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HOPEs  作者: 赤猿
23/100

第23話 もう一人の友


「イヤッフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」



「……お前朝よりテンション高くないか?」


「あ? そんな事無いって! それよりせっかくのスキーだぜ!! もっと楽しめよ!」 



 北海道旅行2日目の午後。俺達はスキーを楽しむ。


 スキーは小3以来だけど……案外やれるもんなんだな。



「別に僕は楽しんでる。でも……ほら」



 ホルスは右を指差す。そちらにはガクブルな女子2人。

 産まれたての小鹿みたいだ。開始前のアフロの自信は一体どこに行ったのだろうか。


 俺達は2人の元と駆け寄る。




「……ゆうとぉ…………むりぃ…………」


 泣いてる那由多もかわいい。



「いいか? スキーはビビらないのが一番大事なんだ。思いっきりやってみな?」

「わー出来たー!」


「早ぇよ!!」



 那由多は昔から物覚えが良かった。きっと才能なんだろうな。



(…………あれ? 那由多さん上手すぎない? 今一回転してなかった???)




「……ホルスぅ…………むりぃ…………」


「頑張れ」


「はぁ!? あんたアレスを見習いなさいよ!」


「顔がムカつく」


「は?」





(ん? なんかホルスとアフロが鬼ごっこしてる。スキー装備で器用だなあいつら。てかアフロも結局滑れたのかよ…………ん? ちょっと待て。)



 俺は左を振り向く。そこには音速爺さんズとスノボ激ウマ坊さん。更に奥には、角を隠すためコックみたいな帽子を被りそり遊びをする不審者がいた。




(……マズい! この中でただ一人、俺だけが上手くも無ければ面白くもない! 中級者手前の一般人だ!)



 その事実に気が付いた俺は一気にゲレンデを滑る。



「那由多!」


「あ、勇斗。ありがと、勇斗のお陰で滑れるようになったよ!」


「そっか、良かった! んじゃ俺にスキーを教えてくれ!」


「???」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 その後両者雪だらけのホルス達と合流し、リフトに乗って上へ向かう。 



「なぁ、お前なんでさっきアフロと喧嘩してたの?」



「…………顔がムカついた」


「ムカついたって……てか部屋の羊羹食った??? あれめちゃくちゃ美味いぞ!」


「本当か。帰ったら食べる」




 他愛もない会話をする俺達の後ろのリフトでは、那由多とアフロがコソコソと何かを話している様子だった。



「那由多ちゃん上手く行った?」


「ん~まぁぼちぼちかな。つい逃げちゃった。アフロちゃんは?」


「それがね! あのバカ『顔がムカつく』って言って来たんだよ!? 女の子に対して!」


「あはは……大変そうだね……」



「まったく、何であいつらはこんな美少女が2人いるのに男同士で楽しそうに話してんのよ」


「まぁ良いんじゃない? 私もアフロちゃんと話すの楽しいし」



「…………那由多ちゃぁん……好きぃ…………」



 俺達が振り向くとそこには、那由多に抱きつき涙を流すアフロがいた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「それじゃあ! 色々あったけど……」



「「「「「カンパーイ!!!」」」」」



 俺達は宴会場で美味そうな料理を囲む。




(どれから食べっかな……あえての米か? いや、やはり肉……待てよ。ここまでしっかりと作られている料理だ。恐らく食べる順序がある。だとすれば前菜からだろうか…………悩むな………………あ、肉無くなった…………)




「…………ほら、勇斗。お肉食べたいんでしょ? 取っといたよ」


「な、那由多ぁ……」



「ハハッ、まるで親子の様だな。……那由多ちゃん。旅行、楽しかったかい?」



「はい!とっても楽しかったです、連れて来てくれてありがとうございました! ハデスさん!」


「そぉれは良かったねぇ。はぁ、明日のひぃるには帰るのかぁ。」



 ポセイドンさんの溜め息にスサノヲが続く。


「仕方無いだろ。ん? そういやハデス、飛行機の時間っていつだ? 夜か?」



「今ポセイドンさんが昼と言ったばかりだろう…………どれ、私は少し飲んだら部屋で休むとしよう。」



(また呑むのか…………あ、そうだ!)



「シシガミ! 聞きたい事あったんだけどさ、お前酔っ払うと会話もロクに出来ねぇから今聞いていいか?」



「…………一応結構歳上だぞ……まぁ質問はいいが」


「お前の【神力】ってさ、木を生やして操るんだろ? じゃあ今日みたいに地面から切り離しても木が動くのは何でなんだ?」



「あぁ、それは『直接操る木』と『部分的に操る木』で違うからだな」



「…………ん?」



「まず、『直接操る木』は私の体の一部のように動かしている。当然意識していない間は動かない。

 そして『部分的に操る木』とは、私の出す木製の動物達の事。行動範囲やパターンをある程度決めるだけで、その他の行動はランダム。まぁ私が触れれば完全に操れるがな」



「へぇー、変なの」



「変なのって……アレスも相当だろう。何故ゼウスの雷が効かなかった? それに、先の戦いでは纏う電気の色が変わったと聞いたぞ」


「まぁな。俺の【神力】は正直全然分かってないからなー。でも最初は使い方すら分かんなかった位だし、マシになった方でしょ」



「まぁ、そもそも未だ【神力】は謎多き存在だからな。分かってない事が多すぎる」


 【神力】……いつか使いこなせる日が来るのだろうか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ホルスー、消すぞー?」


「あぁ」



 俺達は電気を消し、布団に潜る。



「いやー、それにしても楽しかったな」


「お前が楽しめたんならそれは何よりだ」



 ほんとに、いい旅行だったな……




「…………なぁ、坂東の事何だけどさ、俺zzz」


「こいつ布団に入ると10秒しか持たないのか?……ハハ……おやすみ」










 「……ふぁ〜あ……良く寝た…………?」



 俺は暗闇の中で目を覚ます。



(あれ? なんで真っ暗なんだ!? 目が開いていない? どうなってんだこれ!?)




