131 若狭侵攻7
131若狭侵攻7
国吉城がさらに近くなってくると国吉城から数人馬に乗って迎えがくる。
「治益様、粟谷殿が六角の軍を迎え入れるためにおいでになられております。ここにお通ししてもよろしいでしょうか?」
「ああ、勿論だ。是非こちらに呼んでくれ。」
副官が粟谷殿を迎えに行き軍の中央に位置する治益の元まで案内をする。粟谷殿達数名は武装しておらず平伏に刀を刺した軽装で馬に乗って近づいてきた。
粟谷の表情には緊張と期待が入り混じっていた。六角軍の規律と整然とした動きに、彼は「この者たちならば若狭を守れるかもしれぬ」と感じ始めていた。
「お初にお目にかかりまする。馬上から失礼しまする。国吉城城主、粟谷勝久にございまする。以後よろしくお願い申す。」
「これはご丁寧な挨拶痛みいりまする。六角家嫡男六角治頼様配下滝川治益にございまする。」
「さて、本題に入らせて頂きたいのですが、六角家の兵を全て城内に収容できるほど国吉城は広くなくてですな…」
粟谷殿が申し訳なさそうに眉を顰める。
「ご心配なさらず、当家にて国吉城の周辺を開発しまする。一月前後で城下町とは言わずとも、村よりも大きいものができまするぞ。ここは朝倉への壁となり若狭の繁栄を轟かせる場所になるのです。」
「なんとっ!ここに町を作ろうと言うのか…」
粟谷が本当に驚いたように声を上げる。
「うむ、我が主である六角治頼様はこの地を小浜敦賀を繋ぐ一大拠点として発展に力を注ぐおつもりである。粟谷殿の知見や意見も是非お借りしたい。これからよろしくお願いしまする。」
粟谷は、戦の後に町を築くという発想に驚きながらも、治益の誠実な態度に心を動かされていた。彼は、六角家が若狭をただの戦利品ではなく、未来の拠点として見ていることを理解し始めていた。
永禄1年1558年 5月 六角治頼
「さて、我々も後瀬山城へと向かうとしようか。」
「「はっ!」」
治益と治政達がここを出立して2日後こちらの準備もできた。二人も気合十分といった形でそれぞれの隊を指揮している。
「半蔵いるか?」
皆が出立している間に天幕に半蔵を呼び出す。
「はっ」
「事前に頼んでおいた例の策を実行に移しておいてくれ。頼んだぞ。」
「承知」
今のままだと、義統が生きたまま降伏した場合義輝の介入がほぼ確実に予想される。それをなくすための一手を打ち込むのだ。
治頼は、義統の生存がもたらす政治的混乱を見越していた。義輝の介入を防ぐには、義統の存在そのものを消すしかない――その決断は冷徹でありながら、秩序を守るための覚悟でもあった。




