91 1556年末報告6
91 1556年末報告6
「では、実際戦をした所我々は勝ち切ることは出来るのか?」
義賢が軍略方に問いかける。義賢の声には、主君としての責任と父としての不安が混じる。勝てるかではなく、勝ち切れるか。それが問われている。
「それは私から。今の銭兵のうち、当家は治頼様のおかげで1万ほどの足軽鉄砲隊を揃えられまする。その攻撃でどれほど相手を削れるかによりますが、敵がこちらに近づくまで3度撃ちかけることができるとします。そして、鉄砲の命中率が低いことを考え2/3が当たるとしましょう。戦えなくなるほどの傷を負うのはその中でも2〜3割でしょうか。となると5千の兵を倒せまするな。副次効果として敵の戦意を挫いたり戦線を崩す役割でしょうか。」
戦線が崩れれば、敵の指揮系統も乱れる。鉄砲は兵を倒すだけでなく、戦場の空気を変える武器だ。蒲生の言葉に、皆が耳を傾けた。
それに続いて三雲から声が上がる。
「その後は足軽の戦いになりまするな。普通の兵の強さを一として考えまするが、相手の兵は何度も本土で戦を経験していることを考え二.五として考えましょう。本土に残った3万の内1万は精鋭と考えて4.5万の力がありまする。それに対して我々は戦の経験を得る機会は少なかったですが、全員が最低限の基準を突破した訓練された兵です。2.5万全てが2倍の力があると考え5万と考えられまする。」
訓練の質と統率の高さが、戦場での力に直結する。三雲の言葉には、兵の数ではなく「質」で勝つという六角軍の信念が滲んでいた。
「力の上では微妙にこちらの方が有利でございまするな。特に精鋭で無い農兵のところを突き崩し、精鋭兵の箇所を守りきれれば十分に勝機は見えまする。」
水軍の存在は、陸戦の優位を帳消しにする可能性もある。海路からの奇襲や補給線の遮断は、戦局を一変させる要因となる。
「また、治頼様の戦力を考えましたら十分に有利と考えられるかと。しかし、服部殿が仰ったように相手は援軍や水軍がございまする。そこを加味すると厳しいと言わざるおえませぬ。」
義賢があまり残念そうな顔をせず、むしろ満足げな様子を見せて頷いている。満足げな表情の裏には、戦の準備が整いつつあるという確信があるのだろう。義賢は、勝てる戦を選び取る冷静さを持っていた。




