93 1556年末報告8
93 1556年末報告8
「分かった。しかし、送る文の内容は見させてもらうぞ?そこで問題があれば都度話し合う事でいかがだ?」
外交文書は、言葉一つで同盟にも敵対にも転じる。父の提案は、六角家としての統一した意志を示すための当然の配慮であり、治頼もそれを理解していた。
「はっ、ありがとうございまする。それと、尼子だけでなく若狭武田にも話を通して頂きましょう。あそこは公方様と義理の兄弟関係にございまする。小浜を正式に使わせて頂くためにいかがでございましょうか。尼子領内を通らずとも毛利に向かうことができる様になると思いまする。」
小浜湊を通じて山陰へ抜ける道筋が確保できれば、外交と交易の両面で優位に立てる。若狭武田との縁は、将来的な北陸進出の足掛かりにもなり得る。
若狭はもう数年のうちに内部から崩壊する。朝倉に食われる前にこちらで押さえたい。その為にも若狭武田の事情をさらに事細かに調査する。特に地図が欲しい。
地図はただの紙ではない。地形、街道、湊、関所、村落の配置――それらを把握することで、戦略の幅が広がる。若狭の地勢を読み切ることは、先手を打つための第一歩
「分かった。好きにするといいが、今回は何を考えている?」
「いえ、特には…。時が来たら分かるとだけ。」
治頼の返答は曖昧だが、父にはその裏にある打算が見えている。治頼が何かを企んでいる時の癖を、父は既に見抜いているのだ。
というか打算なしで提案したことがほぼほぼないせいなだろうな。
「はぁ、全くお主と言うやつは。分かった分かった。任せるゆえ、公方様との折衝は任せるぞ。」
公方との折衝は、六角家の顔を外に示す場でもある。治頼に任せるということは、家中の信頼と将来への期待が込められている。
「はっ!!!では、明日以降準備が出来次第向かおうと思いまする。」
「さて、一応これで話したいことは大体終わったが皆からは何かあるか?」
特に手が上がることもない。
「ではこれで今回の評定は終わる。来年以降は3月6月9月12月の4度この様な形での評価を行うつもりだ。用意しておいてくれ。」
「「ははっ!」」
定期的な評定は、軍政と内政の透明性を高める。家臣たちに準備を促すことで、治頼の統治は制度として根を張り始めていた。
皆が退出した後、二人にお願いをしようと少し残ってまつ。
「どうしたのだ治頼、何かあるのか?」
祖父が残った俺を不思議そうに見て話しかけてくる。




