103 新年の挨拶
103 新年の挨拶
朝倉は利息の重圧に苦しみ、六角への依存を強めている。治頼は経済で首を絞り、軍事で手を伸ばす。若狭武田への支援は、煽りと恩義の両面を持つ。
尼子と毛利に関しては二者ともに驚いた様だ。尼子は特に困っておらず問題はないが、六角とこれから関係を築きたいと喜んで受け取ってくれた。それと交易もしようと声をかけてくれたこともあって、尼子とも交易を始めようとしている。
尼子との交易は、山陰への経済進出の第一歩。治頼は戦だけでなく、商いでも勢力を広げる。尼子の好意は、六角の信用を高める材料となる。
毛利は困惑といった形だったそうだ。こちらは証拠を残すこともできないため伊賀が口伝で伝えてくれているのだが毛利元就は大変感謝していること、尼子と天秤にかけていることは気にしておらず、寧ろ期待されていると考えていると伝えてくれた。尼子を打ち破った際は尼子と行っていた取引を全て引き継ぎたいとも…。
伊賀の口伝は、証拠を残さず意志を伝える最上の手段。毛利元就の反応は、治頼の思惑通り。尼子との取引を引き継ぐ意志は、六角の外交力を証明するものだった。
天文26年1557年 1月 六角治頼
配下達から新年の挨拶を受け終わり、身内3人で集まって新年を祝うささやかな宴を行なっているとどうしても仕事の話となってしまっていた。
祝いの席でも、治頼の頭には領地のことが離れない。酒の香りと刺身の甘みの中に、戦略と責任が静かに混ざっていた。
「そういえば治頼、伊賀と北伊勢の方はどうだ?問題等が起きていないのは報告から聞いているが何か困ってはおらぬのか?」
義賢が酒を片手に北伊勢から持ってきた新鮮な魚の刺身で楽しみながら聞いてくる。
「はい、長野とも良好な関係を築く事ができており領内の整備も進んでおります。今は安濃津の港を拡張するのを第一に人足や黒鍬を動員しております。」
安濃津は伊勢湾の要。港の拡張は交易と軍事の両面で意味を持つ。治頼は、ただの整備ではなく、未来の海軍展開を見据えて動いていた。
「ふむ、あそこは既に港として機能していると思っていたが?」
祖父が一緒についてきた時のことを思い出して話しかけてきた。
「ええ、現在使われている船ですと問題なく利用できます。ただ、私は南蛮の船をこの日の本でも運用できるようにしたいと考えております。」
南蛮船の導入は、異国の技術を取り入れる大胆な試み。治頼は、日の本の海を内から変える覚悟を持っていた。
「なんと!そのようなことを考えていたのか。」