「久しぶりだな」



 聞き覚えのある声が聞こえる。まさかと思いつつ振り返ると、そこには大きな鎧が立っていた。



「モノホンアレス! お前何してたんだよ!」


「来たくなったら来れる訳では無い。そんなに気軽な物では無いのだ」


「じゃあなんか用でもあるのか?」



(てかいま旅行中だぞ。もっとタイミングあったろ。なんか若干腹立ってきた)




「…………まぁ良い。上から言われてな。お前達に知恵を与えに来た」


「知恵? 神話でも聞かせてくれんのか? 俺パス」


「【神力】についてだ」


「!」



(【神力】…………え? 何であの時に言わなかったの?)



「まぁ平たく言えば上から制限をかけられていた」



「……この思考を読まれる感じ、懐かしいな。てか前も言ってたけど上って誰だよ。神様にも序列とかあんの?」


「序列という訳では無い。一人だけ長がいる。まぁ、リーダーの様なものだ」


「ゼウス?」


「ラヴだ」



「……ラヴ?」



 聞いた事も無い神様だ。



「無理もない。貴様達人間の神話には出てこないからな」


「へ~」


「貴様が振ったんだろう! 会話に興味を持て。それに、もう少し私に対して敬意を払え」



「いや、だってさ。あん時ここに2日位いたじゃん。丸2日よ? 俺の中では結構な友達だよ?」



「友達…………? 私と、か?」


「お前が神か人かなんて興味ねぇから。んで、【神力】の話聞かしてくれんだろ? ゆっくりじっくり全部教えてくれ」



「……あぁ、だが全部は不可能だ。ラヴから止められている」


「じゃ言える範囲で」




「よし。今回話すのは【神力】のステージについてだ」


「ステージ? ランクアップ的な?」



「あぁ、その認識でいい。まず貴様らの様な神力者。これが初期状態だ。全員が経験するランク1」


「おん」


「だが、感情と【神力】の練度が一定のラインを超えると一つ上のステージに上がる。それを真神力者(しんしんりょくしゃ)と私達は呼んでいる」



「……言いづらいな」



「知らぬ。真神力者に成れば、身体能力は通常の神力者とは比べ物にならない程に増幅し、肉体はより頑丈になる。

 だが、そもそも真神力者なんてそうそう現れないレアケースだ。まず貴様には無理だろう」 


「あ? てめなん……」



「だが神力者と真神力者の間にはもう一つの段階がある。いや、神力者からの分岐と言った方が正しいか」



(ガン無視……?)



「感情のみが一定、いやそれを遥かに超えたラインに到達すると異神力者(いじんりょくしゃ)となる事がある」



「……神力者ってのはつけなきゃいけないルールなのか?」


「知らん。だが異神……」

「お前俺の話もちょっとは聞けよ!!!」



「知らん、仕返しだ。異神……」


「ちょと待て! 俺も聞きたい事いっぱいあんの! ネーミングセンスは一旦置いといて、条件だよ条件! 実力は分かるけどなんで……」



「それは【神力】そのものの根幹だ」


「思考を読むんじゃねぇ!」




「【神力】はそもそも感情、及び生物の内面と深い関わりがある。【神力】の効果が現れるのは大抵外面。物理的にだ。

 だが現れる【神力】の質や性質、効果、範囲等の大部分は内面によって決まる」



「内面……」



「貴様らも気づいていただろう? 大切なのはイメージ。それは正解に近い。実際の所はそこに感情がプラスされる。感情によって神力は大きく形を変え、時に成長を遂げる」



 成長か……感情ってのは怒りとか悲しみ? 楽しさが振り切れてもいいのか?



「……あ! あの赤いビリビリも!?」


「それに関してはまた後日話す」



(モノホンアレス本当にケチだな)



「…………話さんぞ?」


「ほんっとうにごめんっ!」



「……それと、モノホンアレスという呼び方はよしてくれ。私が本物のアレスという訳では無い」


「え? じゃあ偽物なのか?」


「そもそも本物など存在しない。私は【神力】『アレス』の先代継承者だ」




(……ちょっと待て。頭がイカれてきた)


「まぁ簡潔に言えば、『アレス』とは力の名前であって人名では無いという事だな」


「あーなるほど……?」



「……この話はまた今度だ……よし。先程の続きだな。説明した通り真神力者は純粋なパワーアップだ。だが、異神力者となると話は変わる。

 異神力者は真神力者と同等の強大な力と耐久を得るが、同時に自我と現在の肉体を失うんだ」


「肉体?」



「あぁ。あるものは巨大な龍に。あるものは機械仕掛けの巨人に、あるものは醜いバケモノに。変化の仕方は多種多様だ」


「じゃあ、それは避けた方がいいのか?」


「そういう事だ。そして……」


「ちょっと待って!!!」



 先代アレスは俺の顔を数秒凝視する。いや、顔は見えてないから分からないが、見られてる気がする。




「………………分かった、1から説明する」


「ありがと♡」

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