101明確な予定
101明確な予定
「まあ、待て。本願寺への支援とは朽木の方への和睦仲介を願う文を届けようとした使者を伊賀を使って消しただけだ。」
使者を消すことで、和睦の道を断ち、火種を残す。治頼の支援とは、争いを育てること。敵を増やすのではなく、敵同士を争わせる。それが六角の影の戦術だ。
「それでは、寧ろ敵対行動と言えるのではありませぬか?」
「はっはっはっ、奴らは死んだら極楽浄土に行けるのだろう?その手助けをしてやったのだから支援と言えるだろうよ!」
うわぁ…と何人かの顔が顰めっ面になる。むしろ、治光や治益、治虎などはニッコニコの顔をしている。
治光や治益は、治頼の皮肉と冷徹さを理解している。彼らにとって、戦とは綺麗事ではない。勝つためには、汚れ役も必要だと知っている者の笑顔だった。
「まぁ、つまりは越前と加賀を争わせて若狭に手を出させる機会を無くしただけだ。」
朝倉と本願寺が睨み合えば、若狭への進出は後回しになる。治頼は、敵の目を逸らし、自らの手を伸ばす。戦わずして奪う、それが彼の戦略だ。
「分かりました」
「予定では若狭内乱にかこつけて実効支配する予定だ。兵の鍛錬を怠るな。」
内乱は、外からの介入を正当化する口実になる。治頼は、混乱の中に秩序を持ち込み、支配を既成事実化するつもりだ。そのためには、兵の質がすべてを左右する。
「治豊は蒲生兄弟と協力して長島に目を光らせておいてくれ。北畠も大丈夫だとは思うが一応気をつけてくれ。何かあれば具房に連絡するといい、あいつはいい奴だからな。」
具房は文筆と調略に長け、治頼の意図を正確に伝えることができる。北畠は表向き穏やかだが、伊勢の地理と民心を考えれば油断は禁物。長島と北畠の両面監視は、治頼の用心深さの現れだ。
「治虎と治益、それに治光に治政は若狭武田出兵組だ。俺を大将とし、副将に治虎と治光をつける第一軍と治益に治政をつけた第二軍にわける。」
第一軍は主力として正面からの進軍、第二軍は側面支援と補給線の確保を担う。治頼は戦を力任せにせず、役割と地形を見据えた布陣を敷いている。
「「ははっ!」」
「わ、私が副将にございまするか?ありがたき幸せにございまする!」
治光と治政は互いにこの抜擢を喜んでいる様だ。治光と治政は、名を与えられたばかりの若手。抜擢は彼らの士気を高めるだけでなく、家中に「実力と忠誠が報われる」空気を浸透させる狙いもある。




