに?」



「そうなんっすよ!」


「私達3人、みんなHOPEsに助けられたんです!」



「お、おぉ、そうか。総理、このタイミングってじゃあ……」


「あぁ。ゼウスの一派である可能性も捨てきれなかった為に会わせるかどうかは悩んでいたんだが、ハデスの件を考慮してな」




「うーん……どうするホルス」


「……助けに、ってのは具体的にはどういった事を?」



「君達が普段行なっているパトロールを手伝ってもらおうと考えている。先程分かった通り、この3人は戦えない事は無いがHOPEs程強くも無いからな」



「……?」


「どうしたアレス君? 何か言いたげだが」



「いや、コイツら強いっすけど……?」



「? でも君達に完膚無きまでにやられていたじゃないか」


「あぁちょっと言い方間違えました。皆強い神力を持ってるって話です」




 俺は3人を流れる様に見た後、一人一人と目を合わせながら話していく。



「テュールは部位ごとに巨大化が可能。高い攻撃力は勿論、応用もしやすそうだ」


「そ、そうですかね…………」




「次にセベク。体をワニに変形させる力は一見使いづらそうだが、神力を伸ばす事さえ出来ればとんでもない破壊力を出せる」


「神力を伸ばす……バカデカくするとかっすか?」




「まぁそんなとこだ。最後にペルセポネだが、神力の性質上攻撃への転換は難しいかもしれない。だが拘束能力に関して言えばシシガミと同等かそれ以上だ」


「ホントですか!?」



「あぁ。……総理、やっぱコイツらの力は強力です。パトロールだけに留めとくのは勿体ないですよ」



「しかしゼウスの手下である可能性は捨てきれない。重大な任務は任せられないだろう?」


「そりゃ……そうすけど……」

(現にそれでHOPEsは新人募集出来てねぇしな……)



「そもそもパトロールを任せる事も少々不安だがな」


 ホルスからも厳しい指摘が飛び出す。



「うーん……」





「お願いしますっ……!」


 無口なテュールが初めて声を荒げた。



「僕達はさっきも言った通りHOPEsさんに助けられたんです。僕は両親をセベクとペルセポネは自分自身を。だから、力になりたいんです!」





 ホルスはゆっくりと口を開く。


「……ま、僕達で訓練しつつパトロール。強くなったらそれ以上も任せるってのが丸いんじゃ無いか?」


 

「……! ホルスさん…………」



「確かに! それならコイツらの事も知れるし良いかもな。総理もそれで良いですか?」


「私はそれなら構わない。コイツらには安全面を考慮し、訓練とパトロール時以外は議事堂内の一室で過ごしてもらうがな」


「分かりました。ってお前らはそれで良いか?」


「はい! 私達は皆さんの役に立てるのなら何でも大丈夫です!」



「そうか……ちなみに皆何歳なんだ? 勝手にタメくらいかなと思ってたけど」


「いえ、私達みんな21ですよ?」


「年上かよ!?」



「へへへ……実は」



「……俺は敬語にした方が良いのか?」


「良いですよ! 私達ただのファンですし」




「……あ! そういやさ、俺達のチーム名言った方が良いんじゃね?」


「確かに!」



 3人は小さく丸になり作戦会議を始めた。



「ねぇねぇ誰が言う?」


「やっぱテュールじゃね? さっきカッコよかったし!」


「えぇ…………僕……?」


「良いじゃん! 言っちゃえよ!」


「えぇ……」

 


 どうやら方針が決まったのだろうか、テュールがひとり前に出て深呼吸をし口を開く。



「ぼ、僕達のチーム名は…………トゥ、トゥトゥモ……TOMORROWsトゥモローズです……っ!」



「TOMORROWsか……良い名前だな」


「そうっすよね! 皆の明日を守るTOMORROWs! HOPEsリスペクトっす!」


「あぁ。それじゃあ3人共、これからよろしくな」



「「「はいっ!!!」」」

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