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やっぱやめたいなーって思ってる。今。

「なんて凛々しいお姿!素敵ですテス様!」


 開口一番、エレナさんが私を誉めそやした。

 嬉しさと同時に恐ろしさがつのる。

 このローブの下はパジャマだと知ったら、この子どんな顔するんだろう。やはり町に行くべきだったか。二択を間違えたか。

 一方ミレイちゃんは、私の部屋の散らかりっぷりにドン引き顔だ。


「仮にも英雄として名をはせた人なら、装備品は大切に保管しておくべきだと思いますよ…。」


 部屋がゴチャゴチャの理由も、察しがついているようだ。敬語こそ使ってくれているが、かなり軽蔑されていることは想像に難くない。悲しい。変なプレッシャーなくて、楽と言えば楽だけど。

 そんな憂い顔の妹をよそに、お姉ちゃんは私を無限に褒め讃え続ける。


「あの頃も素敵でしたけど、今のお姿も最高です!大人の女性の妖艶さが…!」

「いえいえ、そんな。ふけただけですよ。」

「いいえ!なんといいましょうか、衣の一枚下に危うさを孕んでいるような、不思議な魅力をお持ちです!」

(ばれてる?)

「はあ…。」


 ミレイちゃんが、露骨なため息をついた。

 まあ、身内がしょーもないもんを絶賛していたら、そりゃゲンナリもするだろう。

 そのため息に反応し、エレナさんがぱっと振り向いた。


「んー?どうしたの、ミレイちゃん。元気ないねー。」


 小首を傾げて、妹の顔をのぞき込む。


「あーいや、別に…。」


 ミレイちゃんが、つまらないなって表情でそっぽを向く。エレナさんはちょっと眉根を寄せたが、すぐ何かに気付いた顔になった。


「あ、わかった!テス様のことばっかり褒めたからすねてるんでしょ?大丈夫大丈夫、ミレイちゃんもかわいいよー!」

「ちょ、姉さん…!」


 エレナさんが、妹の頭をなでなでする。なんとまあ。本当に仲のよい姉妹だ。普通、この年頃の子が家族に頭なでられたら


「うっざ。死ねよ」


とか言ってキレそうなものだが、そんな素振りは全然ない。あまつさえ、ちょっと口元がニヤついている。耳まで赤くして。さっきまでため息ついてたのに。

 エレナさんは調子に乗って、その紅潮した耳をチョイチョイとつついたり、さすったりしだした。うふふーと笑いながら。いやもう、ほんと仲がいい。仲良し姉妹だ。素晴らしい。素晴らしいって言い方はちょっとあれだが、とにかく良い。興奮します。


 私的にはずっとそのイチャイチャを見ていたかったが、残念ながら、その後すぐに冒険についての話になった。これから行くダンジョンについての、詳しい説明を受けた。

 ちなみにダンジョン攻略でお金がもらえる仕組みは、


①・市町村の近隣にモンスターが巣(ダンジョン)を作る

②・市町村が金を出して、冒険者ギルドに依頼

③・ギルドが冒険者たちにミッションとして通達

④・冒険者がダンジョン攻略

⑤・ギルドから報酬


という流れになっている。


 私たちが向かうのは、トロルの支配する塔だということだ。

 すでに何人か攻略失敗していて、なかなかの難易度らしい。

 他にもなんやかんや言っていたが、忘れた。

 ほとんど聞き流していたのだ。

 どうせ何もしなくてもいいんだし。

 だって「何もしなくていい」と言われて、「いやそんなわけには」と頑張るなんて、逆に失礼じゃないですか。

 ま、とにかく、トロルがボスのダンジョンに行くらしい。

 復帰戦としては手ごろな感じだが、めんどい。

 私としては、スライム二、三匹やっつけたら一億マニィもらえるような仕事がよかったが、そういうわけにはいかないようだ。人生とはままならぬものである。


 こうして私は、再びダンジョンに足を踏み入れたのである。

 中途半端な覚悟で。

 生はんかな気持ちで。

 鼻歌まじりのお遊び気分で。

 なんか、大しくじりをやらかす予感がするが、きっと気のせいだろう。


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