105 若狭で遊ぼう
105若狭で遊ぼう
天文26年1557年 3月 六角治頼
「治頼様、ご指示頂いていた内容の方が思った以上に上手くいっております。」
治頼は深夜に自室で半蔵と会っていた。宿直達は眠らされているが、半蔵と会う為には必要なことなのでそれを咎めるつもりもない。
治頼にとって、夜は動く者の時間。昼の顔と夜の顔を使い分けることで、六角の影は静かに広がっていく。半蔵との密談は、戦の前に勝ち筋を描く場でもある。
「ふむ、家臣達にはうまく武具や兵糧を売りつける事ができたということか?」
「はっ、その上である程度情報を流し、向こうからの情報をもらう事もできました。」
商家を通じた支援は、物資の流通だけでなく、情報の流れも生む。治頼は、金と物を使って人心を動かす術を心得ていた。
俺は若狭武田が朝倉に呑まれる前に六角で併合し日本海側の海への航路も手に入れることを考えていた。その為に、若狭武田親子の対立を利用した上で家臣との対立も深めるように伊賀配下の商家を使って支援していたのだ。
若狭は日本海の玄関口。小浜湊を押さえれば、北陸交易と海軍展開の両面で優位に立てる。治頼は、戦わずして奪う策を着々と進めていた。
「何処が動いた?俺の読みだと逸見昌経や粟屋勝久がだと思うのだが。」
この2人は史実でも義統に反抗を起こしていた。
「はっ、逸見昌経は既に三好とやり取りをしていた様です。ただ、殿が信豊殿とやり取りをしている事を知っていたので支援する動きがあると商家としての情報を伝えると信豊殿に付き従い六角の元で自家を反映させるのも悪くないと考えている様でした。」
逸見は忠義よりも利を重んじる男。治頼はその性質を見抜き、三好との縁を断ち、六角への傾斜を促すことで、若狭の分断を加速させていた。
「やはり、三好と通じていたか。逸見は武田に従っているというよりは、自家をより反映させることを重視しているのだろう。三好に援軍を求めない様に上手く運んでくれ。」
「既に武具や兵糧を運び込んだ事で三好から援軍をもらうのではなく独力で義統と当たる様にございます。」
三好の援軍が入れば、若狭の内乱は外乱に変わる。治頼は、逸見を独立勢力として動かすことで、三好の手を封じる策を打っていた。
「よくやってくれた。引き続き頼むぞ。」
逸見は独立心が強い上に寝返りもよくする武将だ。義統暗殺の濡れ衣で処分する。




