74 決着
74決着
天文24年1555年 7月 六角義賢
北畠がこちらの旗を見て攻勢をやめて交渉に入ってから早半月が経った。最初のうちは北畠も六角なんて知ったことかと軍を進めようとしたが、将軍の使者が来てからは大人しくしている。今は和田と細川が北畠との交渉を纏めようとしてくれているのだが、これが難しいようだ。こちらとしては交渉中に兵を遊ばせていくのも勿体無いので必要最低限の兵以外は全て黒鍬や農兵と入れ替え、後藤但馬守以下文官を呼び寄せ北中部の測量と道の整備をさせている。農地の改革はそろそろバレ始めているので大々的に各地で行なっている。種籾のみこちらが握っていれば問題ない。
「義賢殿、和睦の条件について再度お話ししたいのですがよろしいでしょうか。」
「うむ、勿論だ。よろしく頼むぞ。」
細川藤孝から声がかかったので快く会話に応じる。こちらも譲らない姿勢を固くしていたがそろそろ崩してもいいだろう。元々崩した後の条件の方が本命だ。
「北畠としては長野が六角に吸収されて終わりになることが許せない様で、領土を求めて来ておりまする。どこか妥協できる点はないでしょうか?公方様は伊勢守護を六角様に与える事を考えておりますれば、どうか…。」
もらえるものは貰っておくか。しかし、高く売りつけてやる。
「ふむ、そこまで言われればワシとしても考えないわけには行きませぬな…しかし、公方様にも不便を強いる事になりますぞ?」
細川藤孝が眉を顰めどう言う事だと尋ねてくる。隣の和田もよくわかっていない様だ。まぁ、わからないだろうが。
「岩田川以南の土地は北畠殿にお渡しいたしましょう。しかし、そうなると安濃津を守るために兵をさかなければなりませぬ。そして、それは北畠も同じにございまする。また、陸の上だけでなく水上でも緊張が走るでしょう。そうなれば三好へと派兵するのも遅れるのは道理。それをご承知頂きたい。」
「ううむ…。三好への派兵が遅れるのは困りまする…きっと公方様はお怒りになるでしょうな…。」
ここだ。上手く運べよ。
「そこで、北畠殿に大和守護を与えて北畠殿の目を三好に向けさせぬか?それと同時に我々が頂いた伊勢守護を長野に渡しまする。そうする事で領土を切り渡すことへの不満を抑えたいと思いまする。いかに?」
これならば北畠との敵対を避けながら公方の溜飲も下げられるはずだ。それに共同の敵を持てば否が応でも協力するしかない。三好は強大だ、片手間で相手できる事でもない。




