5-6
ひとまず解散ということになり、終電で帰る組、泊まっていく組に分かれた。
直陽、あまね、瞬、琴葉は帰ることになった。
駅まで歩く道すがら、さっきの続きの流れで、自然と直陽は瞬と並んで歩いていた。
「あれ?泊まらなくて良かったの?青柳さんと話す機会、あんまりなかったんじゃ⋯」
「ああ、それですか⋯」
瞬は少し話しにくそうな顔をした。
「何かあった?」
「まあ、そんなとこです」
直陽は今日のクリパの時の情景を思い返してみた。何となく想像はついた。
「今は、男を磨く時期だと思うんです。今日いいお話がたくさん聞けたので、すごく心強いです。『好きなことを好きと言えること』『みんなを笑顔にすること』『人の気持ちを考えること』」
「そして」直陽が付け加える。「『誠実であること』だよな」
瞬はふふっと軽く笑い、
「ありがとうございます」
と言った。前向きのようでもありながら、その横顔にはどこか哀愁が漂っていた。
*
駅に着くと、電車の向きが逆だったので、直陽とあまねは、瞬、琴葉と別れた。
直陽とあまねは並んで歩いた。初め二人に言葉はなかったが、何の違和感もなかった。二人そこにいることが自然だった。
「今日はあんまり話さなかったね」あまねが呟く。言葉は弱々しいが、しかし特別寂しそうな空気をまとっているわけではなかった。
「確かに。でも――」そう言って直陽はあまねをちらっと見た。「こうしてあまねさんと話してると、また戻ってきた感がある。不思議な感覚なんだ」
「うん、分かる気がする」そう言ってあまねも直陽を見ながらそっと微笑んだ。
**次回予告(5-7)**
あまねは直陽に「年越し、どうする?」と訊く。




