142 若狭侵攻18
142若狭侵攻18
永禄1年1558年 5月 六角治頼
治頼は、半蔵の背を見送りながら、伊賀衆の忠誠と技術に改めて感謝していた。彼らは、戦場の影で命を懸ける者たち。治頼は、彼らの力を正しく使い、正しく報いることが六角の政の根幹だと考えていた。夜襲の準備は、静かに、だが確実に進んでいった。
夜の闇が砕導山城を覆う頃、六角軍は静かに動き出した。治頼率いる2000の兵と武藤が率いて来た500の兵が砕導山城へと殺到していた。松明の灯りが揺れ、兵たちの足音が地を這うように響く。治頼は、敵に気づかれることを前提に、視界の確保を優先した。本命はこちらではない。
「やはり、中々上手くいかないな。」
治頼は、戦況を冷静に見つめていた。出島の防衛は予想以上に堅く、兵の進軍は一進一退だった。だが、焦りはなかった。治頼は、策が発動するまでの時間を稼ぐことを目的としていた。無理な突撃は避け、兵の命を守ることが最優先だった。
攻め寄せてから四半刻もしないうちにまるで大砲を撃った様な音が砕導山城の各地から聞こえて来た。爆音とともに砦の内部では煙が立ち込め、敵兵たちは何が起きたのか理解できずに右往左往していた。伊賀衆が、事前に潜入していた者が火薬を仕掛け、合図とともに一斉に起爆させたのだった。音と光の混乱により、砦の守備隊は連携を失い、指揮系統が崩壊する。
「落ち着け!これは、事前に説明していた六角家の策だ!敵が混乱しているうちに一気に突破せよ!」
混乱の隙を突いて、六角軍は一気に砦の外郭を突破。伊賀衆は、煙に紛れて敵の背後を突き、要所の門を開放する。武藤の部隊は、砦の北側から突入し、逸見の本陣を目指して進軍していた。
治頼は、炎に照らされた砦の輪郭を見つめながら、戦局の流れを読み切った手応えを感じていた。火の手は伊賀衆の仕掛けによるもので、敵の混乱と士気低下を狙ったものだった。松明が不要になるほどの明るさは、まるで六角の意志が砦を包み込んでいるかのようだった。治頼は、戦の終わりが近いことを悟り、静かに息を吐いた。
「報告!服部党が仕掛けを終えた後に内部から扉を開け、火の手を増やしこちらの援護を終えて戻って来ておりまする。また、武藤殿を先陣に若狭勢が続々と内部へと侵攻し、逸見の首を取るのも時間の問題かと思われまする。」




