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HOPEs  作者: 赤猿
41/100

第41話 リスク

「遅かったな」


「すまん」


 アレスと男が窓ごしに会話をする。



「今週は?」


「災害救助21件、神力犯罪者確保2件、先日の事件の救助12件だ」



「そうか、お疲れさん。んじゃアレ貰えるか?」



 アレスがそう言うと窓が開き、男が室内へと入って来た。



「アレス、昨日の怪我は大丈夫か?」


「あぁ大丈夫だ。そういうお前は大丈夫か? 坂東ばんどう


「問題ない」



 坂東は懐からSDカードをいくつも取り出しアレスに手渡す。このSDカードには坂東の1週間の行動を記録した映像データが入っており、これを確認するのもアレスの仕事であった。



「そういやアレス、先日事件現場に向かう途中で検挙されていない神力犯罪者に出くわしたんだ」


「何? どんな奴だ?」


「水を操る神力者でな、大きな水の塊を浮かせていたんだ。場所はスクランブル交差点近くの裏道、多分若い女だったと思うが……確信は持てない」


「それで?」


「発見してからすぐに接近し水に触れ、操作を解いたところ逃げられてな。市民救助を優先した」



「なるほど……水か……分かった、ありがとう。それじゃあ解散だ」




 アレスがそう言うと坂東は頷き、窓から飛び出す。それを確認したアレスはベットに寝転んだ。



「うーん……」


(考えることが多いな……ゼウスの事、佐竹さんの事、坂東の話も気になるし……それに、モノホンアレスの話もなぁ……)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


-昨日 アレスの精神世界-



「私は今回、【神力】とあの赤い電流について話に来たのだ」



「赤い電流! やっと来たか!」


「まず大前提だ。アレスの【神力】は電流を己の体に流し、身体能力を向上させる」


「お、おん」

(めっちゃ急に始まるじゃん)




「……普段の黄色い電流、あれを纏った時は【神力】を正しく使えている。それに対し赤い電流、あれはいわゆるオーバーヒートの状態だ」


「オーバーヒート? そんなのしたつもり無いぞ?」


「うむ、【神力】がイメージや感情と大きな関係があるという事はもう知っているな? お前は恐らく、感情の昂りにより無意識のうちに【神力】をオーバーヒートさせていたのだろう」



「じゃあそれを常に出来るように、って事か」



 俺がそう言うとモノホンアレスは何だかバツの悪そうな顔をする。




「……残念ながらそう簡単な話では無くてな。確かに赤い電流はパワーアップとしては強力だ。しかし普段纏っている黄色い電流、アレが本来の限界。つまり【神力】アレスで得られる体はあの赤い電流に耐えられないんだ」


「耐えられない?」



「そうだ。そもそもあの赤い電流の正体は、全身の内出血により電流が赤く染まっただけの物だ。今はまだ大丈夫かもしれんが、これからもその赤い電流を使い続ければやがて体は内側から崩れるだろう」



「な……ま、マジ?」



「残念ながらな……勇斗、悪い事は言わん。赤い電流はもう使うな。それと今お前が構想しているあの技もだ」



「え〜……」


「良いな?」



「……分かったよ」


「うむ。……それと、もう一つ」


「ん?」



「……何があろうと、冷静にな」


「あ? お前それどういう意味だ」


「分からなくても良い。ただ忘れるな。じゃあな」


「いやおい、待てーー」




 そう言いながら俺は瞬きをする。そして目を開けた瞬間世界は光を取り戻し、目の前には俺の瞳をじっと見つめるシシガミの顔があった。




「なぁシシガミ! 今な、俺」


「座禅中だ、アレス」



 シシガミの警策きょうさくが俺の右肩を打ち抜いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「ん……」


(寝てたのか……)



 モノホンアレスの言葉を反芻しているうちに眠ってしまったらしい。俺が目を覚ますと外はすでに暗くなっていた。部屋から出ようとドアを開くと何かに当たる感触がする。



「いっ……たた……」



「アフロ、お前なんでこんなとこにいんだ?」


「アンタを起こしにきたの! 夜ご飯できたから。あ、そうだ! 明々後日って空いてる?」


「明々後日? まぁ空いてるっちゃ空いてるけど……」



「じゃあさ! 那由多ちゃんとホルスと4人で遊園地行かない? 結構前に行ったとこ」


「あーあそこか、いいぞ。行くか!」


「オッケー。じゃ、早くご飯食べよ! 今日はシシガミホルス退院おめでとうパーティーだよ!」



 そう言うとアフロは駆け足でリビングへと向かう。俺はそれを眺めながら平和を噛み締めた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ゼウスは森の中で座禅を組む。冬には合わない薄着にも関わらず、震えはおろか鳥肌さえ立っていなかった。



(何だ……俺は何の為に……この国を落とそうと…………分からん……)


 ゼウスは意識を耳に集中させる。



(何故アイツの言葉でこんなにも心が落ち着かない…………)


 

 水のせせらぎや葉の擦れる音が絶え間なく続く。




 だが、その中に何者かが近づく音が紛れていることにゼウスは気が付いた。すぐにゼウスは立ち上がり臨戦体制を取る。



「誰だッ!?」


 ゼウスがそう言い終えるより先に、正面の木が吹き飛んでくる。

 それを掴んで正面を向き直すとそこには、全身が毛に覆われた狼人間のような生物が立っていた。



「グルルゥ……」


 よく見ればその生物の背面の木々は全て薙ぎ倒されている。



「お前……人間か?」



「グルルゥ……グルァッ!!!」


 謎の生物はゼウスへと飛びつく。ゼウスはすかさずそれを躱し、蹴り上げた。しかしその生物はゼウスの攻撃など意に介さずにゼウスを殴り飛ばす。




「くッ……!」


「グウゥゥ……」


 その生物はゆっくりとゼウスに近づく。



「はぁ……ツイてないな……お互いに」


 ゼウスは右手で指を鳴らす。すると謎の生物に十数個の雷が降り注いだ。




「俺が相手だったのが運の尽きだな………………っ!」


(な……嘘だろ……?)




「グルルゥ…………」


 砂埃の中から謎の生物が現れる。その体は焼けてこそいたが足取りはまるで変わっていなかった。



「……化け物が……」



「……ミツ……ケタ…………」



「……?」




「……ゼウ……ス…………サマ……」


 その生物はそう言うとゼウスの前で跪いた。








登場人物プロフィール


坂東翔太(ばんどう しょうた)

【神力】??? 触れた生物以外の物体の形を半径15mまで変化させる事が出来る

身長176cm

31歳

好きな食べ物 そうめん

HOPEsに属してはいるもののアレス以外の隊員との関わりは無く、公表もされていない。黒のロングコートを愛用している。



佐竹闘士(さたけ とうし)

【神力】セト 非常に高い身体能力とタフネスを得られるが、先代のセトに意識を乗っ取られる危険性がある

身長170cm

22歳

好きな食べ物 カツオ

【神力】の発現から10日程しか経っておらず、その事を知るのは一部の人間のみ。妻と子供との3人暮らし。普段はスーツだが特訓の際は市販のジャージを着用している。


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