53比叡山討伐2
53 比叡山討伐2
「巷でも悪逆非道で情欲に耽る比叡山や僧兵の話を聞いていると思いまする。彼らが不穏な動きをしている上に民達からあやつらを放っておくのはいかがなものかと不満が噴出しております。我々六角としても政教分離令を出している以上放っておけずに…。」
言葉尻を窄めてトーンを徐々に落としていくことで残念さを演出する。
「なるほどのぅ…。なれば、我が六角に対して敵対しないようにと手を回そうか?」
義輝が扇子を閉じて、片方の手にパチパチと当てながらこちらの言葉を咀嚼した後に提案してくる。
「いえ、それだと時がかかってしまいまする。ここは公方様の武威や覚悟を示すためにも討伐の命令を頂きたくございまする。民は僧兵の者たちにひどく不満を持っていまする。それを解決したのが公方様の命令によるものとなれば…」
義輝を伺うようにみると大分渋っているようだ。当たり前だがこの時代は仏教が大事にされており、取り分け比叡山は鎮護国家の役目を果たしていると考えられている。そこに手を出すのは革命を起こすほどの決断になるのだ。
「公方様、恐れながら申し上げます。六角が申す事には私も納得できる部分がございます。あくまで、延暦寺を打ち滅ぼすのではなく、その中に巣食う僧兵達のみを処罰させては如何でしょうか?」
10代後半くらいの知的な男がこちらの援護をしてくれていた。
「なるほど!分かった。藤孝がそういうのであればワシも腹を括ろう。悪逆を尽くす僧兵を打ち滅ぼすのだ!」
「はっ!必ずや使命を果たして参ります!」
なるほど、あれが細川藤孝なのか。
俺は謁見が終わり退出すると別室に案内してもらい細川殿を呼んでもらえるように側のものに頼んでみた。
すると向こうも同じ考えだったのか少しも待たずに会うことが叶った。
「お初にお目にかかります。六角主水佑にございまする。」
「これはご丁寧にありがとうございます。細川藤孝と申しまする。」
お互いに挨拶をしたのちに少し沈黙があった。
「堅苦しいのはやめにしましょうか。先ほどは助かりました。ありがとうございまする。」
「はい、そうしましょうか。私の方でも利になると感じたので提案に乗ったまでですよ。あなた様ならば私の口添えなどなくとも意見を通していたでしょうに。」
藤孝は楽しそうにニコニコしながら本当に何とも思っていないように答える。
「そうだとしても、私は恩を感じているのですよ。それに不思議と私は貴方と気が合うようで楽しいのです。良ければ私の友人となって貰えませぬか?」
「願ってもない事です。よろしくお願い申し上げまする。」
その後は互いに趣味のことなど他愛もない会話を楽しみ藤孝と文通をすることになった。




